―食堂―
[アーベルと別れ向かうのは彼が来た宿屋の扉。
入る前から外に魚が焼ける良い匂いが漂っている。
リーズナブルな値段で食事が取れ、頼めば包んでもくれるので
ゲルダが毎日のように訪れる、宿屋内の食堂。
扉を開ける前 ふと空を見上げる。
雨が降る前の独特の、匂いがした気がしたから。
そのまま無言で扉をくぐり、中へと入ると、
顔馴染みの女将の笑顔が迎えてくれる]
…――あ、あの、ここ、こ此れください。
[通された席で、書かれている物を指で指し示す。
本日の日替わりメニュー。焼き魚らしい。
注文を聞いた女将が背を向けると ふ と息を着き
グラスに入った水をこくりと一度飲んだところで
ゆったりと 無表情の侭に辺りを見渡した]