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[わたしはベッドの中、目を覚ましている。]
…
は…ぁ…
ん…
[寝転がったまま、思わず声が洩れた。頬が熱い。わたしは自分の肩を力一杯抱きしめ、身体を丸めて耐える。]
/*
教授から妙にタイムリーな冊子をもらった。
脳卒中になると起きる症状を簡単に纏めたもの。
イヴァン、先日の君の症状は脳卒中の症状だったんだよ…!
Ω ΩΩ<な、なんだってー!
ふらつきと頭痛と眼球運動障害(違)ね。
─回想・二階自室─
[運んでもらった料理を受け取り]
[机の上に運んでから問いの答えを待った]
[返ってきたのは肯定の頷き]
ここに来てから…。
その、ウェン君の左手にあったあれが、聖痕。
[紡ぐと同時にウェンデルの右手が左の手袋を外す]
[視線をやると先日包帯を巻くときには無かった場所に、新たに増えたとしか思えない痣があった]
[驚きに真紅を丸くする]
こんなことが──……。
[このように増える痣など見たことが無かった]
[理解の範疇を超えた現象]
[それを見せつけられてしまっては、信じぬと言う訳にも行かなくなる]
……知っているからこその苦悩、か。
いや、話してくれてありがとう。
認識を改めなければ行けないことは、良く解った…。
[謝罪するウェンデルにゆるりと首を横に振る]
[包帯についても、謝ることはないと]
[怪我は大丈夫だったか、と確認を取った]
…人狼に関してはまだ半信半疑だが。
何かが起ころうとしているのは、解った。
そうでなくば、ウェン君のそれも説明がつかない。
[視線を再びウェンデルの左手へと]
教えてくれ、君が知っていることを。
俺が今を理解するために。
[頼み、承諾を得て]
[ウェンデルが知る人狼についてを耳にした]
[『神に与えられた力を持つ者』]
[その話を聞いて浮かんだのはイヴァンの言葉]
[彼がそうだと言うのだろうか、そう考えるもやはり半信半疑で]
[ウェンデルの話を粗方聞き終わると、彼から辞す旨を伝えられ]
長々と引き止めてしまって済まない。
教えてくれて、ありがとう。
[引き止めた謝罪と、話をしてくれたことに対する礼]
[それをウェンデルへと向けて、部屋を辞すのを見送った]
教会で伝わる人狼についての話は御伽噺と然程変わらない、か…。
[椅子に座り、少し冷め始めた料理を突きながら手に入れた情報を整理する]
『神より賜りし力』。
それを持つ者が居ると言う話。
ウェン君もその一人、と言うことなのかな。
聖なる痣は神の刻印とも言われる。
人狼を探し出す力を持つ者が居ると言うのも解った。
その力を使って探し出せと言うことか。
…けど、探し出せたとして、その後どうするんだ?
ただの人が人狼と渡り合えるものなんだろうか。
説得なんてもので解決するんだろうか…。
[ウェンデルとの会話を思い出しながら、その対処法を探す]
[けれど、会話の中に対処法が見つからない]
…どう言うことだ?
滅すべき相手を探す方法はあっても、滅す方法が無いだなんて。
『神』は一体何を考えている…?
[見つからぬ答えに食事の手が止まる]
[『神より賜りし力』も『人狼』も]
[『人』の手によるものだったと言うことは]
[彼はまだ知らない]
……とにかく、御伽噺が事実だとして、ここに人狼が居ると言う証拠はまだない。
杞憂の可能性だって、ある。
[ふるり、首を横に振って一旦思考するのを止めた]
[あまり考えてしまうとまた頭がパンクしそうで]
[折角落ち着いたのにまたそうなるのは嫌だった]
[ゆっくりと食事を終え、直ぐには横にならず窓の外を眺める]
療養中の少女 ベアトリーチェは、講師補佐 アーベル を投票先に選びました。
―回想・二階個室―
[差し出された手も振り切って、ただ部屋へと逃げた。
そう、逃げた。
逃げたら後悔するだけだと、分かっているはずなのに]
…俺は、殺せる。
一度選んでしまったから。
[床に座り込み、投げ出された右手を見る]
どうせ俺は。
必要の無くなった存在――。
[ゆるくまとわりつく狂気。
悲しみがいつしか変化してしまったもの]
―朝―
[全てを封じ込めるようにして、左手を動かす。
右手は添えるだけ。それ以上の力はこれには必要ない]
『 Zum Himmel der Hoffnung, flattern. 』
[蓋の裏に刻まれた言葉。
遠い日、自分に贈られたのと同じ――]
…俺のようにならないで。
[呟き、袋に仕舞うと、窓を開けた。
右手で小箱の中身を出そうとして、止める。
殺気立った自衛団員達が慌しく動いていた]
…どうしたんだ。
[ポケットに箱を仕舞い、窓を閉めた。
何が起きたのかを知るために、階下へと降りてゆく]
[階段を下りたところで、複数の団員が中へと入ってきた。
殺気を直接向けながら、広間へと促される]
ああ。
[追い立てられるように入った広間には消耗しているような同居人の姿。予想が一つ頭を過ぎる。
それは外れなかった。ただ該当者となったのが]
……大じい。
[呟いただけでも睨まれた。ゆるく首を振る。
そして宣告されたのは、それこそ予想通りのもの]
俺達で始末、ね。
確かに横暴なんだけど。
それが出来なければ原因全てを、とかいうんだろ?
