─ 前日 ─
[淀みなく幻燈歌を紡ぐ声。>>11
その響きの深さに、少なからぬ訓練を積んだものを感じたのは生業故。
己と同じ危惧を示すその声>>12の主と団長の間の空気にゆると首を傾いだものの、その場では言葉の所以を問う事はしなかった。
見た目はともかく、内心はかなり、荒れている。
今は自身も気を鎮めねば、という思いが、ピアノへ向かわせた理由の一つだった]
……やれ。
死ぬほど暗唱させられた幻燈歌、よもやこんな形で見えようとは。
[自室と定めた客室に戻り、独りごちる]
……このために、夢枕に立ったわけではあるまい、親父殿。
…………大体において、「所詮お伽噺」と言い切っていたのは、あんただ。
[死者に文句を言っても始まらないが、言いたくなったんだから仕方ない。
そんな事を考えながら、一つ息を吐いた]