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猟師 スティーヴ に 2人が投票した
かぶき者 ケイジ に 5人が投票した
かぶき者 ケイジ は村人の手により処刑された……
今日は犠牲者がいないようだ。人狼は襲撃に失敗したのだろうか?
現在の生存者は、くの一 アヤメ、猟師 スティーヴ、傭兵 カルロス、孤児 オーフェン、学生 エリカ、御令嬢 ロザリーの6名。
…少なくとも、この翼が無くなれば。
俺が……ケイジと一緒に居る事は、なくなるんじゃないかな。
大嫌いな人間に隷属するような事は無いだろうね。
[肯定するような言葉。
けれど、濁して。
浮かべた笑みで、何かを押し殺す]
虚の力を……自分に向けてみましょうか。
鷹の目殿の目の前で。
[ 集中しようとする。]
幻視をかけながら、やらなければならない。
かなりの根性が必要そうです。
これで疑われないはず。
とりあえず――――――、やってみましょうか。
[ 両の手に微かに力が入った。]
………それは言われずとも。
[ケイジの事は昨日の内に長老に進言していた。
微笑みに鼻を鳴らし、疑いの言葉には口を歪めて見せる。
睨む目は右から左のヴァイオレットへ移る。]
だが堕天尸を探すには出来るだけ情報を集める必要がある。
………カレンの事は、誰に聞いた?
[近づく二つの白翼に気付く事なく。更に声を低くした。]
……聞きたくたって……。
逢えなきゃ、無理だろっ!
[苛立ちを込めた叫び。
それすらも愉しむが如き狐面の哂い。
冷静さを失して、感情を表に出している自分が、悔しくて、また唇を噛んだ]
……聖殿まで、来てもらう。
アンタは『堕天尸』じゃないかも知れんが……それ以上に、危険な存在。
抑えさせてもらう……。
[低く、呟いて、聖殿へと向かう。
狐面は相変わらず、愉しげなままか。
それでも、逆らう様子は微塵もなく]
隷属――……、
[つ、と。
指先が震えるように、紺碧の上を滑る]
ほんとう、に?
生きられないから、それだけの、理由……?
[眉は寄せられたままに。
逆に、相手の顔を、覗き込んだ]
[ 息を深く吸い込む。]
術は…2つ。
幻視と…移動の術。
できるかどうかじゃありませんね。
虚も煩く喚くなら、力を貸しなさいな。
[ 一気に力を開放する。]
[ 破壊の衝動は自らを壊すことも厭わない。]
――――――…。
カレン殿のことは……。
[ そこまで言ったところで女の足元から闇が昇る。]
――――――…ッ!!!!
[ 虚は女を包むかのように昇る。
全てを隠してそれから、霧のように散った。
羽根が1枚、ひらりと舞い降りる。
それは、地上に落つる頃に金から黒に姿を変える。
見ていた白い翼の持ち主もこの光景を見たか。]
─聖殿─
[儀式の準備の進む聖殿。
集まる人々は、現れた姿にざわめくか。
それらに意識を向ける事無く、長老の許へと赴く]
……長老、今日の封印。
『堕天尸』じゃないが、この旦那をおさせてもらう。
[何故、との問い。しばしのの沈黙の後、答えを告げる。
強き『虚』を宿しつつ、しかし、翼の色を失わぬもの。
それは、決して飲まれる事無く、正負の均衡を大きく乱す要因となり得ると。
母から聞いた話を、伝えて]
ま、結界樹に押し込んだ所で、この旦那は変わらんかも知れんが。
……存在がローディの結界に干渉して、挙句、『堕天尸』に逃げられるような下手は打てないだろ?
[だから、と促せば、スティーヴからの進言があった事もあってか。
『天将の血脈』の言葉に裏付けられた選択は、すんなりと受け入れられた]
[滑る指先に呼応して、震えるような息を吐く。
ケイジ以外に触れさせるのは、やはり怖くて。
けれど、そうでもしなければ、何も話せなくなりそうで]
だって、「生きる」って、約束を守らなくちゃ…。
…もういない人との約束は、裏切れないよ。
[掠れた声で呟いた。
そうして、色々な事を諦めて疲れたような、無理やりな笑顔。力無い声]
……エリカちゃん、そんなに顔を近づけられたら、キスの一つもしたくなっちゃうよ?
[説明がなされる間も、儀式の間も、狐面の様子に変わりはないように見えた。
集まった者たちの、卑下するような視線すらも、意に介した様子は見えず。
……もっとも、その態度や雰囲気が目に見えて変わる……という事は、ないのかも知れないが。
言霊に応じて紡がれる光、生じた陣は、狐面を飲み込み、そして、消える]
……さて。
それじゃ、アタシは、残る『堕天尸』を探しに行くよ。
[場の空気、それがどうにも肌にあわなかった。
向けられる、妙な熱を帯びた視線も煩わしく。
足早に、逃げるようにその場を立ち去り──森へ]
[ 足元から闇が立ち上る。]
ここで、術を―――――っ!!
[ 慣れぬが故、必死で静かに術式を唱える。
姿が完全に隠れた後、その姿を消す。]
ぐっ―――――!!
[ 術の反動が強いのか、
移動した先には羽根が無数に散っている。]
なんでっ………虚も役に…立ちませんね……。
[ ぜぇぜぇと息を荒げながら愚痴る。
羽根の闇が暴れているようで、苦しくて仕方がなかった。]
もう、いない。
[小さく、繰り返して。
枝に停まる仄かなひかりへと、一瞬、視線を移す。
けれど、すぐに眼前へと戻った]
そうしないと、生きられない?
ぜったい?
でも、堕天尸が、壊してしまうのなら……
それすらも、死には、繋がらない?
[重ねる問いは、幼さを帯びる。
後のことばは、聞こえていないかのようで]
― 島内某所 ―
[ 息を切らしながら、幹へと背中を預ける。]
はぁ…はぁ…これで鷹の目殿の疑いが外に向けば…。
[ ケイジはエリカを味方にできると言った。]
その言葉を私は信じることしかできませんね…。
このまま姿を隠すことができれば…。
封じられることはないでしょうから。
[ その間にアヤメを消せば――――――。]
問題はないはず……。
[ 力を行使しすぎた故か。
それとも虚に魅せられた故か。
左目はもう、何も捉えてはいなかった。]
[広場を出て村を抜ける。
気になる事は、いくらでもある──けれど。
力を使った後の疲労と、気持ちの乱れは、如何ともし難くて]
……もう一晩、父上たち、頼らないと……ダメかなあ……?
[消え入りそうに呟いて。
引きずるよな足取りで、*森の奥へと消えてゆく*]
[くるる、と鳴くラウルに、口の前で指を一本立てて静かにねの合図を送り、また二人の様子を眺めようと]
……っ!?
[立ち昇る闇の波動の余波が、胸を襲う。激痛に顔を顰め、片手で右の胸を押さえ。ラウルの心配そうな鳴き声が耳に届く]
[言葉を繰り返されれば、はたり、瞬いて、]
…俺は、なんで、こんな事を話しているんだろうねぇ。
[視線が刹那逸らされる間も、ただエリカを見つめて。
幼さを帯びた声を聞く]
…俺は、そんな風に考える事を止めたかったから。
だから…、こんな事をしているんだよ。
今の俺に必要なのは、…ケイジだから。
それ以外を聞かれても、俺には考えられないよ。
なんで…… かな。
荷を、下ろして欲しかったのかもしれない。
己の許容量を越えてしまわないように。
[眼を伏せる。
手と、身を、ゆるりと引いた]
……逃げてる。
[短い声には、意識せずとも、咎めるような響き]
生きることが必要なのか、
それとも必要だから生きるのか、
――ただ、生きるだけを、望まれたのか……。
[そののちは、独白のようで。
淡い金のひかりが、梢から下りて周囲を舞う]
[金糸雀色の瞳は、
薄まった金を追う。
緩やかな明滅に、天を仰いだ]
……ああ。
もう、そんな刻限。
[木々の合間に覗く空は、時間の経過を告げる]
[二人のいた方に視線を戻すが、そこに金色はなく、見えるはただ紫紺の姿のみ]
……ロザ……りん、さん……?
