─ 回想 ─[もう10年も昔になる。森の中の小道でこの犬に助けられたのは。林業で生計を立てる小さな村は森に囲まれていた。隣町への行き来には、ただ1本の小道しかない。母のお使いでその道を通ったユリアンは、追い剥ぎに襲われた。殴られて昏倒したユリアンは、金目のものを奪われ、上着まで剥がされた。あのまま藪の中に打ち捨てられ、夜を過ごしていれば、間違いなく凍え死んでいただろう。どこからかやってきたビルケが寄り添い、寒さから守り、吠えて村人にユリアンの位置を知らせてくれたのだ。]