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[ ――緋色の雨が降り注ぐ。
緩やかに卓上に歩み寄った彼が手にしたのは、全てを見詰めていた真白の花。己が血で真紅に染まりし手を其れへと伸ばし、細き花弁に薄い口唇で触れる。
細めた眼に映るのは嘗て人であった者と人成らざる者。死者と生者、彼岸に往きし者と此岸に残りし者。
白の花を其の狭間へと放れば其の色も香りも染まりゆく。其れは手向け花か命を摘み採った証しか、真意を知る者は無い。]
[何時の間にかぐったりと][力を失った女の身体を抱き抱え]
[首に接吻を降らせる様に][忙しなく角度を変え何度も]
[犬歯で創を咬み拡げ][舌を尖らせ其処に]
[ぴちゃ][ぴちゃ][と]
[濡れた音が]
[静まり返った室内に虚しく響く。]
[激しい憎悪の中、ぽつりと浮かび上がる悲哀にも似た]
……逃げ…
[それは唇から零れたか、零れたように思っただけか]
[緋の闇に沈んで行く彼女が知る故はない]
[ネリー][血に染んだ侍女服を纏った女性が]
[生まれたばかりの獣に抱かれ]
[息絶える迄の刹那]
[庇護していた少女を][霞みゆく眸で見詰め]
[弱々しく震える唇で][何か告げようとしていたのを]
[終に彼が知る事は無い。]
……悲しいことだわ
[意識の浮かぶことはあぁ…
わたしの意識はその光景をみている。]
もう戻れないのだわ……
わたしもあなたも
[わたしとは違う、
それでも異端である者。]
生きている限り
戻れなかったのだわ
[まるで夢の中のように少し遠い光景。
あぁそれもそうだ、わたしは彼の腕の中にいるはずなのだから]
流れ者 ギルバートが「時間を進める」を選択しました
[不思議な感覚だった。
わたしは夢の中で現実をみる。
悲しいこと。
彼らをわたしは止めることができず
わたしは彼らの狂気を見るしかできず]
/中/
何も言わなかったのにぎりぎりまで抵抗&睨み付けさせてくれて嬉しい中の人。
ギルサンクス也。愛してる(マテ
或いは年相応に泣きじゃくっても良かったのだけどね。生きながら喰われたらの話。
殺してあげられれば良かった……
[あぁわたしだけでよかったのに
かなしむ人はみたくなかった。
優しい子たちが、そうしてしまうのを見たくなかった]
[ゆらり
張りつめていた空気が揺れる
切り裂く銀は
しかし少女には荷が勝ちすぎたか
其れを掠めるだけで]
[撃たれた青年は
わずかに血を流し
ナイフを取り落とすも不可思議な笑みを浮かべ]
…あぁ、あいつが
[腕に抱いた女性の命を喰らったのは
紛れもなく彼なのだと
確信せざるを得ない
獣の…]
[また新たに空気が動く
霊視の巫女…その彼女が落ちた刃を
しかし其れは獣には向けられず
彼を撃った少女の命を奪う]
…あぁ、信じた物を守るために。
[其れが間違いであると誰が責められるだろうか?]
[ 歯車は何処から狂い始めたのか、或いは最初から狂っていたのか。広間は生命の証と揺れる焔とで緋く彩られ、其処に在るのは狂気の宴。人間には毒、獣には美酒を思わせる、噎せ返る程の甘い馨り。
護り手の少女の視線の先には、恐怖にか足を竦ませ震える幼子が。然し其の声を聴き留めたのは巫女だけであったろうか。
何時の間にかカーテンの向こうからは零れる月の光。少女へと緩やかに向けられる黒の視線も叉其の色を宿す。]
……武器庫では、どうも?
[ 柔らかに紡がれた科白に、少女は其の意味を理解したろうか。]
壊れたものは戻らない……
[わたしはそれでも
あわれみは覚えられずに]
あなたたちはしあわせで、
しあわせを求めて
だからそれしか…………
[*わたしはただ、ゆめのかなしみの中に涙をこぼす*]
[そしてまた新たに空気は動く]
[動いたのは男の命を奪った彼
緑の髪の少女に襲いかかり
押し倒し
何か囁いた後で
手にした刃でその首を掻き切り
目覚めた獣は血を啜る
その刃の正体を知り
自嘲]
[赤く赫い闇]
[身も心も魂すらも委ね切り]
[今も緩やかに][記憶と心を上書きしていく]
[嘗て愛し裏切った]
[獣の記憶][獣の心]
[其れを一身に受け取って]
[最早躊躇する事無く]
[溶けて蕩けて][一つに]
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