[目を擦り、再度目を凝らして見るが、光景は変わらず]
[咎めるような言葉にも、静かに頷き返す]
うん、そうだね。…知ってるよ。
……知ってる。
同情して欲しいにしたって、最低だね。
[自由も誇りも失って、死んだように生きている。
否定できるはずもなかった]
……。それで、さっきの答えは?
[下りてきた光を眩しそうに見つめつつ、訊ねる]
……して、欲しいの?
同情する資格も、私にはない。
きっと、変わらないから。
もう失いたくないから、逃げて、それで、結局、後悔して。
逃げないと決めたはずなのに、また、逃げようとしている。
ただ、……在りたいだけなのに。
[いつもと同じような口調は、何処か違って。
ことばの端々には、凍らせていた心が見え隠れする。
けれども、それは、断片的だった]
壊してしまったら、
痛みも悲しみも苦しみも、全て、失くなる?
でも、きっと、――楽しいことも、嬉しいことも、ね。
[問いへの答えを最後まで聞くことは出来なかった。
昨夜のカレンと同じく、闇が一気にロザリンドを飲み込む。]
――ロザ…っ!
[咄嗟にのばした手は空を切る。
金の羽根が一枚舞い落ちていくが視線はそれを追わず。
闇の来た方を探し、周りを鋭く見回す。射抜くのは二つの白。]
……お前。それに、ラウル。
[鋭く息を吐き、眉を寄せる。]
……………、
[問いへの答えは、まだ出ないか。
開きかけた口は音をつくらず、
ふっと地へと座り込み、手を触れた。
往くひかりを見ずに送り、探る。
そして、捉えた――
封じられたものが、何かを知ると、
些か長い間を置いて、彼を見上げ]
貴方にとって、
必要なものは、……消えた。
[事実を告げた]
俺は…ケイジみたいなやり方はできないから。
同情でも引かなきゃ、頼みを聞いてもらえないかと思って。
[そう言って、自分の翼を撫でる。
暫しの沈黙の後、同じ様に撫でようとエリカの頭に手を伸ばす]
…もしも、逃げる事を止めたら、何か見えるものがあるのかね。
ねぇ……、エリカちゃんの楽しいことや、嬉しいことって、何?
[名を呼ばれたラウルが、くるると高く鳴く]
……な、何?
[受ける視線に、以前の出会いを思い出し、気まずさと気恥ずかしさから喉を一つ鳴らす。仄かに朱に染まる頬を隠すように、俯いたまま]
[昨夜、ラスを堕天尸と示した子供。
ロザリンドを消した闇とは関係がないだろうが、もしやという思いも掠める。]
『……いや、それならばラウルが逃げているはずだ。』
[野生ではないにしろ、ラウルは賢く勘も鋭い。
それに、もっと疑わしき存在がいる。]
………今のを見たな。
俺はケイジを探しに行く。ヤツがやったのかもしれん。
[鳴く鳥に頷き、何故か俯く姿に告げる声は唸るに近い。
紫紺の四翼が*風を生む*。]
……堕天尸では、なかった。
そして恐らく、貴方も捕らわれてはいない。
ならば――…… 誰、かな。
[それは、彼の求める答えではなかったろう。
それでも、思考を整理するように、淡々と紡がれる声]
うん、見た……けど……
……ケイジ……さん、って?
[狐の仮面と教えられれば、ああ、と頷き]
怪しい、の?あ、待って……
[ラウルを連れ、急ぎ紫紺の*後に続く*]
[エリカから、続けて紡ぎだされる言葉。
思考は嫌に冷静に働くのに、感情の捌け口は見当たらない]
まっ、て…、待ってくれ……。
それは、ケイジが……アイツが封じられたって、事…か?
[声が、震える]
な、んで…堕天尸でもない、のに。
……捕えられたのでなければ。
けれど、感覚と……時刻から言えば、
封じられたとみるのが正しいように思う。
彼は、何かを知っているようだったから。
それに、今までにだって、
堕天尸ではないものも、封じられてきた。
[己の紡いだことばに、
違和感を覚える。
――何かを、知っている]
……、……報せたのは、彼だった?
[結界樹の傍、会話していたふたりが浮かんだ]
[きつく、きつく、眼を閉じる。
心臓の音が、やけに大きくて、煩わしかった。
多くの言葉や悲鳴を飲み込んで、唇を噛む。
昨夜治ったばかりの其処は、いとも容易く、またぷつりと切れた]
………。広場に、行ってくる。
[くるり、後ろを振り返って。エリカに背を向ける]
…ケイジは、少なくともラスの事を、知っていたよ。
[その言葉だけを投げ、羽根を広げたまま向かう先は*広場*]
[ 特定の低音、和声進行を繰り返す奏法。
自身の暗い奥底で蠢くそれと何処か似ている。]
―――――――…。
[ だんだんと音楽は盛り上がっていく。]
ハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロスベテスベテスベテスベテスベテスベテハカイシロハカイシロハカイシロスベテスベテスベテスベテスベテスベテハカイシロコワセコワセコワセコワセハカイシロハカイシロハカイシロスベテスベテスベテコワセコワセコワセコワセコワセコワセスベテスベテスベテスベテハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロスベテスベテ!!!!!!!!!!
[ 閉じていた目が開かれる。]
嗚呼、静かですね…。
[ また、1つ気配が消えたか。
光の波動がここまで届いた。]
――――――…。
誰でしょうか、今日は。
家には戻れませんね…。
ケイジ様に匿って頂けるなら有り難いですが。
[ 自分を捕らえていたあの部屋に戻れない現状に嗤いが零れる。]
くすくす……あの部屋に戻れないのは残念ですね。
幻視する必要もないでしょうか。
[ 羽根は漆黒の姿を晒している。]
[ それでも体力の低下は否めない。]
とりあえず、今日はここにいるしかありませんね。
[ 結界樹に封印されていないことが分かれば。
疑いは自分に自然に向く。
だからこそ、早急に対処しなければならない。]
力が戻れば――――――。
[ また新しい者を封じる。
守護天将の力を持つ者を優先すべきだろう。
その左目は完全に光を失い、闇を映す。
けれど、今はその闇に安堵できるのか。
その場でそっと*目を閉じた。*]
……そう。
[向けられる背、
儚くも映る羽根を見る]
必要なものが失われたのなら、
貴方はまた考える?
新たな答えを、見つけようとする……?
[呟く自身の答えは何処か。
己の翼は内へと、ひかりの鳥は羽根へと還して、
ゆっくりと歩み始める。
* 金糸雀色の双瞳に、いろはみえない *]
[狐を探す鷹の目の男の後を追う。しばらく飛ぶうち体内に蓄積した虚に蝕まれた肺が悲鳴を上げ、速度を落とす。慌てて前を見ると、紫紺の男の視線を受けて、息を飲んだ]
『足手纏いだ。』
え……?
[その獰猛な鷹の目で示されたのは近くの施療院。一言のみを告げ、振り向いて飛び去る男の背中を、追うのは止め、ただ]
……あの……っ
服……とベッド……ありがと
[かけた言葉は届いたのか、鼻を鳴らす音が風に乗り聞こえたような気がした。聖殿から封印の光が溢れ出る、ほんの少し前の事]
[一瞬の躊躇の後、施療院の扉を叩く。しばらく間を置いて]
『もう診療時間は終わってるんだけどねえ。ま、お入りよ』
[返ってきた年輪を経た声は、心なしか沈んでいるように感じた。促されるまま中に入り、ラウルに見られながら簡単な診療を受けた。そこには以前の自分と変わりなく接する姿。無関心か悪感情に満ちた視線に慣れた身には少し不思議]
あの……っ
[口を開きかけ、つぐむ。怪訝そうな視線に]
……ううん、何でも……
診察、ありがと……ね……
[診療代、支払える物がないと告げれば、出世払いでいいさと笑われ。本当は他の誰かの分の食事だった、野菜と木の実のスープを馳走になる。身体を気遣う言葉と共に、診療所から送り出される。その不思議な魅力の持ち主を、カレンの姿と重ねた]
……カレンさん……いなかったね。広場、かな?
