─宿屋─
やれねぇことはねぇんだよ。
力持つ者は既に立ち去ったことにすりゃあな。
幸い、自衛団には誰が力を持ってたかを伝えちゃ居ねぇ。
他から漏れなきゃの話だが。
[不敵に笑む様子には腕を組んだまま軽く肩を竦めた。無意識に漏れたクロエの名には、片眉を上げるのみとし]
…確かにおめぇにはその経緯があるから不安かも知れねぇが。
おめぇは、同じことを繰り返そうと思うか?
おめぇの母親がそうだったからって、相手が同じことになると決まったわけでも無ぇ。
全てはおめぇの行動と、相手の行動で決まる。
[敢えて名前をこちらの口からは出さない。それはアーベルが、相手についてを知られたと言う動揺を持たないようにするための配慮]
相手がおめぇの望むように島に残るってなら、それはそれで吹っ切れるだろう。
逆について行くってなら、その後のことは二人で相談すりゃ良い。
…ま、もう一つの可能性については敢えて言わねぇでおくが。