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ならば、此の世は何より成った塔でしょう。
[ブリジットに目を向けると、彼女に話しかける姉の姿が見えたが、敢えて声をかける事は無く、頷きに了解の意を返して、奥から酒瓶を手にして戻って来る]
ワインは神の血、とも言われるんでしたか。
[卓上にグラスと共に、それを置いた]
[奥から出てきてブリジットに話しかけるノーラの姿を視界の隅に止め。
多少なりとも落ち着いて見える様子に、微かに安堵の息を漏らしつつ]
……はい、そこで理屈をごねない。
ま、今後度が過ぎるようなら、それなりに対処する、って事で。
[アーベルにむけて、こう返しておいた]
[あまりにもさらりと告げられた言葉にこちらが息を飲む]
ああ、ええ。
どちらも、でしょうか。
[しどろもどろな答え方]
私も冷静とは言い難いですが。
自衛団員を始めとして、皆殺気立ってきましたからね。
まぁ、無理もありませんが。
一人で居るのは危険です。
塔は希望の象徴であり絶望の象徴である。
力の証明であり無力の証明である。
崩れないからこそ塔であり、崩れるからこそ塔なのだ。
それ故に!
存在する限りは、祈る事だよ。
[テーブルを拭くノーラを眺めながら、その問いに語るよう返し。空いている方の手を広げ掲げてみせ]
[向けられた怒鳴り声に。
思考停止、数秒。
緑の瞳は、どこかきょとり、として]
あ……ああ。
……すまなかった。
[間を置いて零れたのは、こんな言葉]
そだね。
ギュンターのおじいさんが殺されちゃったんだもんね。
みんなが信頼していた人が……いなくなっちゃったんだ。
みんな……怖いんだよ。人狼が。
……私も、怖いよ。
あの強かったおじいさんでさえやられちゃったんだもん。
……先生も、怖い?
如何こう言う前に、他人に叱られないようにしたら?
[眼差しにも声にも、笑みを含んで言う]
言われても言われなくても解らないんだから、
たっぷり言ってやるといいよ。
[ユーディットの大声に、少し笑みを漏らしつつ。
タバコを吸うハインリヒの様子を伺いながら、話しかける]
うん。おっちゃんの後ろあたりにいたよー。声かけようと思ったら、宿ついちゃったし。
[こっそり尾行してた事は、あいまいに隠して]
ん?俺は大丈夫だよ、おっちゃんも心配してくれてあんがと。
[タバコの煙に軽く顔をしかめるが、何事もなかったように話し続ける]
そーいえばおっちゃん、しばらく顔みなかったけど、どーしてたの?村の入り口の騒ぎとか、気にならなかった?
表裏一体…かしらね。
塔は聳え立つが故に塔であり、いつか崩れる事で塔で居られる。
けれど、崩れてしまえばそれは…塔ではないということかしら。
[少女めいた容姿を残した小説家の、緑色の瞳を覗き込んで。
相変わらず一貫したものを、彼女は持っているような気がした。
それは少し、周りからはズレてはいるけれど。]
すまなかったで済んだらいいんです。
いいんですよ、本当に。それで何事もないならば。
[早口で捲くし立てる。]
でも何かあるかもって思うじゃないですか!
今日何があったか……状況が判ってないわけじゃないでしょう!
私がどれだけ……。
[はぁ、とため息をついて。]
ちっちゃい子供じゃないんです。考えてください。ちゃんと。
[ゆっくりと、それこそ幼い子供に言い聞かせるように言った。]
自衛団の方は……大丈夫だったんですか。
何もされませんでしたか。
[努めて感情を抑えて、冷静に聞こえるように声のトーンを調節して尋ねる。
が、それが逆に怖いことには気付いていない。]
…怖い、ですね。
日常が壊されて非日常を強要されるのは。
[ミリィの左手に手を伸ばす。
傷の治り具合を確かめようとするように]
しかし私は人狼よりも。
人間の方が怖いと言ったら…笑いますか?