[少し元気が出た身体を、ラウルと共に聖殿へと向ける。向かった先では、すでに狐が封じられたと*聞くのだった*]
―森の奥・親の墓―
[たどり着いたその場は静かで。
当たり前だが、他者の気配はない]
……当然、か。
ここを知ってるのは、旦那とせんせ以外はみんなあっちに行っちまってンだしね。
[小さく呟き、座り込んで木にもたれ掛かる]
なんかもう、ホントに……嫌になる。
[零れ落ちたのは、小さな呟き]
[『天将の血筋』。そんな短い言葉だけで変わる、周囲の態度。
両親が出身を隠していたのは、これもあったのかと、今更ながらに感じていた]
……楽になりたいから、何かにすがる……か。
……でも、アタシも人の事は言えないね。
苦しくて逃げたくて、それで甘い言葉に引っ張られ……挙げ句、何にもなくなった。
[言葉とともに、浮かぶのは自嘲の笑み]
ホント……バカだ。
……一番欲しいものが、一番怖いんだから……。
ホント、情けないったら。
[相棒もいない、完全な一人きりの状況は、いつもは表に出す事のない心情を溢させて。
小さくため息をついた後、瞑目する]
ゆうらゆら 風吹く空には何が舞う
ゆうらゆら 風乗り舞うのは旅する羽根よ
行き着く先などだぁれも知らぬ
そら行く道には果てなどないよ
ゆうらゆら 彷徨う羽根は何探す
ゆうらゆら ひとりの羽は、誰探す?
振り子はゆれる あおのそら
いずれもただしく いずれもあやまり
ゆうらゆら ゆうらゆら
そら行く羽は 何さがす?
−上空−
[慌てて着いて来る気配も見ず、大きな翼を羽ばたかせた。
ケイジの姿を探し、地上を睨み飛ぶ。
だが狐の面を見つける事は出来ず、舌打ちした所で小さなラウルの鳴き声が耳に入った。何事かと体ごと振り返る。
視線の先、速度を落としよろめく白の翼が見えた。]
『………限界か。』
[昨夜消えた後の事は知らないが、小さな体が悲鳴を上げたのだろうと判断する。幸い、施療院は遠くなかった。
慌てて見上げてくる深紅の瞳を射抜き、顎をしゃくる。]
足手纏いだ。
[睨む視線で施療院を示し、再び前を向き四翼に力を入れた。
風を大きく捉え空を切る背を、声だけが追いかけてくる。]
………フン。
[耳に届いた礼に鼻を鳴らし、振り返る事なく飛び去る。
冷たい風を受ける顔は、少しだけ口の端を上げていた。]
[紫紺の翼を広げ、風に乗り島を巡る。
だがほどなく、聖殿の方から光が漏れ出すのを目に捉える。]
………誰か封じたか。誰だ?
[翼を引き、高度を下げる。半ば滑り込むように広場へ。]
[一定の距離を空けたままに、
気持ちばかりが急くような足取りを、追う。
獣も鳥も眠りについたか、森は、静寂に満ちている。
吹き抜ける風は、冷えていた。
辿り着いた広場は既に儀式も終わり、人は疎らで、
奇妙な熱は失われていた。
背の翼も傍らのひかりもないがゆえか、特別、見咎められることもない。異なるものがなければ、少女は群集に埋没する存在だと示すようでもあった]
……誰を封じた?
[大股で儀式の間に踏み込み、長老へと短く問う。
アヤメがケイジを捕らえてきた事などを聞き、強く頷く。]
………そうだな。あれは危険だ。
己の愉しみの為なら、堕天尸に手を貸す事すら厭わんだろう。
[そう告げて辺りを見回す。アヤメの姿はない。
眉間に皺を刻み、儀式の場を出た。]
[周囲を見回す。
知るものはおらず、人は過ぎていく。
とりあえずは、伝えるため――
そして知るために、
聖殿に行けばいいのかと考え、歩を向けた]
[扉から数歩離れた所でカルロスと擦れ違う。
その顔に浮かぶ表情に、何も言葉をかける事なく目で見送る。
そして、ふと彼の来た方に視線を向けた。
埋没する様に静かに、見知った顔がそこにあった。]
………エリカ。無事だったか。
[カレン、ロザリンドと続け消えた事を思い、小さく息を吐く。
そして彼女等の行方を問うべく、そちらへと足を向けた。]
[名を呼ばれた先、知る者の姿。
戸惑いのような、安堵のような色が過ぎり、消えた]
……私は、大丈夫。
色々と……あった、ようだけれど。
[足は動かさず、身体を男へと向けた]
[微かな感情の色に目を細め、少し手前で立ち止まった。
返る答えに頷き、こちらを向いての問いには顔を顰める。]
ああ。色々…ありすぎたがな。
ケイジを封じ、カレンとロザリンドが虚に襲われた。
………判るか?
[金糸雀色の瞳を探り、端的に問う。]
虚のひとつが封じられて、
それでも終わらない。
[呟いた直後、
発された、三つの名。
眼差しを避けるように、緩やかにまたたいた]
……貴方の言う、最初の一つを感じて、ここに来た。
二つ目は、昨日、知った。私と似た存在が消えるのを。
最後の一つは、……いつの事?
[あえて問わずにいたラスの結果には頷くのみ。
またたきにも目を逸らす事なく、問いへの答えに耳を傾ける。
だが、最後の言葉に片眉を上げた。]
お前の言う通りカレンと…ラスは昨夜、ケイジは先程だ。
ロザリンドも少し前に。闇に覆われて消えた。
………恐らく、ケイジと変わらぬ頃だと思うが。
[再びの目の前での出来事に、舌打ちする。]
……そう。
タイミングがずれた……かな。
[口許に手を添えた。
思考を巡らせながら、ことばを紡ぐ]
それに、姿形が明確に視えるわけではなく、
……そもそも、私は、彼女をよく知らない。
だから、既に内に在る属性と同じならば、
感知出来なかったのかもしれない。
[ゆるりと視線を彷徨わせた]
……もう一度探るにも、少し、……余力がない。
……タイミングか。
[口元の手に視線を向け、呟きを返す。]
翠流の時には別々に感知していたようだがな。
………俺にはよく判らん。
[リディアとジョエルの時の差異に唸り、彷徨う視線を追う。]
………そうだろうな。顔色が悪い。
疲れているところすまなかった。ちゃんと休め。
あのときは、ふたりともを、知っていたから。
差異があると知ればこそ、違うものであると理解する。
知らなければ、その存在は、他と変わらず、埋没する――……
[まるで別の事を指すかのような口調。
眼差しは虚空を見つめた。
ふ、と広げられる翼に、視線を戻す]
そうであるか、別の理由からかは、解らないけれど。
……そちらも、休まなくて、良いの。
それと、他のひとは。
[思い浮かんだのは、昨日から会っていない世帯主か]
[差異を語るエリカの言葉に、同意も否定もせず。
疲れた翼を一度動かした。砂埃と共に抜けた羽毛が舞う。]
………回復した後、もし可能ならば…頼む。
[結界樹にいないならば、虚に文字通り【消された】事になる。
命まで奪われたかも知れぬ状況。奥歯を噛み締める。]
………俺はいい。昨夜ので十分だ。
オーフェンは施療院に。カルロスは…儀式の間だ。
……アヤメも先程までいた様だがな。今は判らん。
[脳裏に浮かぶのは姿を少しだけ見かけた、白い花の咲く場所。]
……わかった。
[小さく、首肯を返す。
それぞれの所在を示す答えを聞くと、
聖殿を見て、それから、森に視線を移した]
そう、先程まで――……
[緩く、拳を握る。蘇る、触れていた感覚]
私は、戻る。
考えてみれば、食事もほとんど口にしていないから。
[拳を握る様子に目をやるも何も言わず、頷く。]
……その方がいい。
食べて寝ないと体が持たん。……気をつけて戻れ。
[後で己も食べねばと思いながら、背を向け階を上る。
大きく羽音を立て、高く舞い上がった。]
[空に舞う紫紺の四翼。
眼差しを逸らして、歩みだした。
森近くの家に灯りはなく、気配もない。
一晩空けただけにも関わらず、久方振りの気がした。
ひとりきりの室内は、やけに広く、肌寒く感じる。
窓辺に腰を下ろして、夜天の光を浴びた]
……何か、おかしい。
今回だけ、知れないのは。
[鷹の目に語った内容には、詭弁も含まれた。
己が心の内を明かさぬために]
結界樹に捕らわれていないとしても、
人ひとりの存在自体を「消す」事は難しい――
[思考を音にして落とすうちに思い出したのは、
襲われたという彼女との会話。
そして先程の協力を求める申し出に、
堕天尸が誰かを知っていた、狐の面の男]
……、確かめないと、か。
[呟きながらも、
心身への負担はやはり存在して。
喉の渇きと空腹を気休め程度に癒すと、
意識は次第に闇へと引きずられていく。
倦怠感のようなものが、薄く広がっていた。
いつの間にか身体は窓の傍らの床に転がり、
胎児にも似た体勢で、*眠りの淵へと落ちた*]
[夜風に乗り、空を行く。
エリカより早く見下ろしたアヤメの家に、明かりはない。]
………やはりか。
だいぶ参ってるな…無理もないが。
[迷う事なく片翼を引き、森へと進路を向ける。
白い花の咲く、永久の眠りの地へと。]
−森の奥−
……仮にも若い娘が、森で夜明かしするのは感心せんな。
[親御さんの眠る地に目礼し、髪に舞い降りた白に目を向ける。
木にもたれ座り込む姿の側に立ち、低い声を降らせた。]
家で腹を空かせたエリカが待ってる。
ちゃんと家で食って寝ろ。…親御さんが心配するぞ。
親御さんだけじゃない。
クローディアやジョエルやラスにもそんな顔を見せる気か?
