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…奪われぬはブリジットのお陰か。
助けられてばかりじゃな。
儂がいつ目覚めるか、と言うのもあったやもしれんが、封印かかりし故に、と言うのは大いにある。
[僅か安堵の息を漏らす。相手方に渡らなかったのは僥倖だったろうか]
……ぬ?
ブリジット、何を探して居る?
[辺りを見回すブリジットを不思議そうに見やった。
ナターリエの見解を聞けば確かに納得出来ようか]
周囲へもかかるものであれば、可能性はある、か…。
―裏庭―
[その頃、青年は裏庭の闇の中で氷の歯車を弄んでいた。掌の血は既に止まっており、純白の氷は赤に染まる事は無い]
『――…あぁ、クレメンス』
[意識の一部は心話で届いた生命竜の声に向いていた]
―東殿・回廊―
近いな、とても。
[笑みを湛えたまま、ゆっくりと近づく。
剣の事は知らないまま。
近づけば周囲を、琥珀の粒子がちらり舞いはじめる。]
何故俺が、永遠に近い生を得たか。
エインシェント種だからじゃねぇ。
エインシェントであれ、外側からの攻撃には死ぬ事もある。
俺が生きて……いや、生かされてるのはこの琥珀の粒のせいだ。
数多の生命の中に溶け。俺を生かしつづけ、なのに二度と俺とは交わることもなくなった。
俺の片翼の成れの果て。
[ぽつりと、呟く顔に浮かぶ笑みは、軽薄よりもさらに薄い。]
剣も、かあ。
……にしても、なんで、竜王はあんたと爺ちゃんに預けたんだろな、剣。
[呟きは、独り言のよに]
うん、大分参ってるっぽいけど……ね。
[声に滲むのは、慕うものの安否を気遣う響き]
誰かに、か……。
少なくとも、精神のじゃねぇだろな。
おっちゃん辺りに預けた……ってのは、薄いか。
[よもや、影輝の手にあるとは思いも寄らず]
―東殿・氷破の部屋―
[毛布をひっくり返したり、辺りを見回していたが]
……ザムエル、ナターリエ。
そのあたりに、氷で出来た歯車が落ちていないかしら……?
[ゆっくりと、ベッドから降りて、二人へと尋ねた]
[ブリジットの言葉に、少しだけ安堵の息を漏らした。
だが、口から漏れ出るのは、いつもの皮肉気な口調で]
今更、嘆いたところでしょうがないわぁ。
「今」という時間は、絶えず「変化」をもたらすものなのですからねぃ。
重要なのは、「これから」
何をすればいいのかということ。
ブリジット。
貴方が、騒動に協力していないというのならば、私達に協力して頂戴。
精神のを止めるために。
何をすればいいのかは……自分の中で答えは出ているでしょう?
どうしました?
[用もなく声を掛ける事は意外と少ない生命の竜へと意識の一部を割く。残りの多くは剣を奪う為に]
…そうですか、翠樹にはもう。
ならば他にオティーリエの名を知る者に…?
[呟いて機鋼の仔の具合に耳を傾ける。暫くの沈黙]
――…わかりました。
これ以上、足掻かないよう結界に送りましょう。
あの中なら事が終わるまで安静に出来るでしょうから。
[やめる、という選択肢は既に無い]
氷で出来た歯車?
[ブリジットの問いに疑問で答える]
……少なくとも、私がこの部屋に来たときには見ていないですわよ?
むしろ、そんなの触りたくもないですしねぃ。
氷で出来た歯車じゃと?
[ブリジットに言われ己の周辺を探し始める。果ては下に敷いていた毛布の下をも探すが、それらしきものは見つからず]
ぬぅ?
そのようなものは無いようじゃが…。
何か大事なものなのかの?
