――いきたい。
[姉妹達の手で止血を施され、浮上した意識で答えたのはその言葉。
聲を失ったセイレーンは、たいてい死を求めるのに、生を望んだ。
姉妹たちは口々に良いのかと尋ねる。
あなたの聲は失われた。あなたの尾は失われた。あなたの翼は失われた。
それでも生きたいのか、と。
彼は肯いた]
――…礼を。言いたいから。
[諦めていた故郷の形。
ただの気まぐれだとしても、絶望から救い出してくれたことへの感謝は、尽きるはずもない。
意志が固いことを知ると、姉妹達は治療を始めて。
それを感じながら、意識を落とした。
やがて回復してからも、その名は深く心に刻まれたまま。
何年も、何十年も、恩を返すことを望んでいた**]