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うー……。
『フェーン?』
うー……。
『フェーンってばー』
うー……。
『……フェーン』
うー……。
『そんなに悩むなら、飛び込みとかしなきゃよかったのにー』
[ざっくり一言。ミもフタもない]
いや、確かにそーなんだけど……はあ。
[つい、テンションに流されて飛び込んでしまった訳で。
花冠の意味とか、完全に失念していたのは、失敗としか言えず]
『……フェーン?』
ていうか……何やってんだろなー、俺。
『……』
[相棒、無言で頬をてち]
温泉。
地中から湯が湧き出す現象や、地下水が湯となっている状態、またはその場所を示す用語。その湯を用いた入浴施設も一般に温泉と呼ばれる。
[いや、そんな事を調べても仕方がないのだが。]
[準備と言っても、近場なのだから、然したる大荷物でもなく。
出来ていないとすれば、それは心の準備くらいなもので。
当然ながら、公衆浴場の類になんて、入った事はない]
…………むぅ。
[困った。]
ちょっと考えれば、わかる事だよな……。
ここにいられようといられまいと。
俺……違うのに、さ。
真剣に悩むとか、バカみたいじゃね?
[答えなんてとっくに出てるのに、と。
そう言わんばかりのぼやきに、相棒は無言でてち、と頬を叩いてきた]
……ヴィント。
『人と妖精は近しいもの。
そう証明するって意気込んでたの、だーれ?』
…………。
[無言。軽く、唇を噛んで]
[しかし、彼が困っていようがなんだろうが、女性陣の行動は早かった。
母は勿論の事、侍女のイザベラはとっくに全員分の準備を整えていたし、寝惚けていたように見えたユーディットさえも、乗り気のようだった]
[扉がノックされる音。]
[――溜息]
証明しようとする矢先に、バカ親父にそれを阻まれる件について。
[ぽつり、呟く言葉に、相棒はきゅー、と鳴いた。
その響きから感じるのは『処置ナシ』の意]
『まあ……王も一応は考えてるんだろうけど』
……逐一、間が悪ぃんだよ。
『だよねぇ』
[どこまでもどこまでも、評価はミもフタもない]
─工房・自室─
……あー……何かなー、もう。
[はふ、とため息をついて、起き上がる。
窓からは、通りの賑わいがこぼれ落ちてくる。
薄暗い部屋に差し込む光、それを跳ね返すのは紫水晶と白の花冠]
……あー……マジで、どうしろっつの……。
[紫と白を見つつ、ぼやくような呟きがぽつり、と]
………………………あふっ……
[花輪の追いかけっこの後始末が終れば自宅に帰る…
予定だったが、自衛団長が消えたとなってはそうはいかず。
青年も時間の限り自衛団長を探した…村の中に限られたが。]
[先日から始まった、村の外へ向えない…状況は収まることがなく]
[また、他の村の人々を見るに皆が村の外へ出れない訳…ではなかった。]
[むしろ、青年のように一歩も外へ踏み出せないのは異例のようで。]
[大概は村の内と外を通過する際に軽い違和感。
一部境界に近づくと
…掃除の時にいたある青年のように歩きづらそうにしている者もいたが]
[そもそも、大勢が自分のように外へ出られなかったら、
何らかの噂や騒ぎが起こるだろう…が無かったことからも
どうやら青年の方が異例のようで]
[見に憶えのない不思議な現象に
青年は途方にくれながら広場でグリューワインを啜った]
ま、ぐだってても、はじまらねぇか……。
[呟いて、起き上がる。枕の横に丸まっていた相棒がぴょん、と肩の定位置へ飛び上がった]
……さて、何か食いに出るか、ヴィント?
[肩に乗った相棒に問えば、返って来るのはきゅ、と言う威勢のいい返事。
それによっしゃ、と返してから、ふと、作業台の上の白の花冠を見やった]
[す、と。
青銀の瞳が細められる。
ごく小さな呟きがこぼれれば、白の花冠を銀色の光の粒子が取り巻いた]
……枯らしちまうのも、なんだしな。
[小さな呟きが零れ落ち]
[てちり、と相棒が頬を叩く。
その感触にふとした物想いから立ち返ると、ふらり、と外へ。
そのまま、宛もなく通りをぼんやりと歩いて行く]
[昨日の大騒ぎが嘘のように、でもそれでも十二分に賑やかな通りをぞろぞろと歩く。
その一団の一番最後に付いて行きながら、なんとはなしに周囲を見れば、見覚えのある人影がちらほらと。]
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