有り難う、ゲルダ。
[二つの事に礼を言う。
ノーラの行方。カルメンのピューリトゥーイの話。
カルメン。彼女は、何処かで会った事があるような顔をして、ヘルムートを蒼の瞳で見た。]
カルメン。
彼女とは──実は何も話していない。
ただ、[女性に気を配る言い回しで] 勘にすぎないのだが、
春をひさいでいた女性では無いのか、な。
[大人しい女性だと評した者もあったらしい彼女の、独特の艶かしさ。彼女を捜して戻って来る度に疲弊してみえたオトフリート。仄白くかぼそい肉体と眠たげな眼差しが底なしの沼のような。花柳界には、その種の女性が多く居た。]
意思の強さで──か。
気をつける。有り難う、ゲルダ。