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ほんとにね。
[言いつつ、目を細める。感じるのは、影輝の波動]
……無茶もしたようだし……。
[ほんとにもう、と言いつつ。
さすがに『渡る』余力はないので、光鎖を収め、歩き出す]
[『それ』が彼の少女なのだと、天聖が属ゆえか唐突に理解する]
『……何ゆえ…このような…』
[心配そうに鳴きかける彼の仔をソファーへと下ろし、私は小さな藤色の羽竜へと両手を差し伸べる。
どうか、無事で……そう祈りと願いを込めて]
[オトフリートの後をついて、踵を返しかけて]
………これは?
[影輝の少女が幾ばくかの安定をもたらした成果か、ゆらぎのわずかに落ち着いた、その空気の中、残る”精神”の力の残滓]
イレーネさんと一緒だと言ったのは…本当だったのか…
[自分を動揺させるために言っているのかと、そう判断したことを後悔した]
……協力者を切り捨てて、どうするの。
[先程までの、地上での様子が嘘の如く]
[抑揚の無い声は冷静に事態を説明する]
[歩むまでには回復し切っていないか、]
[壁に凭れて機鋼の竜に集う者達を見る]
複数の要因が重なり合った所為もあって、
界全体が、軋んでいる。
プログラムの暴走も、何処まで進むか。
何が起こるやら、予想し難い。
[機鋼の竜が目を開く]
[彼の左眼が揺らぐ光を抱いた。]
[天聖が属の者の手に受け止められて。
巡っていた力の幾ばくかがその身へと戻る。
それでも未だ瞳は閉じられたまま。
シャラリと音だけが響いた]
[手の内に在る羽竜は、静かな…静か過ぎる眠りの中にあり。
私は、彼女が界を護る為に力を使い果たしたのだと理解する]
『……そう、でしたか…
おやすみなさい…どうか安らぎの夢を……』
[眠る羽竜への言葉は、心の中のみで]
『まったく…修行が足りないってレベルじゃねえな……』
[自分自身に吐き捨てて、手にしていたバンダナを頭に巻こう、として、手を止めた]
……エーリッヒ。
[声が若干、揺らいだ]
どうしたの。
[片側の青がゆっくりと動いて、]
[竜の、移ろう空の双眸が、流水の獣の姿を捉えた。]
……言っていた……って、誰が、何を?
[呟きを聞きつけて、そちらを振り返り、問う。
それに対する答えに、同族の消滅を確かめたなら、異眸はやや、陰るだろうか]
……っとに、もう。
[小さな呟き。それはどこか、*苛立ちを帯びていたろうか*]
[オトフリートの目に浮かんだ陰りを、声に滲む苛立ちを感じて]
…だからといって、あなたが無茶しないでくださいよ。
おとーさん。
[*真顔でそう言った*]
[消耗した時に殻となる姿で。
包まれる天聖の気に添って身の内を力が巡る。
それでも意識を取り戻せるまでにはまだまだ時間が*掛かるだろう*]
……、
[ふ、と。]
[無機質な睛に宿る][感情のいろ]
[視線を向けられて]
[竜の傍に居る白猫へと歩み寄り、]
此処には居ない方が好いよ。
[抱き上げようと。]
……、痛そうだから。
此処に居ると。
[ちぐはぐな言葉。]
[己が害を為した存在だと、]
[危険を及ばせているのだと、]
[まるで理解していないかの如く]
[ざらついた舌の感触]
[目を眇め、動きが一瞬止まった。]
[その頃。
上空を旋回せし白梟は、場が落ち着いたのを確認して。
軋みによりひび割れし氷の窓のから現れ、羽ばたき一つ]
『あ…白梟殿。どうか彼女を…』
[押し戴く藤色を差し出して、私は希う。
なれど返るは否定のそれ。力失いし昏りは傷を癒すとは別なりと]
『なれば…少しでも構いませぬ、私が喉を…願えませぬか』
『せめて眠りなりと安らかに…』
[ばさり、大きく羽ばたくは了承の印なりや]
[物音。]
[足を止めて、振り向いた]
[熊に抱き起こされる少女へと近寄り]
……だから。
痛いなら、此処に居てって、言った。
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