[昨日ベアトリーチェの部屋で騒ぎがあったとき、既に彼の右手には包帯が巻かれていなかった。けれどクロエがその時、それに気づくことはなかった。騒ぎに紛れ、ローザに気を取られて気づけなかったのだ。だから初めて彼が右手を晒しているのを目の当たりにして、漆黒の目を見張り、続いて彼の瞳を見遣る] ─────…。[何か言いたかった。けれど言葉にはならず、きゅっと口元を引き締めるのみになる。彼の決意は既に聞いていたから止めることも出来はしない。それでも…気掛かりなのは、気掛かりなのだが]