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――広間にて――
[悲しみの果てに歯車が狂った情景を、少女はどこかぼんやりと眺めていた。]
[悲しみに暮れて責め立てる少年に、振り払った青年の力はあまりにも多大すぎたのか――]
[がたり――]
[音を立てて崩れ行く少年は、あまりにも脆くて――]
[悲嘆にくれる蒼髪の青年の声と少年の呟きに、少女はぎゅっと自らの手を握り締めて――]
どうして…?どうして人は――…こんなにも愚かなの…?
[息絶えていく年端の変わらない彼の事を思い――
はたまた自らの体験と重なったのか――]
[こつり――]
[少女は靴音を立てて――]
[さらり――]
[金糸を揺らしながら、神父と共に名も知らない少年へ、祈りを捧げた――]
[悲壮に暮れるその場から少女が立ち去ったのは、神父の導きか、それとも少女自身の体力の限界が近付いていたのか――]
[変わらず大きな手に自らの白い手を重ねて、向かうは少女に割り当てられた部屋へ――]
――広間→客室へ――
[部屋に入るなり、少女の記憶はそこで途切れる。加害の者もいない、言わば信頼できる者だけで囲まれた空間、父のような存在のルーサーの温もりに安堵したのだろうか――]
『おやすみ、ウェンディ。良い夢を――』
[夢現で囁かれた初老の優しい声色に、少女は確かに微笑み、瞳を閉じて眠りに就いた――]
[その声が――]
[彼の最後の言葉になろうとは知る由もなく――]
――客室――
[窓から差し込む朝日に、少女は静かに目を覚ます。
――清々しい朝。置かれた状況を考えれば、朝日と共に新たな情報を与えられるのだが、今はただこうして。無事に朝日を拝めることだけでも、少女にしてみれば喜ばしいことだった――]
おはよう、神父様。今日もいいお天気みたいよ?
[部屋を一歩出れば、また惨劇の舞台へと借り出される身だとは理解っていながらも。
――せめてこの部屋にいるときだけは…、擬似的な平和である日常を味わいたくて。
少女は努めて明るい声で室内へと振り返った。
在るべき筈姿を求めて――]
[しかし、少女の目に映ったのは――]
[机の上に無造作に置かれた――]
[一枚の紙――]
――客室――
[一枚の紙を手に取り、少女は無言でそれを握り締めると。
無造作にドアを開けて部屋を飛び出した。]
どうして…?
どうして片時も離れなかったのに、『今回だけ』一人で出て行ったの?神父様…。
――調べたい物って…夜が明けてから…せめて人狼が動けなくなる夜明け以降では…だめだったの?
[少女は屋敷内の廊下を駆け巡りながら、ルーサーの姿を探し始める。
脳裏に浮かぶのは、走り書きに記されていた言葉――調べ物――と、夜が明けても戻ってこなかったら――の二つの文。
それが何を意味しているのか――
解らない少女では無く――]
――客室→広間→アーヴァインの部屋へ――
[少女は記憶を辿り、神父と共に向かった場所を見て回る。
花を摘み取った温室を覗き、広間へ。
そこに武器庫の鍵が置いてあることを確認すれば、少なくても武器庫には用が無いと思われ――]
調べたいもの…調べたい…。
人狼が活動する時間にでも調べたいものって何…?喰われたあのお姉さんの事?
――きっと違う…。死体損壊について調べたければ、昨日の時点で済ませている筈…。
二人で巡って…まだ行って無い所は何処?――夜中で無ければ駄目な場所とは…?
[――少女は記憶を遡って――]
[一つだけ合致した場所のドアノブに手を掛け――]
[かちゃり――]
[静かに扉を開いた――]
――室内へ――
――アーヴァインの部屋――
[ドアを開けると、まだ温め切れていない風が室内を漂っていた。
開け放たれた窓に、靡くカーテン。
その緩やかな動きに目隠しをされながら、少女は一歩ずつ室内へと歩みを進める。]
[潮の満ち干きに似たカーテンの動きに合わせて、揺らめく赤の色彩――]
[ふわり――]
[目隠しが外れれば――]
[少女の目に映し出されたのは――]
しん…ぷ…さま?
[横たわる、変わり果てたルーサーの姿――]
/中/
現状まとめ。
狼:ハーヴェイ(現在地:自室?)
