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―― 西殿・廊下 ――
『だめ…』
[子供がむずかるような、拒否の意志に反応したのは、他でも無い、彼をこの結界の内に送り込んだ虚竜王の力の残滓……言ってしまえば不機嫌のカケラ。それは拒否の意志とは容易く同調し、停滞の力を薄める]
[一度立ち止まり、探知の風を巡らせる。
一応、大丈夫だとは思うのだが]
火炎の兄さんも大概無理してるっぽいし……。
どっちもちゃんと休ませねぇと、ヤバイよなぁ。
カケラの事もあるし。
[カケラに関しては、火炎の放った焔がある程度は対応できるはず、と思いつつ階段を降りきり]
─ →西殿・廊下─
ん、と。
こっちか。
[風の捉えた気配の方へと歩みを進める]
―西殿:地下室―
[ある程度の回復しか見込めはしない。
すぐにこの剣に気付かれるだろう。]
――目を作りますか
[蝙蝠が一羽、閉めた扉から出て、先ほどまでいた部屋のそばに向かう。
ぴたりと天井にとまると、しばらくは様子を見る。]
[暗い翠の目は、その目を通して。まわりを見る。]
[飛んでゆくときに見えた廊下の様子も。
決して、構うことはなかった。]
[闇の中でどんな顔をしていようとも、それは見えるわけがない。]
―東殿/どこかの部屋―
[彼女と剣の無事、結界の中と外の竜達、そしてかけられた問い。
いつかは当然訊かれるはずであったそれに、青年は口元に微かな笑みを浮かべた]
二つを合わせ『真・聖魔剣』に。
――…そう言いたい所なのですが、この状態では少々難しい。
[口元の笑みが苦笑に変わり、生命の竜を見る。紫紺は覗き込みはしないけれど、その心の動きをいくらかは映す]
……貴方は、いいのですか?
[今更かもしれないが、止めないのか言外に問う。それは生命竜の心の奥を覗いたからこその言葉]
[途中遭遇したカケラに関しては、以下略。
進路を塞ぐようであれば『掃除』して、そうでないならひとまず無視をして]
……っとー。
あ、いたいたー。
[そんなこんなでたどり着いた場の空気は、やたらと深刻だったかも知れない]
って、げ……。
これ、大丈夫……じゃ、ねぇよな?
[三角錐の中のエーリッヒと、傍らの二人とを見比べながら問いかける。
……何かしら、違和感のようなものを感じるのは、何度も感知した不機嫌の影響かも知れない]
―― 西殿・廊下 ――
[ゆっくりと引き延ばされた時間の中で閉じていた瞼が開く]
だめ だよ…俺は…眠ら、ない。
[対なる精神と生命、誰よりも彼等を止めなければならないのは、自分だと。剣の力が彼等を…この世界そのものを害する前に]
[未だに難解?なユーディットの説明をどうにか把握した所に聞こえた、微かな声]
……あれ?
[振り返れば、目を開いた機鋼の竜]
だいじょーぶ……かよ?
―― 西殿・廊下 ――
[焔竜は、苦い顔を向けたろうか。それには「御飯食べてる?」とかいささかピント外れな問いかけを投げて]
あは…だいじょーぶ、では…ないですけど。
[風竜には、淡く笑みを見せた]
ま、見たまんまだよな……。
[淡い笑みに、さっくり返して]
つか、そろいも揃って、ぼろぼろ過ぎ。
死人出てねぇのが奇跡じゃねぇの、コレ……。
―― 西殿・廊下 ――
[風竜の言葉に、そうですね、と頷いてから。僅かに目を伏せる]
……俺が……機鋼の力が消えたら……アーベルさんとクレメンスさんの力が弱まったりは、しないかな。
[それは、可能性のひとつとして口にした言葉。風竜の過去に触れるとは知らず]
―東殿・どこかの部屋―
流石爺さまだぁな。頭も固けりゃ心も固ぇってか。
[へらり笑って、顔をみやり。]
無茶にはこの際多少目ぇ瞑るかね。結果よければ何とやらだ。
[それから視線は膝の上の黒い腕輪に。
腕輪の均衡に影が役立っているのは、こちらも気づいていない。]
[二つをあわせて一つの剣に。
以前そういえばそんな事を聞いた気がしたが。
今難しい、にはまぁそうだろうなと、肩を竦めて一度椅子からは立ち上がる。
同じ部屋であれば、以前氷竜に出した即席の茶でもあるだろうと探し、見つかれば湯を入れて一つだけもってきて寝台の傍のテーブルへと置いた。自分の分はない。
再び椅子へと腰かけて。
問いと共に投げられた紫紺の視線には、少しの間沈黙し。]
そうだなぁ…ああ、一つだけ頼んでいいか?
