[ それは、前触れも無かった。 突如、何かが――否、「無い」に等しい筈の、虚ろなものが揺らぐという、不可思議な感覚が襲った。影が黒の瞳を僅か見開き、顔を上げた刹那。 中空に発生せしは、時空の力の象徴たる無限の輪。 それはノーラの腕の中に在った陽光の仔竜を捕らえ、その輪の内に取り込む。 物理的な介入など何の意味も為さず、引き止める事を許さず、一瞬の内にその姿を此の場所より掻き消した。]