[夫と子を亡くしたとき、塞いでいてもつぶやいたことがあった。一度限り、二度はなく。今ではその衝動も失っていたけれど。それは、簡単に堰をはずしてしまった]――…さて、お墓に、行こうかしら。[森のほうから狼の声が聞こえる。一人でいるのは良くないのではと、頭を掠めたけれど。それでも、足は止めることがなかった。広場の篝火は、今日はきっとないのだろう。空に上りはじめる月は、今日も赤く見えた]