─工房『Horai』─
[湯を沸かす間に一度工房へと入り、一度手袋を嵌めてから、
作業台の端の方に溜まってあった銀分を、
他の塵が混ざらないよう注意し、丁寧に小さな皮の袋に入れた。
それから余っていたラピスラズリの小さな欠片も別の袋に入れ口を縛る。
然程の量は無いが、人形に使う分には足りるだろう。
二つの袋は一度ポケットに入れて、手袋はまた脱いでから台所へと戻ると、
丁度竈にかけた鍋の中の湯は、小さな泡を立てていた。
カップとポットを一度湯で温めてから湯を入れ、茶葉が十分に開ききってからカップに注ぐ。丁寧に手順を辿ってから、鮮やかな深緋色をした紅茶を4人分、トレーに乗せて客間へと戻ってくると、丁度ミハエルがゼルギウスに話し終えた頃合で。
どこか嬉しそうな夫の顔を見れば、何かいいお話でもあったのかしらと当人らを微笑んで見てから、用意したカップをテーブルに並べていった。]
ああ、カルメンさん。
銀粉と、それからラピズラズリの欠片も少し、入れておきました。
折角だからこちらも持って行って下さいな。
[そう言って、カルメンの前にカップを置く際に、
ポケットから取り出した小さな袋を二つ、脇に置いた。]