[アーベルのくちびるの動き>>116に、じわりと涙が滲んだ。
届いたと思えば、安堵が過ぎり、答えるように頷いていた。]
――…。
[エーリッヒの明るい髪色を見詰めて
その髪を微かに指先で撫でる。]
あなたを追うわけじゃない。
伝えられなかったことは沢山あるけど
伝えたいから待っていて欲しいなんて言わない。
[殺されたくなんてないし死ぬのはこわい。
アーベルなら止めてくれるかと思い言葉を紡いだけれど
彼に命を奪う重荷を背負わせたいとも思っていないのに。
生きたいと願った獣は精一杯の強がりを
ものいわぬ腕の中のひとに囁きかける。]