―竜都―
[賑やかな通りを歩く竜王の姿は目立つのか。すれ違う竜らの半分くらいは振り返り、主を見る。
今日は黒に近い紫のドレスを身に纏い、髪を結い上げる留め具も紫紺。
紫を基調としたそれらは、何を意識しているのか。黒の随行者にはよく分かったり。
微か、件の王の気配は感じ取れる。
が、それが具体的に竜都の何処からなのか、までは分からない。それに…何やら会うと面倒になりそうな竜の気配もちらと覚えなくもない。]
姐さん、のんびりするのはいいけどさ。
そろそろ行かないと時間、大丈夫か?
[さり気無く、どこか心ここにあらずといった様子の王を促す。]
…別にここで探さなくても向こうでほぼ絶対確実に会えんだし。
ほれ、早く行こうぜ。
「…貴方はこういう時にだけ正論を言うのね。」
[振り返り、睨む様子は王を少しだけ幼く見せた。]