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[足許はなんだかふわふわとして頼りない心地です。
壁に手を突こうとするとすり抜けてしまいました。バランスを崩して転びそうになります。
何とか体勢を立て直すことはできましたが、その一連の出来事だけでも、僕の死を逃れようのない現実として突きつけられた気分になりました]
……。
[泣きだしそうなのを堪えて、無言のまま、ただ歩きます。
明確な行き先は分かりません。ただ何となくこちらだ、と感じられる方向に、ひたすら足を進めました]
― ライヒアルトの自室を尋ねた翌日 ―
[何かとても面白い、いや、嫌な予感がした。
貰った飾りはとりあえずいつも持ち運んでいるが、
なんとなく外に出歩くことにした。
まだ、人を喰う必要はないくらい落ち着いている。
そして、月の下、エミリーの姿を見ると、よぉ、と何の気なしに片手をあげた]
お前こんな時間に散歩してると、
ライヒアルトに心配されるんじゃね?
[金色の人狼は、にやりと笑う。
少なくともその晩、彼女の気が済むまでは、話し相手にでもなるつもり。
余計にいらだったかもしれないが、それは知るところではない。
そして、残された本の中に、一枚の紙が挟まる事になる。
『鈍感』
の一言しか書いていないわけだったが**]
/*
>>884 ノーラさん
[くろねこ、兎猫さんをさすさす]
や、無理無しでいいですからw
後からコミュで、で大丈夫ですよー。
[アーベルにタイトルの無い本を貸したその翌日、
男は彼の元を尋ねていた。
宿にはノーラも泊まっている。
件の日記は、最初に人狼となった誰かのサインがあり、
様々な実験と結果が書かれていた。
どの程度の傷が、どれくらいで治ったか。
人を喰わずに居られる時間はどれくらいか。
筆跡が、人の名が代わり、続けられてゆく考察。
ウェンデルの文字が入る一つ前は、
ただひたすらに書籍の知識を入れているようだった。
人狼の発祥はいつか、どこか、どうやって生まれるのか。
人狼となった者が人間に戻ろうとした、その末路。
そうして、その文字は途切れ、最後に書かれたのは――死を告げる言葉]
[大きく見開いた僕の目に見えた2人の内、1人が口を開きました。
自然な動きで、僕の傍に立ちました。>>883
浮かべていたのは少し困ったような、優しい笑み。
僕の亡骸を前にした時は、あんなに涙を零していたというのに]
……、……あ……
[理由は、理解したくありませんでした。
だけどそう思った時点で、僕はもうとうに気づいていたのです]
よー、アーベル。
読んだか?
[宿屋にやってきた男は、彼を見て、笑って問いかけた]
しかし村ん中、空気悪いよな。
早い事水が引けばいいんだけど。
――引いたら出てくよ。
ま、手紙くらい出す。
[そんな風な世間話もする。
二年間を想像すれば、最後の言葉の真偽はたやすく知れようが。
生き残った狼は、聞かれれば何にでも答えた事だろう。
ただ彼が出て行く事については、心配だの言葉を伝えはした筈]
[娘が家を出ていってから何日経っただろう。
泊まっている場所はわかっているのだから、顔を見に行くことはできるはず。
そう思っても、足は向かなかった。
家から出ることなく、ただ漫然と時間は過ぎていって。]
……そう、ですか。
あの子が─ロミが、人狼に。
[殺されましたか、と。
呟く声はほとんど吐息のように小さくなっていた。]
[最初から。
ロミが呼ばれた時から、こうなると解っていた。
全て同じだったから。
妻が───エヴァが呼ばれた時と、状況も、呼び出され方も。
だからこそ、悔やんだのだ。
あぁ、私には、止められない。
これから起きる悲劇も、娘の死も、傍に居て代わりになることすら出来ないと。]
―白い月明かりの下で―
[噂をすれば影、とは正にこのことか。
月明かりを受け、ひたり此方に歩み寄る男の姿を見とめ
エミリーは緊張に息を呑んだ。
気安く片手を挙げ、気安く話しかけてくる金色の人狼を、内心恐れつつも精一杯の虚勢を張り]
……そうだね。
人食いの狼に出会ったら、大変だもの。
そんなことより、尻尾を掴まれるような真似は
当然、してないだろうね。
[言外にライヒアルトの部屋を訪れたことを咎めながら
独りの散歩のはずが、思いも寄らぬ成り行きになったと
小さく溜息を吐くのだった]
[10年以上前。
絵の勉強に出てきたはずの街は、私よりも才能ある者に溢れていて。
自分の絵など売れやしないと、怠惰な生活を送っていた。
そして遭遇した、あの悲劇の場で妻と出会った。
結社員としてその場に居る者達を叱咤し、指示する妻は見るからに神経を張り詰めさせていて。
支えたいと思った、心から。
何度も断られて、それでも諦めずに口説いて、口説き落として所帯を持って。
彼女を養う為にまた描き始めた絵も、徐々に評価されるようになって。
幸せだった。何も恐るモノなどないと、思っていた。]
[けれど、娘が生まれて。
娘の胸にある痣を見てから、妻の様子はおかしくなった。
一緒にはいられないと、毎夜嘆くようになった。
そして、ある日。
結社員として、人狼の疑い有る者達が集められた場へ向かうと、そう言い出した妻から娘の胸の痣の意味を聞かされて。
生きて帰ってこられたとしても、人狼に狙われる可能性の高い結社員が娘の傍にいることはできないと、告げられた。
妻は別れる際まで、娘を頼むと、人狼に狙われることなど無いようにと言っていたのに。
私は、それを叶えることはできなかった。]
[守ってやれなかった。
守れなかった。
幸せにしたいと願ったのに。
二人の人生が不幸ばかりだったとは思いたくないけれど、少なくとも幸せな最期では無かっただろう。
娘の成長を側で見守ることなく逝ってしまった妻も、未来を手折られてしまった娘も。]
………私ばかりが、生きていても仕方ないのに。
[ぱたり。
落ちた涙が、床に染み込み痕になる様を見つめながら*独りごちた。*]
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