[黒衣の周囲を巡る十五の光に再び瞳が細まる。相手の態度から、本能が逃げられぬことを悟った]
…はぁ、その一部って何なんですかね。
全く覚えが無いんですが。
[肩を離れる碧の異界龍には少し後に気付いたが、今はそれを咎める暇はなく。身体は自然黒衣に対し身構える]
どうも逃がしてくれそうにはないみたいですし。
……お付き合いしますよ。
[小さな呟きは身体能力に優れる男の耳にも届かなかったか。紡がれる呪と、感じる波動。表情は苦々しげに歪められた]
次元魔法、か…!
[己も扱う魔法を相手は放って来る。文字通り光の速さで迫るそれを完全に避けるには至らず。それでも持ち前の運動神経で身体を捻り直撃は避けた。左の鎖骨から肩にかけて線が走り、服を裂き朱が飛び散る]
力を見せるったって、どうしろってんだか!
[パンっと両手を合わせ、マナの渦を作り出し。それから作り為すは十二のダガー。まずは二つを黒衣の足元へ、更に四つを相手の右半身目掛けて。残る八つを、先の四つのダガーが避けられるのを見越し相手の左よりもややずらした位置へと放った]