C狂:ギルバート(現在地:鳶部屋)
霊能:メイ(現在地:音楽室)
守護:ネリー(現在地:不定)
墓下
狼:コーネリアス
占い師:ローズマリー
残りは村人、っと。
ルーサーは役職希望だったのかな?
しかし狼側の人選、ナイスだ。(中の人的に)
-ネリ−私室/朝-
[目がさめると、いつものように彼女の姿はない。
いつもならすぐに身支度を整え、部屋を出るヘンリエッタだが、今日は違った。
寝台の上、膝を抱えたまま動かない。
赤褐色の目は目の前の壁を指すけれど、少女が真に見ているのは記憶の中の光景。
緑の髪の少年の血に汚れた無惨な顔。
赤く染まった床と、赤く染まった青髪の男の腕。
少年を殺したのは、人ならざる力ではない。]
……人だって、人を殺せる。
[ならば、人と獣と何が違うと言うのだろう。]
[少女は口許を緩め、綺麗な笑みを携えながら。
ルーサーの横たわるベッドに近付き、腰を下ろす――]
神父様…、こんな所で寝ていらしたんですか?
もう朝ですよ…?窓も開けっ放しで…。起きないと風邪引いちゃいますよ…?
[気丈にも微笑を絶やさず。
しかし声は次第に震えを増していく――]
…ほら、腕が片方…無いですよ?何処に落として来たんですか?足だって…見当たらないし…。
…もぅ、神父様がこんなに寝相が悪いとは…私…わた…し…思わなかった……。
――っねぇ?神父様、心臓が…腕が…脚が…無いよ?どうして…?ねぇ!どうしてなの!どうして……
[少女の声はやがて悲痛な叫びに変わり――]
[室内を包み込んでいった――]
[まだ狼はいると、緑の髪の少年に祈りを捧げた神父はいった。
けれど、それはもう意味のある言葉には思えなかった。狼が何人いようと、いなくなろうと、人が疑い、殺しあうことができるのなら同じだ。]
何人殺せば、終わるのかしら?
[呟いて、誰もいない部屋を見回す。
先日までは、一人になると不安だった。
けれど、他者といたからといって決して安全ではないことを、今のヘンリエッタは知っている。]
――アーヴァインの部屋――
[どれ位その場所で時を刻んでいたのだろう。
もう流れ出る血液も無い、屍と化したルーサーの傍から片時も離れることなく、少女は静かに歌を口ずさんでいた。]
眠れ良い子よ ひつじも小鳥も眠り入り
庭も野原も沈黙し はち一匹も飛んでいない
銀色に輝く月が 窓からこちらを覗いている
うつろな月明かりの中で ねむりなさい
[いつかルーサーが少女に歌っていた子守唄。その味のある歌声が、今では懐かしく感じる――]
ふふっ…神父様ったら、子守唄を歌ってやるぞ!って意気込んでいた割には…歌詞すらあやふやで…。
結局――私が歌詞を教えてあげたんだっけ…
[遠くを見つめる眼差しから]
[ふわりと笑みが零れる]
ねぇ、神父様――私はこれから…どうすればいい?
――どうすれば…あなたの仇が討てる?
教えて……どうすれば良いの…?
[虚ろ気な瞳の少女は――]
[ふわり――その場から立ち上がると…]
[何かを求め彷徨うように]
[遺体のある部屋を後にした――]
――アーヴァインの部屋→…――
―広間―
[ゆらり、視界が揺れる
静寂
既に広間には誰も居らず、目の前、既に冷たくなった少年]
……俺が……
[ただ、それだけ繰り返す]
『……同じでは、有りませんよ……。』
[深遠に沈む思考に微かに届いたそれは、誰の物かまで思い出せずに]
――廊下――
[少女は行く当てもなく屋敷内を彷徨っていた。
その姿は、何か手掛かりを求めるような物ではなく、ただ現実から逃げるように――]
[ふと――
階段を緩やかに降り、一階の廊下に差し掛かった時、ピアノの音色が少女の耳を擽った。]
[その音色に誘われるように――]
[さらり――]
[少女は色褪せた金糸を揺らして――]
[重々しいドアをそっと開けた――]
――音楽室へ――
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