人狼物語 ─幻夢─

18 【機鋼の宴】─精霊演戯・第三演─


研究生 エーリッヒ

―いつかの話―

 一匹の猫がそこに住んで、だいぶ時のたった頃。猫の耳はかすかに震え、いつもとちがう音を聞き取りました。小鳥たちのさえずりはどこか緊張を孕み、草の香りを運ぶ風に鉄のようなものが混じっているよう。感じとった時、水より深い青の目が見開かれ、猫は小屋の中、床の上に降り立ちました。
 一瞬の空白の後、扉は開いて、薄い黄金の色をした髪がそこから外へと出て行きます。最後まで扉に残った、群青色の腕輪をした手も消え、その小屋はふたたび静寂を取り戻しました。

 森は広く、少年はそれでも迷うことなく走ります。やがて見付けたのは、優しい川の音。
 白金の色をした傷付いた獣を、彼はその時はじめて目にしたのでした。

(2806) 2007/11/27(Tue) 18:17:02

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