[揶揄するような口調となった言葉に、父親となったばかりの団員が激昂して拳を振るってきた。
避ける間もなく、派手な音を立てて床に転がる。
慌てて周囲が止めてくれたため、続けての衝撃は無かったが]
確認しただけじゃないか。
覚悟くらい決めさせてくれてもいいだろ。
[起き上がり、唇の端を拭いながら淡々と答える。
口の中に広がる錆の味。
それ以上は余計なことを言わず、ただ翠を翳らせたまま彼らが出て行くまで*座っていた*]
[自警団員と集会場のメンバーの、殺気立ったやり取りが一段落した頃]
…私たち、殺されちゃうの?
[広間の誰に問うでもなく、ぽつりとこぼした。]
─今朝─
[いつ眠ったのかは分からないが]
[目覚めたのはまだ日が昇り始めた早朝だった]
[昨夜運んでもらった料理の後片付けのために食器を持ち階下に降りて]
[厨房に入り流しに食器を置いたところで異変に気付く]
…騒がしいな。
[複数の男の声]
[集会場の裏手から聞こえる]
[食器を流しに置いたまま、声のする方へと足を向けた]
─集会場・裏手─
[辿り着いた先には複数の自衛団員の姿]
[そして先客の黒い服を着た青年]
[彼らのやり取りから聞こえたのは]
…自衛団長が、死んだ──?
[ライヒアルトが自衛団員により集会場内へ戻されようとする傍をすり抜け]
[団長の遺体がある場所へと歩を進める]
[案の定、他の自衛団員に止められるのであるが]
どうやって死んだのか、それを見たい。
貴様らよりは検死の知識はある。
触りはしない。
警戒するなら見張っていれば良い。
[真紅の瞳で半ば睨みつけるように自衛団員達を見る]
[怯む自衛団員から視線を遺体へと向け]
[その傍にしゃがみ込んだ]
……氷柱……?
けど、事故にしては……。
[それは異様とも言える光景だった]
[自衛団長の身体を貫いていたのは氷の牙]
[しかも複数本、急所を的確に貫いているのである]
[集会場の屋根を見上げれば氷柱の折れた跡]
[偶然落ちてきたようにも見えるが、これは──]
…あり得ない。
ただ氷柱が落ちてきただけで、こうはならない。
何より、深く突き刺さりすぎてる──。
[人の為し得る手段でありながら、人の為し得る手腕ではない]
[人でありながら、人ではない力を持つ者]
[空気の冷えとは別に、背筋がゾッとするのを感じた]
[検死の結果は偽りなく自衛団員へと報告する]
[その報告の最中でも、彼らのゼルギウスを見る目は異様だった]
[疑われているな、そう胸中で呟く]
「報告内容を完全に信じるわけではないが、我々も貴様と同意見だ。
貴様はもう中に入れ。後は我々が行う」
[そう一方的に宣言され、強引に集会場の中へと連れ込まれた]
[抗いはしなかった]
[遺体を見たことで、半信半疑だったものが確信へと変わったのだから──]
─広間─
[集会場へと戻って足を向けたのは広間]
[そこではライヒアルトが既に暖炉に火を入れていて]
[何も言わず少し離れた場所のソファーに身を沈め、額に手をあてた]
[その後、自衛団からの通達が来るまで]
[ソファーで瞳を閉じたまま、静かに思考を*巡らせた*]
[早朝、目が覚め気分がうわだつ、
なんとなしに、自室をでて集会場の中を歩きまわる。
早朝らしからぬ慌ただしさが集会場内に満ちており、自然、腰に手がいき]
ああ、そうか…、
[呟き、どこかものたりなさとおちつかない感じを受け、足が向かった先は物置。
すでに周囲の慌ただしさは気にならなくなっており、中に入る]
これで、いいか。
[木刀を見つけるとそれを手にし、笑みをこぼし]
こんなものでも、ないよりはなぁ。
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