[なるべく人通りの多い道を、と思って選んだ道だったが、殆ど人の気配がしない。
あんな事件が起こった後だから、皆家に篭っているんだろうとは今更だった。
窓の隙間から感じる冷たい視線だけは、時折感じる事ができた。
7年前から日常的に晒され感じてきた視線は、今が一番きついように思えた。
変わらないでいてくれたのは極一部。
もしくは、昔の自分を知らない人達。]
小さく、溜息をついて。
いつもより早く、歩き出した。]
[足早に前かがみに、歩いていたらドンと誰かにぶつかった。
軽くよろめいたが、辛うじて倒れずにすんだ。]
ご、ごめんなさ…。
あ、っ、ユリアン。
[申し訳なさそうな顔が一変して、嬉しそうなものへと変わっていったが。
彼から感じる穏やかでない雰囲気に、心配そうに見上げる。]
…どうしたの?何かあった…?
[ユーディットの大声にそちらに顔を向けた後、二人のやり取りに笑みを浮かべ]
まあ、場合によっちゃあんな風に怒鳴られる事もあるかもだしよ?
[冗談めかした後で、ティルの問いに小首をかしげ、数秒後に何か勘付いたらしく]
…どうした探偵ごっこか?
まあ、別にかまわねーけどな。
俺はこの宿に居るとき以外は大抵は家で寝てるぜ。
酒かっくらって帰るから、何かで目が覚めるまではぐっすりって奴だ。
…もっとも証明してくれる奴も居ないけどな。
お袋もどっかに連れていかれちまったしな。
[そう答えてから、少しだけ視線を外しティルを避けるように煙を吐きだした]
[笑う幼馴染姉弟には、一瞬だけジト目を向けたかも]
……状況はわかってるよ、嫌というほどね。
本当にすまない……迂闊だった。
[捲くし立てられる言葉に、静かに返し。
諭すような言葉には、頷いて。
最後の、抑えた問いに思わず右手を後ろに回したのは、多分無意識]
ああ、まあ。
丁寧な扱いは受けられなかったけど、大事はないよ。
[空腹と先程の自警団の言葉に不機嫌さを撒き散らしながら─と言ってもいつものように無表情なのだが─、広場を横切り宿屋へ向かおうとする。
と、横からの衝撃に少したたらを踏んで、ぶつかって来た人物に視線を向ける。
それは半ば睨むようなものになりかけたが、ぶつかって来た人物が誰なのかに気付くと、直ぐに掻き消えた]
…イレーネ。
……いや、さっき自警団の奴に捕まって。
[何か、と聞かれて不機嫌である原因を簡潔に話す。
その中には襲われたギュンターのことや、技師が戻ってこないことも含まれていただろう]
この世は何から成った塔か?
怒りだよ。
怒りは出来るものではなく溢れるものだ。
全てに内在しているものだ。
だからこそ鎮めるためには祈らねばならない。
祈りは流出を止める。
止めなければ……影は満ちる。
[アーベルに向けても返しつつ、持ってこられた酒瓶とグラスを見]
「このパンは私の体であり、このワインは私の血である」
[食せよ! とは宣言するよう高らかに言い]
聖餐。
神を食すのもまた、祈りでありしか。
そうかー。
やっぱり、先生でも怖いのかー。
[なにやら、うんうんと見当違いに頷いている。
後半の言葉には、些か神妙な面持ちで答える]
……笑わない、かな。
先生の言いたいことも、分かるつもりだから。
だけど、先生。
きっと、私の言葉のほうが、笑われる、かも。
[少しだけ、恥ずかしそうに目を伏せる]
人間でも、人狼でもさ。
人を殺す手段はあるんだよ。それは怖い。とても怖い。
―――けど、それでも私はやっぱり、人間も、人狼も、仲良く暮らせないのかなあって思うんだ。
だって、もし、ギュンターのおじいさんの言う私達11人の中に人狼がいるとしたらさ。
それは、今までずっと一緒に仲良く出来ていた人達なんだから。
……私、変かな?
[そこまで言って、ようやくオトフリートが自分の左手に触っているのに気づいた。
嗚呼。痛みは続いているのに。感触は、もう、無い]
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