[束縛は存外軽く。拍子抜けするよりは何かあると警戒が走る。地中のうねりを開放すべく地表に打ちつける拳。それが接触する刹那、はたと気付く]
……は、そう言うことか。
[呪を紡ぐ直前、転がる乾いた音を聞いたのを思い出した。それに気付いた時は既に遅く、地面に拳を打ちつけた体勢の女に刃が様々な方向から迫った]
…流砂を起こすべき、だったかね。
[刃が走ることで身を縛る糸も複雑に絡み。撚り合わさったそれは常より強固となる。刃は身動きが取れなくなった女の脚、胴、腕などへと突き刺さる。身体から力が抜けても絡め取られた身体はマリオネットのように糸に支えられ、赤を滴らせ地面を濡らした]
[地中を生き物のように蠢いていた砂は、地面を濡らした女の赤で腹を満たしたかのようにその鳴動を収めていく]