僕は医師ではありませんが……。
医師の卵――エンツェンベルガー医師の息子として、
沈痛剤は、お預かりしておきます。エールラー議員。
[自分ではどうにも理由を判定することはできないと悟れば、
ユリアンから議員へと視線を移す。
父はおそらく彼を診た医師の1人で、彼が覚えていれば、
今の自分の名乗りがどういう意味か知れるだろう。
――彼の存在が、最終的に父が自分が冷凍睡眠に向かうことに、
是を出したものだとは、自分しかしらないことだけれど。
世間体を気にした父が、こじつけた理由。
父は多分、本当に『万が一』が起きるとは思っていなかったのだろう。
けれど実際に『万が一』が起きてしまったなら、
議員の病状を知っていれば、医師の卵とは言え、
医学に通じるものとして知らぬ振りはできなかった。]