あーもう、足に来てるし…
[壁に縋って、ひょこりと立ち上がる]
まずいなあ…見つけるまで保たないかも。
[ためいき]
それに、怒られそーだし。
[ええ、各方面に]
―東殿・氷破の部屋―
そう、ね……。それは、大丈夫。
辛いからって、今を封じ止めて、過去に浸ろうとは思わないから。
そう、これから。これからが、大切……。
[胸の辺りに手を置いて、呟く]
もちろん。
アーベルの事に気付けなかった事もあるけれど……
きちんと、お仕置きしないといけませんから。
[ナターリエを見据え、呟いた]
─西殿・寝室─
[束の間の眠りからゆるりと這い出す。
未だ元の姿には戻れぬまま。]
…おかしい、な。
煙草切らしてるから…って訳じゃないだろうし。
[満ちてこない、力。
違和感に、その手を握って開いた。
剣の力に押し流された影響は、緩やかな変容として肉体を蝕んでいく。
燃えるような赤毛の一部は、燃え尽きたような灰色に。]
―東殿・氷破の部屋―
[流水竜と老地竜、二人から見当たらないと言われれば、顔を曇らせて]
ザムエルのそれを封じている、鍵のようなものなんだけれど……
……やられたわ。アーベルに、持っていかれたみたい。
[口元に手を当てて、眉を顰めた]
片翼の。
< 縮まる距離。
顔を上げ、舞う粒子を視界に納めた。
少し、螢火に似ている >
剣を用いれば、その願いは叶うのか。
世界の理を壊して?
< 手を握ると、微かに鎖の音が鳴る。
黒布の上から触れた粒子にか、石が揺らめいた >
オティーリエの名?
ああ、ひょっとしてそれが合い言葉になってたんだな。
…他、知ってる奴居たっけか。
[ひょっとすればザムエルあたりは知りえたかもしれないが。
今老竜がもう一振りを持ちえるはずはない。
エーリッヒを結界へと、告げる言葉には頷くしかなかった。
辞める意志が無い事には、少しの間沈黙。]
…好きにするといいさ。
それが剣を得る為に必要なことなら尚のことな。
[止めようとは、思わない。]
/*
ちょwwwwwww
お前らwwwwwww
御大といずまさんはうぃるすじゃないよ!
なんでそこまで侵蝕するのよwwwwwwwwwwwww
……彼女の事も彼の事も、多くは知らないな。
オティーリエの願いと、その覚悟は聞いたが。
それを写して、願いを抱いた。
影輝王はその事を見越していたのかもしれない。
だから、剣をこちらには渡さなかった。
だが、ならどうして、連れて来たんだろうな。
何かが起こる事は予想出来ていただろうに。
< 何を願ったか。そう問われ、眼を伏せる >
一時は、影であることを願った。
一時は、己であることを願った。
今は――…
[ブリジットの威勢良い答えを聞けば]
おお。怖。
[と、おどけたように首をすくめた。
だが、続く言葉には、少しだけ表情が真剣になった]
なるほどねぃ。
短時間で封印を解けぬならば、鍵を持ち出して、ゆっくりと解く、か。
……大地の。
いつ封印が解けても良いための心構えをしておいたほうがよさそうですわよ?
何と…。
[封印の鍵。それが見当たらないと言う]
それを壊されてしまえばかけた封が解かれてしまうと言うことか?
安定欠く今それをされてしもうたらちぃと拙いかの…。
[考え込むように顎鬚を撫でる。封が解けたならば、己はその抑制に力を注がざるを得ない。それを意味する言葉だったのだが、その奥には自分でも気付かぬ操作がなされていた]
[封を解かれてしまったら「抑えられぬ」と言う植えつけられた意識が]
[翼を仕舞おうと四苦八苦していたが、結局諦めた。
そこらに合った服の背中を切り裂いて身につけ、外へ。]
…様子どーよ?
[水鏡の前に集まってる者たちの後ろから、ひょいと覗き込む。]
[紫紺の瞳に過ぎったのは、機鋼の仔の伝言による動揺だった。
この数日、記憶に刻んだだけでも彼が嘘偽りを述べる事など無いとわかる。その無機の心の動きを感じていたのだから尚更だ]
………わかっています。そう簡単に扱える代物で無い事は。
だからこそ、私は『神斬剣』を手に入れる。
属を共にするあの剣なら、力を使いこなせるかもしれないから。
[剣を一本だけでも使いこなせるなら、青年だけでなく月闇と生命の願いを叶える事も可能だからと心の奥底にある判断が浮かんでは消える。
その為の対価は、青年自身で払う覚悟はもう済んでいる]
――…えぇ、それでも。
っと、火炎の兄さん。
……だいじょーぶ?
[傍目にも落ち着いてるとは見えない様子に、やや眉を寄せて問いつつ]
……なんか、あんまり良いとはいえない感じ?
[神斬剣周りの様子に、ほんの少し声は不安げに]
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