― 学長室 ―[学長室の机の上にはメモが残っていた。その走り書きは学長のものと直ぐに知れる。『今はただ 恨みもあらじ 我が徒らの 命に替はる 我が身と思へば 』似た句を何処かで読んだことがあった。それは辞世の句に他ならず]今はもはや恨みなど無い――…我が生徒らの命のかわりに死にゆく我が身だと思えば……[学生一人一人の名を覚え真正面から接していた学長の思いがその覚悟がじわりと胸に沁みた]