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―道端―
あちゃー
[遠めに見えた姿が、ミリィだった。
思わず動きを止めて、タオルを抱えてうんうん唸る。
足は包帯を巻いておけば大丈夫だろう、ちょっと打っただけだし。
なんてことを、あの女薬師は許しちゃくれないのだ。]
…他に、何があるの。
[地面に目を落としたまま、低く肯定。
己より高い兄の目から見れば、襟の下、異質ないろが僅かに覗くのは見えただろうか。
遠く、少女の声に呼ばれた気がしたが。
そちらに顔を向けることはできなかった]
―道端―
あーっ、リディねえちゃん!
[ふと前方、見慣れた背中を発見し、声をあげた]
[駆け寄ろうとして一瞬、彼女が足を引きずっていたように見えて]
[近づきながら、まじまじとリディの足を眺めてみた]
[くちゃ、と蜜蝋を噛む音は聞こえたろうか。改めてまっすぐに向けられた薬師の赤い瞳を見つめ、その疑念には答えずに、ユリアンに再び視線を向ける]
なるほどな。
だが、絵師は代々、一人だけだ。
もしも、そんな死に方をした絵師がいれば、記録に残らぬはずがない。
絵師以外の者が、それを為したとしたら…それこそもっと危険な大事件だ。やはり残さぬ理由はないだろう。
俺は、一般の目には触れない記録も見知っているが、そんな記録は見たことがない。
/*
実はベアトリーチェの乱入に期待していた。
しかし混ざりにくいよな、確かに!
…うん、ごめん。
特定の人としか絡めてない気がするよ。
特に兄さん。
まあ、多分今回墓行けないから許しt
あ、ビーチェ
大声ダメ!
[というほうが大声である]
えーと、えーと
大丈夫だよ!
[視線を追って、自分の右の足にいった。
へらりと笑ってみた。]
ビーチェはどっかいってたの?
[答えられなかった疑念の追求より、
音声の方に自然と意識は向いて、目を眇める。
声の主が誰かを確かめているだけなのだが、
傍目には睨みつけているようにしか見えない]
[ミリィの言葉に、こちらが首を傾げる。]
あー?
関係があるかどうかって……
そんなん知らんよ。
[きっぱり。]
ただ、俺は過去に生者を描く事件があった可能性を示唆しただけで、その噺のオチが尻切れトンボである以上、その事が招く結果もわかるわけないんだし。
……ただ。もし。この噺が事実で、その結果を正確に残した文書が密かに在ったとして、それを誰かが読んだとしたら。
[低い肯定に、しばし、言葉を失う。
微かに見える蒼は、自身も身に帯びる故に、それを否定する事はできず]
……なんてこったい。
よりによって……お前かよ。
[恐れながらも待ち望んでいた、後継者。
己が死を看取り、重荷を引き継ぐ者。
ただでさえ、一人残して先に逝く己が定めを憂いていたというのに]
……中々、思うようにはいかない、な。
[そして、顔を動かした薬師の傍に、一歩近づき、その耳にだけ届くように屈み込んで囁く]
・・・・俺がおとぎ話を読んだ時に思ったことを正直に言おう・・・・
「生者の心の力は、死者よりも強いかもしれない」
・・・・同じ事を誰かが思わなかったとは限らない。
[告げれば、薬師が自分をこそ疑うかもしれないと知ったうえで、そう告げた]
―道端―
え、え?大声だめなのだ?
[と聞く声も大きかった、わたたっと口を塞ぐも手遅れか]
…??でも何で、大声だめなのだ?
…だいじょうぶなの? 怪我とかしてない?
あーあたしは、長様のお見舞いにいってきたのだ。
…リディねえちゃんこそ、どっか行ってきたの?
[言外に、そこで怪我をしてきたのじゃあるまいな、という心配も少しだけ含んでいた。リディの活発さは知っているつもりだった]
仮定に仮定を重ねるか。
何の手がかりがないよりはマシだろうが。
私は、それを話してどうするつもりだったか、
その意図のほうが気になるがな。
さっきも言ったが、持って行き方が妙に感じる。
[ユリアンを横目に見やり言ったものだから、
オトフリートが近付くのには微塵も気付けずに]
……っ、なにをするかーっ!!
[先程のユリアンの忠告などさっぱり生かされず。
手の甲がちょうどオトフリートの額辺り目掛けて振るわれた]
[遅れてオトフリートのことばを咀嚼してみれば、
違和感ばかりが募る。
が、それを冷静に考える暇はなく、彼を一瞥して、
大声で名を呼び合っていた少女らの方に向かった]
……覚えてはおく。
[そう、一言だけ言い残して]
/*
なんかこう、リディがものっそ危ない位置にいる気がするので、自分吊りの芽を撒いてみる。占いでもいいんですが。
絵師が初回落ちと分かってるので、一緒に落ちるのも悪くないんさー。
後は若い者にお任せで(酷い
[オトフリートの言葉にくしゃと髪を掻き、]
あー、一般の目に触れるとか触れないとかいう問題じゃないんすけど。
……はぁ、今から言うことはあんま考えたくない話なんすけど。
仮に。仮にですよ。
昔これまでの絵師様の誰かが、誰か……この場合は好いていた人物だったんですかね、を生きたまま絵に描いたとしたら。
そして、それを時のこの都市の首脳陣がもみ消したとしたら。
……御伽噺以上のトンデモ話ですが。
真実は小説よりも奇なりともいいますし、ね。
え。え。
けんかは、いけないわ?
[ミリィが大きな声をあげて
手を振るうのを、びっくりした顔で見る。]
さっき、そういってたわ?
ぬおっ!
[顔を上げたと思った瞬間に飛んで来た裏拳もどきに額をはたかれ、変な声が出た]
・・・・・
[無言で額をさする姿には、ちょっとだけ哀愁が漂っていたかもしれない]
―道端―
そう、ダメなの。
ミリィせんせーに気付かれちゃうでしょ。
[手遅れだ]
長様のお見舞いかー
忙しそうだったからいかなかったけど、どんな感じだったの?
まあ、怪我とかは気のせいだよ、うん。
舐めとけばなおるって!
―道端―
[だいたい、何も聞かれる前に
「大丈夫だよ!」が出てくるあたり怪しい、など思いつつ、
じーっとリディを注視した、思いっきりした。
そして彼女の抱えているタオルにも気づいて]
昔におとぎばなしがあったって。
絵師さまが、自分を描いて、いなくなったとか。
それに近いとか、しこーていしだとか、
おひれがつくだとか…
むずかしいの。
[全く説明になっていない。]
ただ、こころのちから がたりないから、てつだおうって思ってるだけなのに。
[ね?と。
首を傾げ、ミリィの目線を追って
リディを見つけ、わらいかけた。]
ビーチェ、ないしょ!
ね?
[大慌てでタオルを隠すが意味はきっとないだろう。
後ろ手に持ったのなら、後ろにいるミリィが近付いてきたら見えてしまうし。]
ミリィせんせーって意地悪だからすっごい沁みる薬つけるんだもん。
くるくる巻いておけば大丈夫なくらいだからさ!
喧嘩じゃないから平気だ、うん。
[つい手が出てしまったので、ちょっと気まずい。
しかも、その原因は主に自分である。
エルザに言って、半ば逃げるように少女二人のもとへ]
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