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[スティーヴの一挙一動を、口に笑みを貼り付けて嬉しそうに見。
心配の言葉を貰うと、目も細めて笑んだ。]
あぁ、ちょっと親父が調子悪いみたいで…寝てない、んですよ。
でも大丈夫です、丈夫だけが取り得、ですから。
[手の平で額の汗を拭い、ふるふると首を振った。]
――あァ、
見ていたのか
[その姿をとらえていたのにも関わらず、狐は苦笑する。]
アレは俺が嫌いなようでね。
親睦を深めるために色々と話をしていた。
己を嫌っているものと話すのもなかなかに面白い。
[わらい、そして問いかける。]
だいじょうぶか?
親睦……?
それにしては、雰囲気が、奇妙だったけれど。
[訝りを含んだ声。
苦笑の気配は、意外に感じた]
……平気、
少し深くを、視ようとしたから。
[頭を振る。
前髪は、額に張り付いていた]
[林檎はいらないというネロの横に、念のため林檎を一個だけおいておき、続いてクローディアの隣にも同じように一個置いておく。そして水鏡を覗いているジョエルへ林檎を持っていくとき、ぽつりと聞こえてきた呟きにがくりと肩を落とした]
……これで私が仮に堕天尸だったら、一体どんな顔してたんだろ?
[後ろから林檎を投げつけてやろうかとも少しだけ思ったが、あえて何もしないで*林檎を水鏡の隣に置いた*]
そうだったか?
――存外に、アレとは気が合うのかもしれないな
[本人が聞いたら嫌がりそうなことを、狐は口にして。]
ふかくを――?
結界樹の中?
[わからぬままに尋ねる。]
なににせよ、疲れているのだろう。
ならば、少しくらい回復してやろうか。
[わらう。]
[貼り付けられた笑みが、微かな違和感を生む。
疲れを無理し笑んでいるからなのか、それ以外の要因かを探る。
細められた目は真意を読みにくい。一種の仮面の様に。]
………親父さんが。そうか。
[努力してもどうならないものも在る。
気休めは口にせず、ただ頷く。
だが、大丈夫と言う口には顰め面を向けた。手も伸びる。]
寝てないで大丈夫な訳があるか。
少し仮眠しろ。その間くらいなら親父さんの面倒は見ててやる。
嫌っていても、実際に話してみれば、
印象が変わるということはあるだろうけれど。
[納得いかない様子ではいたが、
問われた事には、結界樹を見やる]
……、そう。
何か、異なるものが……
視えた、気がした。
[顔を向け、窺うような視線を投げる。
されど、面の下の表情は読めない]
それも、退屈凌ぎ?
親父は、今は大丈夫ぽいです、ありがとうございます。
や、スティーヴさんに見てもらうなんて、そんな、
[糸のように目を細めた笑みを崩さずに手をぱたぱた振ると、スティーヴの中指が額にぴしりと当たり。
子供に悪戯で膝を後ろから棒で突く遊びをされたかのように、膝が折れてぺたりと地面に尻餅をついた。
きょとりと目を見開いて、自分の足元をじっと、見る。]
…あ、れ?
まァ、愉しい話だった。
[狐はそうして、結界樹をあおぐ。]
異なるモノ――?
どういう?
……あァ、退屈しのぎさ。
それに、ただ、気が向いた。
[背の白とおなじような白い癒しの力を、手のひらのうえに集める。
握りつぶすと、ひかりが広がった。眩しくも無いそれは、空気にとけるように消え、エリカの疲労もわずかに回復させる意図をもつ。]
[遠慮する額を中指で弾く。
それなりに力は入れたが、膝が崩れるほどの威力はない。
それの意味する状況に、重い息を吐いた。]
………そんな状態で何かあった時に先生を呼びに飛べるか。
いいから休め!
[力ずくで引きずろうと、襟首に手を伸ばした。]
壊す、というのが?
[微かに聞こえた単語のひとつ。呟いた]
堕天尸が捕えたものとも、
封印を施されたものとも、異なる存在。
……虚に近しい気もしたけれど、捉え切れない。
[白いひかりが消える頃、
眼を開いた。
薄れた倦怠感。
ゆるり、立ち上がる]
今までに、狙われた者。
堕天尸の意図は、何だと思う?
[昨夜からの疑問を、目の前の男にも投げた]
わ、ちょ、スティーヴさん、大丈夫、です、から…!
[襟首をつかまれて引き摺られると、どうしようも出来ない。
背の羽根だけは地面を擦らない様に翼胞へと吸い込みつつ、長身だがそれほど重くもない体はずるずると引き摺られる。
家の玄関へと入ろうとすれば、いつも嬉しそうに駆けてくる疾風は小屋から出ようとせず、その角だけが覗いていた。]
[聞こえていたかとは、口に出さぬ心の呟き。
頷きにまんぞくげにわらう。]
ある種の業だな。壊すということを愉しいと思うのは。
――しかし、それは一体何やら。
[己の額に手をやり、ちいさくわらう。
そして立ち上がった彼女の問い。]
狙われた。
それは付き人殿のことか?
――何がしかに邪魔だった、くらいしか思いつくものはないが。
[アレは俺を嫌っていた、と、嗤う。]
……歩けん状態の何処が大丈夫だ。
[問答無用と大して重くもない体を引き摺っていく。
翼が仕舞われれば抵抗などあってもないも同然だった。]
…疾風? 珍しいな。主に似て体調でも崩したか。
[玄関から中へ放り込みかけ、静けさに首を捻る。
たまの来訪時に足に纏わりついて離れない子犬は、小屋の中から出ようとしない。]
業――……?
[口許に、添える手。
答えが見つからず、呟きのみに終わる]
貴方を嫌っているものは、多そう。
彼を嫌っていたものに、心当たりはないけれど。
[ふ、と息を吐き出す]
狙われたのは、
巫女、付き人、……そして、昨晩は、私。
邪魔だったという思考からいくのなら、
……堕天尸は、私の力を知っていた者、ということになる?
歩けますって…!
さっきのはちょっと、驚いただけですって…!
[言い訳しながら引き摺られ、玄関で疾風の小屋を見て立ち止まるスティーヴを顎を上げて逆様から見るような形で見上げた。
ぽり、と頬を掻いて]
ちょっと喧嘩したんですよ。悪戯したんで怒ったら拗ねてるんです。
[眉尻を下げながら、目を細くして笑った所で玄関から放り込まれ、頭を打っていて、と呟いた。
小屋からはみ出る角はたまに揺れている事から寝ている訳でも無さそうだが、出てくる気配は全く無い。
覗き込めば、酷く怯えた疾風が尻尾を後ろ足の間に挟み込んで伏せているのが見える。]
[業について答えはせず、狐はわらう]
そうだな。
俺は異端だ。厭われているだろう。
――お前の拾い主にもな
[それから、ほうと呟く。]
お前も狙われたのか。
――そう、考えるのが妥当だろうな。
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