…………百年の恋も一度で冷めるぞ。
[鼻を鳴らし、頭へと手を伸ばす。
花弁を取るには乱暴な手付きで、*白を散らした*。]
―森の奥・親の墓―
[舞い降りる気配にゆるく瞬き、そちらをみやる]
……ああ……旦那か。
その物言いだと、エリィは無事なんだね……オーフェン、は?
[自身の事には触れずに、問う。
施療院に向かわせた、との返事を得れば、ほっとしたよに息を吐き]
ま、確かに食べないとまずいし……って。
……そんなん、アタシに縁があるでなし。
気にしても仕方ないじゃないのさ。
[諌めの言葉――と、捉えていても、つい、こんな言葉が口をつく]
色恋沙汰は……もう、懲り懲りだよ。
[続く言葉は自身に言い聞かすよな響き。
伏せられた瞳の思いは他には伺い知れず。
それでも、白を散らす手の感触に、目は細められ]
……っとに。
子供扱い、しないどくれよ!
[むくれたように言いつつも、顔を上げた口元には、*微かな笑み*]
― 朝・自宅 ―
[くるる?と鳴き声に目を明けると、正面に首を傾げた白い鳥の顔]
わ……びっくり
……おはよう、ラウル
[寝台から起き上がると、目に入ったのは無造作に床に落ちた大きめのシャツ。スリットは、4つ]
あ、服、洗って、返さなくちゃ……
[汲み置きの水で顔を洗い、婆様に朝の挨拶をしに、自宅の外へと向かう。途中、平坦な出口で躓き、痛そうな音を立てて顔から地面に倒れた]
うう……痛いの
……あれ?
[ラウルが心配そうにぴぃと鳴く声を聞きながら、違和感を覚えた左足を見ると、球状に痣のように黒ずんでいる。首を傾げ]
……綺麗にしないと……
また、リディアさん、に、お風呂入れって……あひると、蛙も……
[顔を上げ外に視線を向けると、見えたのは、桜色の世界]
……わ、あ……
[墓標の周囲を、花弁が舞う。その光景をしばしラウルと眺めていた]
[とうに封印を終えたその場所は閑散としていて。
目に付いたのは、先程までスティーヴに説明をしていた長老。
掠れた声を投げる]
…ねぇ、本当?
[主語も述語もない、問い。
けれどそれは正確に捉えられ、明瞭な答えを受けた]
ふぅん……。
本当に…いないんだ。
しかも、抵抗の素振りすら見せなかったとか。
…命の危険が無いからって……。
[ゆるゆると腕を上げ、口許を覆う。
そうでもしなければ、発作的に笑ってしまいそうだった]
[手が唇の傷口に触れ、微かに痛む。
治す人間がいないことが、妙に可笑しくて。
用は済んだとばかりに、礼も言わずその場を立ち去る。
何処に向かう当ても無く、夢遊病のように島の中を歩き回って夜を過ごした]
─自宅─
[自宅に戻り、最初に向かったのは自室──ではなく、エリカの部屋。
無事を確りと確かめたい、という想いがあったからだが、どうやら正解だったようで]
……なぁにしてんだか、この子は。
[床に蹲る様子に苦笑しつつも、ちゃんと寝かせて。
それから、自分も自室で休む]
……結界樹の様子、見に行くか……。
[部屋に落ち着くと小さく呟き、それから。
疲労に導かれるままに、眠りへと落ちる]
[明けて、翌日。
陽の出るかでないか、という時間に目が覚めるのはいつもの事。
食事の支度を整え、自分は先に済ませて、家を出た。
翼を開き、目指すは島の中央──結界樹の元]
[ 大きく溜め息をついた。]
……はぁ、まいりましたね。
[ 木の幹に体重を預けたまま遠くを眺める。
家のベランダと同じよう、海が臨める。]
さて、これからどうしましょうか。
ケイジ様にお会いしていいものかどうか。
[ 今後のことを考え続ける。]
― 結界樹付近・湖 ―
[ラウルを連れ、白い翼を羽ばたかせて湖へと向かう。結界樹に近づくにつれて、身体に燻る痛みは一時的に休まる]
……封印、されたら……楽に、なる?
ううん、それは、逃げ……
堕天尸、見つけて……話、してから、でも……
[小さな湖の畔につくと、服を脱いで枝にかけ、足をぴちゃりと水につける。心地よい冷たさを感じた後、ざぶりと身体を浸す]
─結界樹─
[ふわり、四翼を操りその根元に。
解放し、力も行使する事で馴染んできたのか、飛行はだいぶ危なげなく]
……特に、変わりなし……か。
[周囲を見回し、小さく呟くも]
でも、あんまりいい状態じゃない……ね。
早いとこ、残りのを見つけないと……とはいえ。
[直接探す術はなく、独りで動き回っていたためか、今ひとつ手持ちの情報も少なく。
当たりをつけるのも、容易くはなかった]
……さて……どうするか。
旦那当たり、なんか掴んでるかねぇ……。
[昨夜はそういう話をする気にもなれず、早々に別れたから。
改めて話を聞きに行くべきか……などと思いつつ、樹の幹に軽く、触れる]
−小屋−
[いつも通り目を覚まし、頭から水を浴び身支度を整える。
手早く切れ端のスープを作り、パンと共に朝食にした。
燻製の肉を大きめに切り、袋に詰めて小屋を後にする。
ラスの家に舞い降りて見舞いだと渡し、疾風にもご褒美の骨をやった。]
………一応、耳に入れておくか。
[次に向かったのは施療院。
オーフェンの具合を聞き、頷く。
カレンの気配が結界樹にあるという事を話すと、老女は安堵の息を吐いた。]
…もう少し待っていてくれ。
必ず、皆出してやる。
[低い声で告げて、露台から飛び立つ。
目指すのはホルスト―――ロザリンドの家。]
……そっちは、相当賑やかなんだろね……。
[小さな呟き。
微かに滲むのは、取り残された事への寂寥感めいたもの]
ローディは大丈夫かな……無茶してなきゃ、いいんだけど……。
まあ、兄さんもいるし、平気かな……?
カレンもいるしね……体調とかは、心配ないか……。
むしろ、問題は。
[言葉の最後に。零れるのは、何故かため息で]
[夜明け前、灯りの無い場所で何かに蹴躓き、倒れこむ。
それは糸が切れた人形の様でもあり、そのまま気を失う。
目覚める頃には、身体の節々が痛んで]
…なんだか普段と逆で、変な感じだなぁ。
[普段なら痛みを訴えるのは、身体よりも心なのに。
心臓に手を当てて、穏やかな間延びした声で呟く。]
ラウルも綺麗……する?
