[夜も更ける頃、額に手をやる。狐の面は、今はない。ぴしりと亀裂が走ったようなあと、やみが潜む場所。脈を打つように――、指先に絡まるそのいろ。これのゆく先を、視た。やみの色の眼で、姿を捉えた。幻覚のような眼が、ただの傷あとだと認識するのは、部屋の外に男の気配がやってきたから。入れと促しの声を上げた。]