[部屋の主───ヘルガはエーリッヒの侵入に気付いていたか。
気付かれたにしても、声を上げられると困るため、即座に近付いて左手で彼女の口元を掴み、口が開けないように押さえつけてしまう]
……恨みはないんだけどね。
私が生きるためなの。
[暗闇の中、紅い月明かりが差し込む部屋に女性の声が響く。
なるべく苦しませないように、と。
右手を獣の爪へと変化させて、ヘルガの胸──心臓目掛けて思い切り突き刺した。
拘束から逃れようとするヘルガがエーリッヒの左腕を掴みにかかっていたが、胸へと突き刺した衝撃で一瞬その動きが止まり。
次いで左腕にしがみ付くように爪を立ててきた。
ワイシャツ越しに食い込む爪に顔を顰めるも、振り払うことはせず、右手で心臓を握り込む。
ぐるり、と手首を返し引き抜くと、深く空いた孔から鮮血が飛び散った。
ヘルガの胸と、右手に掴まれた心臓から紅い液体が零れ、ベッドと床を塗らしていく]