―練習所/1階―
[報告を終え、練習を始め、幾分か経っての休憩時間のこと。
いつもの通り長い髪は一つに結い、シャツにパンツスタイルという洒落っけのない格好のエリザベートは、鍵盤の縁に左肘を突き、右手の指だけを踊らせていた]
Stock und Hut stehn ihm gut,
er ist wohlgemut...
[弾む音は、昨日とは一転して簡素なもの。
まだ音楽を知ったばかりの幼い子供の歌だった。
眼を細めたさまは懐かしむ風でもあったが来客により音は中断された]
あ。モニカさん。
[現れた女性は、楽団の楽器を設えている人物だった。
開口一番、異なる曲目を演奏していたことをからかい混じりに叱られる。
それも、昨日は荒い演奏、今日は童謡と、どんな心変わりかと]
昨日も聴いていらっしゃったんですか。
ちょっとした気分転換です。サボってはないから、安心してください。