[右への斬撃が盾に受け流されるのは予想の内、続く左の剣を受けるはずのランスとの力比べかと覚悟していたのだが、青年の覚悟はその予想を上回った。プロテクターだけで初撃の勢いを殺し、流れた切っ先が脇腹を浅く裂くのも構わず、力込めたランスが、右手から揮われる]
ぐあっ!!
[防具のひとつも装着していない雷獣は、攻撃に全力を使ってしまえば近接位置からの一撃を避ける手段は無い。まともに脇腹に入った打撃に吹っ飛ばされるように左側に転がった]
いってえ…うわあ、効いた…
[それでも両手の剣は手放さず、かろうじて受身をとって、身を起こすことが出来たのは人ならぬ身故か、魔法剣のおかげか。或いは、ただの意地だったかもしれないが]
強いね、ヴィリー。
[まともにランスが当たった右脇がずきずきと痛むのは多分肋骨が折れたかひびでも入ったか、しかし相手も足に傷を負っている状態だ、ハンデとは言えない。片膝をついたまま右手の翠の剣を水平に眼前に掲げ、左の剣は、背に隠すように後ろに引いた。その頃には相手も体勢を整えていたか]