―東殿・回廊―
[さてオティーリエに聖魔剣を渡したのには理由が二つ。
一つはアーベルがそれを願ったこと。
二つは自身が持つには手に余る事。クレメンスには『守る力』が無い事と、それほど剣に執着していない為下手をすれば他の誰かに渡してしまいかねなかった事。
三つはオティーリエの部屋を去った場所、向かった先にある。
一つ増えたが気にしない。
アーベルの傍から少し離れた場所に、姿は現われた。]
…アーベル!
[倒れ伏せた竜に駆け寄り、身体に手を触れる。死んではいない、が。酷く消耗している。琥珀が集まり、回復を促すがどれほど効果があるだろうか。]
怪我、じゃねぇな。精神的な疲労か。
爺さまから剣を奪うのに難儀したようだな。
[ちらと、その手にしたものを見るだけで触れはしないが。
感じる頭痛は、腕輪に近づけばより酷くなるような感じがした。]