[近くの枝できょろきょろと周囲を見回すラウルに問いかけるが、首をふるりと横に振られ。柔らかな布を使って身体を擦りながら]
……うう、消え、ない……
[手足にこびり付いた穢れはなかなか落ちず、やがて擦るたびに痛みはじめ、うぅ、と呻き、顔を顰めた]
……あのバカ、ちゃんと頭冷やしてんだろうね……?
[ぽつり、呟く。声のトーンも、少し、低いかも知れない。
しばしそうして睨むような目を樹に向けていたものの。
不意に聞こえた微かな水音に、ゆるく瞬く]
……ん……なんだい?
[目覚めたときにいたのは、
硬い床ではなく柔らかな寝台の上。
移動させた当人の姿は見つからず、
知らず、下がる眉を見るものもいなかった]
[ 羽根を大きく広げる。]
―――――…っぅ…。
[ 痛みが走る。
昨夜、術を使いすぎたせいだろうか。
まだ完全に力が戻っていなかった。]
まだ動けませんね…。
[ 誰が封じられたかも気になる。
かといって、誰かに会うのも危険である。
もう一度、目を閉じた。]
……ラウル?
[耳に届いたのは、聞き慣れた相棒の声。
そして、ラウルがいる、という事は]
オーフェン?
いるのかい?
[周囲を見回しつつ、そう、と声をかける]
[奇妙に穏やかな心地の侭、顔や服に付いた草を払えばまた歩き出す。
背に出した侭、仕舞われることのない羽根は変わらず揺れる。
羽根の開く音、小さく零れた声を聞いた気がして足を進める]
あ…。ロザリーちゃんだ。
やっほー。
[まるで何も起きていないかの様に笑みを浮かべ、常のような挨拶。ひらひらと手を振った]
うん、いる……よ
……その声、アヤメ、さん?
[呼びかけに答えた後、自分の格好に気づいてわたわたと慌てる。激しい水音が辺りに響く]
[……そして今、
少女は背に異形の銀を、
手に金のひかりを携え、森の中に在った]
やはり―― いない。
[独りごちて、顔を上げた]
...ethisagas.
[揺らめくように舞うひかりは、
声を受け、いつかのように漂っていく]
−ホルスト家−
[戸惑う様子で出てきた女主人に、淡々とロザリンドが虚に襲われた事を告げる。]
………行方はわからない。
堕天尸を捕まえれば、何か手掛かりがあるかもしれん。
……失礼する。
[動揺する姿に背を向け、玄関を出る。
いつもの様に近くの木を足場に飛び立とうとして、何か光るものが視界を掠めた。]
……なんだ?
[四翼を交互に羽ばたかせ、目を眇める。
以前ロザリンドの姿を見かけた事のあるベランダに、硝子の欠片が光っていた。]
[ 聞こえた声に強張った。]
――――――…!!
[ 警戒しようと羽根を広げる。
だが、声をかけるときょとんと瞬く。]
………どうも、カルロス殿。
[ とりあえず、様子を見てみることにした。]
[返る声と、水音にきょとり、と瞬く]
って、ちょっと、落ち着きなってば!
[周囲を見回し、その姿を捉えたなら、ふわりとそちらへ]
わ、だめ……っ
[近づく足音にパニックに陥り、動きの鈍い足はもつれ、身体はばしゃんと派手な音を立てて湖の中へ。身体に続くように、白い翼がゆっくりと水の中へ引き込まれていく]
ダメ、じゃないだろっ!
っとに、何してんだい!
[声をかけたのが原因とはさすがに、思わず。
自分が濡れるのも構わずに、湖に沈んで行く身体を救い上げようと手を伸ばす。
運良くつかめたなら、そのまま引き上げようと]
なんだか、久し振りに会った気がするねぇ。
美人さんに会えない日々は淋しかったわけですが。
お隣、ご一緒しても宜しいですか?
[軽薄な口調。上辺だけの笑み。どこか空白さの目立つ、態度。
広げられた羽根に視線を流して、]
それとも何処かにお出かけの予定が御ありでした?
……ぅ……?
[アヤメの伸ばした手が腕にかかれば、そのままずるりと関節が伸びるような感触が残る。顔を上げると、焦点の定まらない瞳は、アヤメの顔の周辺を彷徨い。岸まで引き上げられるまでに、胸から腹にかけて皮膚を移植したような大きな傷跡が見えるだろうか]
………何かあったか。
[奇妙な勘に、躊躇う事なくベランダへと舞い降りる。
硝子の欠片を拾おうと歩み寄り、部屋から感じた気配に総毛立った。]
――――っ、これは…!
[術を使えない代わりに耐性のある身でも判る、強い虚の気配。
本能に近い段階で理解する。]
……ただの人間がこの中で普通に過ごせるはずがないな。
随分と手の込んだ真似をしてくれた事だ。
[容易く騙された事に舌打ちし、ベランダの手すりを蹴り飛び立つ。紫紺の翼が大きな音を立てて空気を打った。]
……っ!?
[目に入った思わぬものに眉を寄せるも、それは今は意識の外へ置き、小さな身体を岸へと連れてゆく]
大丈夫かい? ほら、しっかり……。
[声をかけつつ、背中をさすってやる]
ええと、この子の着るもの……は?
[ 昨日の自分の話は聞いていないのだろうか。
それを、自ら聞くことはできない。]
…あ、いえ。出かける予定は…。
[ 広げた羽根を静かに戻す。
淡く金色に光るそれは翼胞に吸い込まれる。]
……つかぬことをお聞きしますが。
昨夜は誰が…長老に?
[ 気になっていたことを、いの一番に訊ねる。
相手の様子を察する余裕はなかった。]
……ぅ?
[アヤメに背中をさすられるうち、虚ろな瞳にやがて光が灯り。枝にかけてある服の近く、ラウルの白い翼がぼんやりと視界に映る]
[ぴぃぱた、と羽ばたく慣れた気配にそちらを見やる。
すぐ側にあるのが何かを察したなら]
ラウル、それ、もっといで!
[短く言いつつ、ぽんぽん、と宥めるように背を叩く。
身体を包めるようなタオルはさすがに持ち合わせていないから、せめて身体が冷えぬように、確りと抱え込もうと]
そう、それは良かった。それじゃあ、お邪魔します。
[翼が翼胞に仕舞われる様子を見て、ロザリーの隣へと。
足取りは、熱に浮かされたように軽い]
あれ、ロザリーちゃんは知らないんだ?
結構ロザリーちゃんは仲が良かったみたいだし、心配の一つでもするのかな。
ケイジだよ。抵抗すら、しなかったんだってさ。
[さらりと告げる言葉は、明るくて余裕のある響き。]
[背を叩かれると、生気を取り戻した瞳を見開いて]
あ……あり、がと……
[抱え込まれると、その温もりにすぅと瞳を細め。アヤメの肩越し、枝にかかった服を器用に背中に乗せて飛んでくるラウルの姿を見る。身体の震えはやがて収まっていく。聞こえる鼓動と微かな花の匂いに、頬を軽く上気させた]
え……。
[ 聞こえた言葉に耳を疑う。
どうしてあの人が。
ということは、自分の存在もバレてしまったのだろうか。]
ケ…ケイジ様が……。
そう……ですか………。
[ 何か落ち着かない。
頭を強く叩かれたようだった。]
…ケイジ様が…堕天尸だったのでしょうか?
そんなこと、ないとは思いますが…。
[ 知らないフリをして、質問を重ねる。]
いや、いいよ。
もしかしなくても、アタシが脅かしちまったようだしね。
[ごめんねぇ、と笑いつつ、濡れた髪を撫でてやる。
服を運んできた相棒に、ありがとねぇ、と笑いかけ]
落ち着いたかい?
なら、ちゃんとこれ着て……。
にしても、水浴びには、ちょいと時期が早くないかい?
