―工房『Horai』/客室―私の目には、ライ君もミハエル君もカルメンさんもちゃんと映ってるよ?[聴かれても構わないと謂った風なライヒアルトの言葉は、ゼルギウスの耳に届いていて、内緒を願う仕草を見せる人に心外というでなくキョトンとした顔で告げた。紅はカルメンの視線の先を追い、外を見る。暗い空に走る閃光に暫しの間、眸を奪われる。光を求めるように、男の手は上がり、けれど馨る薔薇の薫りに上がった手の行方が変わる。振り向き伸ばしかけた手は、身を抱き寄せる前に、彼女の手に握られた。]