[陽光が村を薄く照らし始める頃、
ロランの姿はキリルとレイスの家の裏にあった。
傍らには黒銀の毛並みを持つ狼が控え、
イヴァンの畑に置いたままの車椅子の代わり。
見下ろしているのは、白い花。
可憐に花開いた、その夢のような香り纏う花]
…本当に、いい香りだね。
[呟くと、ひとつの花を土から掘り返す。
あの時、あの山で、そうしたように。
根ごと革で出来た袋に入れると、鞄に入れた。
そして狼の背にしがみつくと、獣は力強く地を蹴り。
いくらかの獣の毛と土踏む足跡を残して、
黒い大きな影は森の中、川の方へと消えた**]