どうやって願いを叶えるか分からんが。
俺の願いは叶えないでくれ。
…無論降りるわけじゃねぇよ。
叶える願いが少ない方が、負担も影響も薄くなるだろ。
[答えの代わりの頼みには、さてどんな顔をされたか。]
はあ?
[目を伏せながらの言葉に、最初に上がったのは、とぼけた声。
次の瞬間]
……お、ま、え、な。
弱まるどころの騒ぎじゃねぇだろっていうか!
そういう事は、ネタでも考えんじゃねぇよっ!
[火炎の竜もいい顔はしないだろうが。
それに勝るとも劣らない、不機嫌な様子で怒鳴っていた。
手まで出なかったのは、一応、状況を考えての、自重]
[へらと、いつもの軽薄の笑みを浮かべ。
さも何でもないことをいうように口調は軽く。]
止めは、しないさ。
だが今は…世界の崩壊すら省みずに、渇望した願いってやつが叶った時の、その結末が見てみたい。
おいさんはよ、もう全部捨ててまで願いをかなえようって気持ち、薄いのよな。
何度か、その時の心持ちを思い出しはしたんだが。
[内側に埋めた過去は、殻を破って何度か鮮やかにその時の情景を、強い思いを呼び起こし、揺らされた。だが。]
それでも時間が経てば……すぐ色褪せちまう。
代わりに出てくんのは、姐さんやら兄さんやら、チビやら氷竜殿やら卵姫やらティルやらなにやら、そういうので。
…歳は取りたくないもんだな。色んなものが増えちまう。
[苦笑して返したその顔にあるのは、微かな悲しみと苦み。]
―― 西殿・廊下 ――
[怒られました。多分、これまで沈黙していた機鋼の砦のにーちゃん達からも、一斉突っ込みが入ったと思われます]
あう…ごめんなさい。
[しょげた]
俺は、一番叶えて欲しい時に、願いを叶えられなかった。その手段が俺には無かったからな。
ただ時間だけが過ぎていって…その結果がこれだ。
今のお前さんらには、強い願いも、叶える為の手段と力もある。
全部揃ったら何が出来るか、何をするか。
…ま、止めはしないさ。
[それは、進むも引くもという二つの意味を含んではいたが。]
―東殿/どこかの部屋―
[暖かな湯気ののぼるカップに視線を落し、沈黙を待つ。
やがて返された生命の竜の頼みに、小さな声を上げて笑った]
願いを叶えない事が願いなら、叶えない事が叶える事。
ですが、貴方が言いたい事は違うのでしょうね。
[負担を減らす為と言われ、やはりという風に頷いて顔を上げる。
そして語られるクレメンスの言葉と心を静かに受け止めていく。
凍らせた心は揺れて、ゆっくりと溶けて、緩んだ封が腕輪の気配をよみがえらせていく。危うい均衡を保ちながら]
[兄弟総突っ込みまでは気づく訳もなく。
しょげた様子に言いすぎた? とは思うものの]
……それって、おっちゃんと精神のを抑えるために、お前が犠牲になる、って事だろ、よーするに。
犠牲になる、っつーのは、見た目はカッコいいし、やってる方はいなくなるから気楽かも知れねぇけど。
……残った方は残された方は、それ、ずっとずっと背負わなきゃならねぇんだよ。
だから、冗談でも考えんじゃねぇ。
[ここまではやや、低い声で言って。
続いたのは、大げさなため息]
大体、そこまで悲観しなくてもいいだろーが。
前向きに考えろ、前向きに。
――…私の『願い』、オティーリエの『願い』――…
[青年の口元には、いっそ優しげな笑み]
止めないなら、止まる筈も無い。
私は――…『願い』を叶えますよ、クレメンス。
貴方が得られなかった機会を、手段を、手に入れたのですから。
[言葉と共に黒の腕輪をもう片方――左の腕に嵌める。
少しずつ心の封を説き、使える力を戻しながら青年は微笑んだ]
―― 西殿・廊下 ――
[風竜に低音で諭され?ると、いちいちごもっともと頷く]
はい…もう、考えません、から。
そうですね…俺にも、まだ、出来ることがある…きっと…
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今回はある程度力ずくバトルコースでなく、説得されコースを目指しているのですが、ラスボスがへたれては意味がない。
心を揺らしつつも目的に邁進して――止められつつ力尽きるくらいがいいのですが難しいです。
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