―二階・エーリッヒの部屋―
[ナターリエがかける声に、自分は意識を取り戻すことはなかった。
けれども、呼ばれた名前は落ちた意識の中に響いて、呼ばれた意識は夢を見ていた。
エーファと二人、手を繋ぎ並んで歩く夢。
ルカねえと名前を呼ばれ、不意に繋がれた手は離される。
振り返ると、いつの間にかその姿は離れた場所に、手を伸ばしそちらに行こうとし、深い崖かあり行くことができない。
エーファは何も言わずに立ち去っていき、
「待って、エーファ!
また、ルカねえって呼んでよ!」
声は届いたのかどうかわからないけど、エーファの姿は見えなくなった]
……る、か、ねえっ……
[夢での言葉の一部、妹がよく自分を呼ぶのに使った名前を呟く。
まわりには皆が集まり始めた頃で、死んだのはエーファだと聞かされていた皆に混乱をよんだかもしれない]