[風が花弁を舞い上げて、くるくると踊る。カタカタと鳴る窓に、ロランは黒い睫毛に縁取られた目を上げた。膝に置いた本は、つい最近旅人が来た時に貰ったもの。ふ、と、落ちた溜息と共に、暗い部屋の床板へと落ちた] …騒がしいな。[キィ、と高い音が鳴るのは膝の更に下、ロランが座る武骨な色。左右に銀の輪付いた無機質で硬質な、車椅子の軋み。片手で器用に操り、窓辺へと寄ると広場が一望出来る。楽しげに話す人々の色彩を眺め、そっと窓を開ける。会話の声と共に、遠くで獣が鳴く声が聞こえた気が、した]