―― 早朝/森 ――[青年の朝は早い。夜も明け切らぬ頃に目を覚まし、木々の合間に覗く深い青紫と鮮やかな橙の入り混じる空を仰ぐのが常だった。森に住まう小動物の多くも、まだ寝床で夢に浸る時刻。鳥の囀りも疎らで、木の葉のさやめきばかりが聞こえる。朝露が地面に落ちる音すら響く気がした]……さて、と。[ぐるり、右肩を回す。腕に痛みはないものの、若干の熱は残っていた。どうにも、魔法との相性は悪い。その事実を知っているのは、ほんの一握りの者だけれど]