[冗談めかして、問う。
傷痕の事は気にはなったが、尋ねるのは気が引けた]
−上空−
[遥か高みからロザリンドのよく目立つ長い髪を捜す。
だがそれより早くましろと深紫の翼が目を惹いた。]
アヤメと…オーフェンか。
先に知らせた方がいいだろうな。
[昨夜アヤメに具合を問われ、初めて知った子供の名を呟く。
結界樹側にいる二人へと翼を引いて落ちる様に舞い降りた。]
ケイジ様が封じられましたか…。
弱りましたね…。
[ 疑いを退ける行動が仇となったか。]
……エリカ殿のことは捨て置いたほうが良さそうですね…。
さて…どう致しましょうか…。
[ 動けるぐらいにまでは回復している。
封じることができるかどうか、だが。]
[降りてくる、紫星の気配。
視線を向けたなら、目に入るのは紫紺]
旦那? どーしたんだい、血相変えて……。
[どこか只ならぬ様子に、微か、表情が険しさを帯びて]
あーあ。ロザリーちゃんみたいな美人さんに心配かけるなんて、ケイジも俺の事を言えない程度には馬鹿なんじゃないかなぁ。
[ロザリーの態度を履き違えてか、浮かべるのはただ微苦笑。
素知らぬ様子に肩を竦め、]
…ああ、うん。ケイジは違うよ。
ラスの事も、全部知っていて黙ってたりはしたけどね。
……うん、う、ううん?
気に、しないで……
[髪を撫でられると、気持ち良さそうに目を細め。同じように髪を撫でてくれた細目の青年のことをふと想う]
ラウル……ありがと、ね
[渡された服を受け取ると、アヤメの視線から胸を隠すようにして、まだ濡れた体にいそいそと服を着る]
……冷たくて、気持ちよかった、よ?
汚れ、あんまり取れてない、けど。
[わずかに伸びた腕を戻すように肩の方向へ押し上げ、激痛に片目を瞑り、顔を顰めた後]
……見た?
[上目遣い、小声で問う。上空からは、二つ目の紫の気配]
[深き緑の合間を縫うように、
ふわりふわりと、光は揺らめく。
“己と似通ったもの”を探して、人気のない場所を。
ひかりが男女を見つけたのが先だったか、
それとも逆だったか。
梢の近くで、ぴたりと止まり、淡い色の翼を羽ばたかせた]
…確かに。
カルロス殿にそう言われるのは御馬鹿さんかもしれませんね。
[ 調子を合わせて返事をする。
続いた言葉に絶句することになるのだけれど。]
カルロス殿……。
じゃあ、誰が…堕天尸なのかご存知なのですか…?
[ 誰にも話さないと言っていたのは嘘だったのだろうか。
少し、距離を置く。]
[感謝の言葉に、ラウルはくるる、と一鳴きして]
冷たくてって……そりゃそうだろうけど、油断してると、すぐに風邪引いちまうよ?
……後で、お湯使わせたげるから、家においで。
[少なくとも溺れやしないから、と笑い。
痛みに顔をしかめる様子に眉をひそめつつ]
まあ、ね。
んでも、言いたくないなら、ここで、無理には聞かないよ……そんなにのんびりも、できそうにないしね。
[問いに返す言葉は、こちらも小声]
―――ロザリンドが堕天尸だ!
[地に足が着くと同時に吐き捨てた。
アヤメの問いに睨む目を向け、頷く。]
……部屋に強い虚の気配があった。
あれはただの人が住める場所じゃない。
闇に覆われ消えたのも、恐らくは目を逸らす為…だろうな。
[低い声で唸る。噛み締めた奥歯が鈍い音を立てた。]
……はい?
[スティーヴから返る言葉。
思わず、呆けた声が出た]
あのお嬢様が……『堕天尸』?
[個人的な付き合いなどは、ない。否、関わりは避けていた。
傍目、恵まれた環境への妬み、今一つ『あわない』感覚など。
自分からは、避ける要素の方が大きかったから。
それ故、その名と『堕天尸』の存在は容易には結びつかず]
なんだってそんな……いや、ここで論じてても仕方ない、か。
[探さないと、と。呟く瞳には、凛とした決意]
[アヤメにほっとしたような表情を向け]
うん……わかった
[小さく微笑み、その後、口の中で小さくつぶやいた言葉は、届かない。視線を来訪者に向けると、衝撃的な言葉に]
え、ロザ……りん、さんが?
[続く言葉を聞き、耳を疑い、言葉を失った]
[怯えたようなロザリーに向けるのは、哀しさと憐れみを混ぜた眼差し、]
少なくとも、俺ではないから困ってるんだ。
――…、ロザリーちゃん、
[呼びかけは、淡い金の鳥を見つけ途切れた]
[オーフェンの挨拶の声に視線を向ける。
真剣な表情に、頷いて見せた。]
……お前もロザリンドが消えたのを見たな。
だが、あれはめくらましだったらしい。
………ロザリンドを確かめられるか?
[その力で確かめられるか問う。膝の黒には気付かないまま。]
……なんで……
そんなこと……信じない……
ううん……自分の目で、確かめる、から
[スティーヴの声に、深く頷く]
それで、おじさん、ロザりんさんは、どこにっ……!
[さくりと、草を踏む。
認めた姿は、求めていたもの。
二人の前へと歩み出る]
貴方は、何を望む?
いえ。
……何ゆえに、望む?
[挨拶もない唐突な問いかけは、
誰に向けたかすら定かではなく。
薄闇の中、仄かなひかりに横顔が照らされた]
[オーフェンから視線を外し、驚くアヤメへと投げる。
探すのが先との言葉に深く頷く。]
……ああ、お前もあの部屋を見れば判る。
エリカも結界樹にいるかどうか…判らないと言っていた。
[あの後、再び試みてくれただろうかと眉を寄せる。
だがそれよりも気が逸り、紫紺の翼が感情のまま揺れる。]
[ エリカの姿を認める。
問いの意図を見出すことができず、黙す。]
――――――…。
[ 顔は相手を見ようと傾く。
左手には微かに闇が差す。
最も、こちらも暗くて気付かれないだろうが。]
ロザりんさんが、行きそうな、場所……?
昨日のが、めくらまし……なら、人目に、つかない場所……
[ロザリーに出会ったことがあるのは、広場と高台。どちらにもいる可能性は薄く、二人の顔を見る]
ま、部屋を覗くよりは、直接オーフェンに確かめてもらう方が早いだろうさね。
[言いつつ、ゆっくりと立ち上がる。
肩に止まろうとするラウルは、制して]
お前は、この子と。
……わかるね、相棒?
[短い言葉に、ラウルはくるるる、と鳴いて。
それから、こくり、と頷く]
めくらまし……か。
この島で一目につかない場所と言ったら、この森の中。
問題は、どこらにいるか、だね……。
[オーフェンの言葉に、ぐるり、周囲を見回し]
さあね…。そう言う、エリカちゃんは、何の為に、何がしたいの?
[そう現れたエリカに返し。
ロザリーには、]
うん。困ってるのは――…、結界樹の中に入る方法が浮かばないからなんだよ。
堕天尸に会って虚を分けてもらえれば、封印してもらえるかと思ったんだけどねぇ。
[金糸雀色の眼が、
傾ぐ顔を見つめる]
……やはり、“無事だった”。
[幾許か、強調されたことば。
言外に、襲われたはずと知っていると]
[翼を一度羽ばたかせ、オーフェンの深紅の瞳を見る。]
……ああ、確かめろ。お前にはその力があるのだからな。
どこに居るかは…判らん。探すしかない。
[人目につかない場所と言われ、目を眇める。]
………人目につかず、俺の目で探し難いのは…森だな。
落ち着け…落ち着きなさい、私。
[ 今、考えるべきことはどうして逃げ切るか。]
エリカ殿…やはり、封じておくべきでした…ね…。
[ 苛々が募る。]
森……?
この辺は、結界樹の力が強い、から……
……虚は、近づかない、と思う
ちょっと、待ってて
[白い翼を羽ばたき、上空へと飛ぶ。集中し、虚の気配を手繰る。縦一本の線となった瞳でぐるりと周囲を見渡した後、二人の側へ戻り]
……あっち、の、方から、微かだけど……気配が、した……
[息を少し乱しながら、森の一点を指さす]
私?
