今思いっきり掬われてる気がしますよ。
[打ち出した力に上昇し続けていた体は、
力が失われれば重力に従って下降を始める]
奇術師なんて、そんな。
[ふ、と笑みを浮かべる。舞い上がる地表に目を剥くことも無く]
その名は貴女に譲りますよ。
[言葉を合図に生まれる刃はまた数を増やす。
自身の前で旋回し、飛来する礫の幾つかを弾き飛ばして。
けれど全ては弾き切れず、散る其れ等に頬に擦り傷を、体に打撲痕を、腕に痣をと残して。
力を失った其れ等は主より先に落下して、地表に転がって行く]
[みるみる近付く地にぶわりと周囲を風に取り巻かせる。
着地の衝撃に対する吸収と、舞い上げる砂埃による彼女の視界の阻害の為に]
[風に煽られて、地に転がった短剣たちがからからと乾いた音を立ててあちらこちらへと転がって行った]