私はきっと、失いたくないだけ。
失わないためには、どうするか。
――何も得なければいい。
失わないよう、失うことすら、失くせばいい。
[はぐらかすような台詞に、
朧げに口にしたのは矛盾した答え]
[ 結界樹の中に入る方法―――――。
1つは長老に封じてもらうこと。
それから、もう1つは。
その言葉に返事しようと思ったところ。
聞こえてきたのは少女の声。]
―――――――…。
[ 嗚呼、失敗したな―――――と、心の中呟き。
けれど冷静を、それから平静を作ろうと。]
世界の理を壊す事を望むとすれば、
きっと、それが、理由になる。
けれど、堕天尸は何ゆえ、それを望むのか。
知りたかった、それだけ。
[女に向けていた眼差しを移して、傍らのひかりの鳥を見る]
――あちらだな。
[オーフェンの指す方へ視線を向け、紫紺の翼に力を入れる。
湖へと岸を蹴り、水面に幾つもの波紋を生んで飛び立つ。
木々の間を抜け、堕天尸の居るであろう場所目指して。]
確かに、結界樹の側は避けるか……。
[呟きつつ、オーフェンの指し示した方を見やる]
んじゃ、悩む間に、動くとしようかね……。
終わりにして、始めるために、さ。
[くすり、笑う。
迷いのない笑みを刹那、樹に向けた]
オーフェン、ついてこれるかい?
辛いならいつでもお言い、手ぇ引いたげるから!
[言葉と共に、羽ばたく四翼。
深紫が、舞う]
[ エリカが視線を移せば、同じく光の鳥に視線を。]
――――…。
別に…理由なんて…ないですよ…。
[ すっ、と左目を手で隠した。]
[ 虚が囁く。]
嗚呼、そうでしたね。
逃げるなんて、考えなくてもいいことですね。
[ 隠した左目に闇が差す。]
ゼンブコワセバイイ――――…。
[ 口元に奇妙な笑みを。]
うしないたくない。
[エリカの意図を口の中で呟く]
…ああ、だからエリカちゃんは……、あの時、あんな風に聞いたんだ。
そっか…。
エリカちゃんは、嬉しい事も楽しい事も無い世界に居ようとしてるんだね。
[遠い世界の出来事を見る様に、ゆっくりと瞬いて焦点を合わせる。
二人の少女の会話には、時折独白めいて言葉を零す。
興味がない様にも、観察しているかの様にも見える、色褪せた眼差し]
ん、強い子だっ!
[聞こえた返事に振り返らずにこう返し、先を目指す。
前方に見える、微かな光。
良く知る気配と、遠くて近い『力』。
それらが、そこから感じられて]
……銀月の気配……?
エリィかっ!?
[ 口元に奇妙な笑みを浮かべる。]
失いたくないから、何も持たない。
きっとそれと同じです、エリカ殿。
世界にとって、少し劇薬なだけです。
[ 視線は男へと向ける。]
カルロス殿の世界とは何でしょうか。
貴方のセナカにある羽根。
それが、真理だとしたら。
この世界は貴方にとって意味あるものでしょうか?
[ 抽象的な言葉を羅列する。]
[前方の紫が、揺れる。その彼方に視える、力。軋む身体に]
……だめ、もう少し、だから……
落ちちゃ、だめ……
[ぴぃ、と鳴く声に力をもらい、白い翼は前へ飛ぶ]
―――いたかっ!
[木々の間、人の集まる空間に飛び込む。
他に目もくれず、睨む視線はまっすぐロザリンドへと。]
………やはり、な。味な真似をしてくれる。
[言葉とは裏腹に唸り声を上げる。]
[向けられた視線に浮かべるのは、酷く空虚な笑み]
うん?俺の…世界?
ははッ…。俺の世界の意味なんて、もう今更無いんじゃないかな。
だって、もう、
[顔を伏せ、自身の胸を掴む]
此処がからっぽなんだ。
―――――…。
[ 気配がまた近付いてきている。]
どうしましょうか。
[ 虚に問いかける。
返事はなかった。]
こういう時は静かなんですね。
いつもは煩く喚くくせに。
[ 拳に力が入る。]
力を貸しなさいな、ゼンブコワスなら――――。
[ エリカの言葉には笑みで返す。]
―――――…。
よく効くお薬は、苦いって言いますからね。
[ クスクスと嗤ってみる。
もう、バレているし隠す必要もないのだろう。]
おや、鷹の目殿。
お久しぶりですね。
[ 正味1日も時間は経っていないだろうが。]
[スティーヴに僅かに遅れ、場に飛び込む。
ちらり、背後のオーフェンに視線を向けた後]
エリィっ!
[真っ先に名を呼んだのは、護ると定めた者の一人]
[ 男の言葉に蔑むような視線で見遣る。]
そうですか。
やはり、お可哀想なお方ですね。
[ 人の事を言えたものでもないか。]
堕天尸にお会いしたかったなら良かったですね。
もう、誰がそうなのか理解されているのでしょう?
[にがいくすりはきらい。
そう呟きかけたが、意図は違うと知るゆえ、口にせず。
何より――]
……フィオーラ?
[名を呼ばれて、身を竦ませた。
けれど、声がしたのとは、逆の方向へ、一歩]
いた……
……ロザりん、さん……っ!?
[三人の姿を見つけ、白は大きく羽ばたいて速度を落とす。目に飛び込んできたロザリーの顔に浮かぶ邪悪な笑みに、瞬く]
[竦む様子に、刹那、きょとりとするものの]
っとに……。
床に転がって寝てる子があるか。
あんな寝方じゃ、節々痛めちまうだろうに。
[かける言葉は、ごく何気ない日常の話題。
口調には、無事である事への安堵が込められて。
それから、視線はロザリーの方へと向けられる]
しかしまあ……お嬢様が『堕天尸』とは、さすがに思いもよらなかったねぇ。
[ゆるりとした視線で、新たに現れた人々を眺める]
…あーやはこんなにエリカちゃんを心配してるのに。
もったいないな。
そういうの、全部気に止めない世界にいるなんて。
[眺める視線の中、最後映った、エリカに向け呟く]
[鼻に皺が寄せ、嗤うロザリンドを睨み付けた。
翼を苛立たしげに鳴らす。]
……そうだな、一日無駄にした様だ。
[ロザリンドの背に翼はない。油断なく距離を測る。
追いついてきたオーフェンの声を背で聞き、目を眇めた。]
[ 人がかなり集まった様子に、ケラケラ嗤い続ける。]
嗚呼…弱りましたね…。
もう少し、姿を隠せると思ったのですが…。
[ 背中の羽根を大きく広げるも、その色は金に輝く。]
さて、私にできることは。
多少無理してでもこの場を乗り切ることですね。
荒っぽいのは嫌いなのですが。
[ 綺麗な笑顔を浮かべて、小首をかしげる。]
[久しくされていなかった、呼び名。
瞬きと共に、そちらに視線を投げて]
……アタシも、バカだが。
アンタも大概……だね。
[呟きは、届くか届かないか。
届いたとて、意味をなせるとは、少し、思い難かったが]
……、
[ふる、と小さく首を振った。
何に対してか、不確かに。
或いは、何に対しても、拒絶するように。
淡い金は、以前よりもひかりを失って]
……乗り切られても、アタシとしちゃ困るんだが。
アンタに乗り切られる、って事は、色々と崩れちまう事になるから、ね。
[翼を広げるロザリーの動きを伺いつつ、手に集わせるのは、紫星の力。
立ち位置は自然、エリカやオーフェンをいつでも護りに駆けられる位置へと定められ]
可哀相だと言われても、ね。
俺が、そんな風に言ってほしいのはロザリーちゃんじゃないし。
[顔を上げて浮かべるのは、やはり笑み]
どうだろう?ロザリーちゃんが俺の願いを聞いてくれるかは別だろうしねぇ。
[広げられた金の翼を眩しげに眺める]
……うそ、だ……よ?
ロザりんさん、何……で?
羽根、だって……綺麗、だよ?
[金に輝く翼を見ながら、ばさりと翼を羽ばたかせ、近づこうと]
――――――…。
[ 虚が蠢く。
この身体は求める破壊のためのツールでしかない。]
――――……。
カワイソウハ…
オジョウサマ…プキャ…プキャキャ……
[ そんなこと知っている。
けれど、それでも破壊を望む。
虚とある限り、1人じゃない――――。
縋っていることに、虫唾が走る。]
[懐に手を入れ、鏃羽根に触れる。
堕天尸に効くとも思えなかったが、ないよりはマシだろうと。]
………逃がさん。
お前を封じて、皆を解放する。
[握った所で、一つだけ違う感触が太い指先に伝わった。
目を眇め狙いを計りつつ、後へ声を投げる。]
オーフェン、どうだ?
[白の羽根の持ち主に問う。]
心配、に、もったいない。
……貴方の言って欲しいひとは、
もう、いないひと?
[虚ろに見える男へと問いながら、
惹かれるように、足は、金の翼へ向かいかける]
[ くすくすと嗤いは止まらず――――。]
別にもう、何だっていいのですよ。
考えるのは私の趣味。
真理だとか、世界だとか。
ゼンブ、コワスのですから、必要もないですし。
[ 黒い染みが広がっていく。
羽根を生き物のように蠢きながら。
溢れたそれは、気持ち悪い音を立てて落ちる。]
さて、最初に巫女姫殿に会いたいのはどなたでしょうか?
立候補を認めてあげますよ。
[ その手を近付く小さな姿に翳そうとする。]
[はたり、はたり、瞬いて。
届いた呟きの主に視線を返す]
うん…俺がバカなのは、知ってる。
…さっき、気付いたばかりだけどねぇ。
今更、かな。
もっと早く気付いてたら、何か…変わってたのかな。
[疲れきったような、笑みにならず、泣きそうに歪んだ表情]
[広がる黒い染みに舌打ちする。]
オーフェン、下がれ!
[もう判っただろうと、伸びる白い手に鏃羽根をひとつ放つ。
黒金の鏃が紫紺の軌跡を残し飛ぶ。]
……生憎と。
アンタの力を借りる気は、ない。
[ロザリー、否、問うのは『虚』か。
その言葉に低く返しつつ]
……アンタは、不用意に前に出るんじゃないのっ!
[金の翼に近づく銀月の少女を、押し止めようと、手を伸ばす]
う……
[鷹の目に睨まれて、一つ息を飲む]
……うん……ロザりんさん、視せて、もらうね……
[すう、と一つ息を吸い、決意に満ちた深紅の瞳が縦に細められていく。流れ込む気から、背筋を走り抜ける快感]
……間違い、ない……虚の虜、だ……
[ひらり地へ舞う黒い羽根を見ながら]
そもそも、真理なんてものは存在しない。
壊すために創ったなら。
どうして、また壊すために創る。
そんなものに価値なんてない。
全てのものに等しく―――――。
だったら、自分も同じ。
なんの価値もない。
誰よりも愛されたいくせに。
己のプライドがそれを求めることを許さない。
1人で勝手に絶望して、虚に飲まれていった。
……ホント、バカだよね。
アタシの周りは、そんなんばっかり。
[返された、視線と言葉。
それに、返す言葉は自嘲を帯びる]
もう少し早ければ、か。
そうかもね。でも。時間は戻らないから。
……気づけたんなら、気づけたなりに、先につなげりゃいいだけだろ。
自分に価値がないことは知っている。
けれど、誰かに愛されたかった。
いや、愛されていることは知っている。
だったら、何故、虚などに使役されたのでしょうね。
それすらも、考える必要はないでしょうか。
[ 手に虚が宿る。]
……面倒くさい。
考えるのも、もう面倒くさい。
やっぱり、全部壊してから。
それから、また、考えます。
[ 矛盾していることに、もはや気付かない。]
ロザりん、さん……だめ……
……力で、壊しても……何も、変わらない、から……
[下がれという声に構わず、ロザリーの瞳を見つめながら、その前へと飛ぶ]
[ オーフェンが視ることができる者か、と。
ケイジとの言葉が一致する。]
貴方が…ケイジ様の仰ってた…。
嗚呼……あの時、消しておけば良かったですね。
後に取っておくべきではありませんでした。
[ 左目は闇に染まり。
首を傾けながら、目の前の人々と対峙する。]
俺が聞きたいのは――…、
[エリカの問いに、刹那顔を伏せる]
そうだね…、もう、いないひと。
それと…もう、いなくなってしまったかも、しれない人。
[呟く声には、複雑な色が混じる]
[ 翳した手は闇を大きくする。
手の先で踊る闇を見て、また嗤う。
オーフェンの言葉にふっ、と反応した。]
―――――…。
何も変わりませんね。
だって、全部なくなるのですから。
クスクス……クスクス……。
[ もう考える必要だってない。]
[空を切る紫紺、舞い落ちる黒。
それらを視界の隅に止めつつ。
伸ばした手が届いたなら、ぽふり、と少女の頭を撫でる]
ふらふらしてるし……ご飯、ちゃんと食べてきたのかい?
[用意しといたはずだよ、と。
軽口を叩くのは、立ち込める『虚』を抑えるためか。
オーフェンがロザリーの前へと立てば、舌打ち一つして]
ラウル!
[呼びかけるのは、自身の力を分けた相棒。
真白はぴぃ、とそれに答え、少年へと沿う]
チッ!
[前に出る姿に音高く舌打ち、ロザリンドの動きを睨む。
傾いてゆく首、その左目の闇に狙い定めて]
―――ッ!
[黒金の代わりに幻獣の銀骨の鏃を付けた、オーフェンの白い羽根を放った。]
立候補はないようなので。
じゃあ、誰にしましょうか。
[ じっと、舐めるように見渡していく。]
じゃあ、鷹の目殿で。
別に誰だって構いませんが。
[ 男が動くのを右目が捉える。]
嗚呼、成程。
鷹の目殿が立候補ですか。
陽光の力をなめないで頂きたいですね。
[ 態勢を低くして、両手に力を込める。
虚が渦巻くようし、自身から立ち上る。]
これでも腕には自信があります。
鷹の目殿に引けは取りません。
[ 足元から、攻撃を入れようと―――――。]
…あーやは、強いな。
先に、なんて。…俺には先なんてものがあるか分からないけど、そうだねぇ。
[ロザリーを、否、堕天尸の姿を見上げ]
……もしもこれで先ができたなら、少しは考えてみようかねぇ。
[静観する構え]
……ケイジ様……狐、さん……
そう、なんだ……
[狐の姿を思い返した]
……ロザりんさん、なくしたい、の……どうして?
あっ……
[すぐ横を掠める姿。撒かれる虚の気配に酔い、ふらり]
[手は掴まれて、
頭を撫でられる感覚は、ひどく優しい。
きゅぅと眉を寄せながら、小さく首を振った。
淡いひかりは、肩の傍に]
[ロザリンドの手に踊る闇、立ち上る虚をただ睨む。]
……使えはしないが耐性だけなら在る。
[陽光の力に対して、紫星の力を告げる。
虚に敵うかは別だろうと片隅で考えながらも、退く気はない。
狙いはわからぬものの、動く姿に姿勢を下げ翼に力を入れる。]
……とにかく、アタシから離れるんじゃあないよ?
責任もって面倒見る、って言ったんだから。
[首を振る様子に、きぱりと言って。
カルロスの言葉に、くすり、と笑む]
強いと言ってもらえてありがとうねぇ?
アンタのお陰で、甘えられない女になったのが良かったらしいよ?
[冗談めいた言葉を向けて]
[『虚』の動きを抑えようと、集めた力をそちらへ向ける。
縛と成し、動きを止めようと]
失くす、
なくしてしまう……
考えるのは、もう、止めてしまった?
考えても、意味がないから、
見つからないから、掴めないから――……
[問いかけのようで、
独り言のような、ことば。
小さくちいさく、零れて、消えた]
クスクス……耐える必要なんてないですよ?
まずは鷹の目殿に消えて頂きます。
巫女姫殿にお会いしたかったのでしょうし。
丁度、いいですよね?
[ 両手を男の胸元に突き上げる。
羽根の闇は暗く鈍く明滅する。]
――――――ぐっ!!!
[ 弾き返されそうになる力に、必死で力を込める。]
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