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……と。こんな事を言ってましたね。コーネリアスさん。
でも、これはあまりにもあからさまなミスリードだった。
……何故なら。
その物語を裏返して考えてみれば、『何故貴方の部屋にパーツがなかったのか』はっきりするではないですか。
そう、つまり。
…………あなたは、アーヴァインを憎んでいたのです。心の底から。
嫌いな人間の一部を、部屋においておけるはずがない。違いますか?
…ふふ。ふふふふふ。名探偵様はそうおっしゃるのですね。
流石に、勘がよろしい。
そうです。僕が犯人ですよ。僕が、醜く汚らしいあの男をこの手で引き裂いてやったんだ。
ふふ。ははは。あはははは、あははははははははははははっ。
[哄笑]
あの男は僕の大切な姉さんを殺した。それだけですよ、理由など。
姉さんは被害者だ。旅人に襲われさえしなければ、あんな事しなくて済んだ。
旅人の汚らしい肉なんか食べなくて良かった。
それを、あの男……アーヴァインは。泣きながらうろたえる姉さんに銃口を向け、撃ったんだ!!
僕?……止めたよ、必死で止めた。何かの間違いだって。義兄さんは、姉さんを愛しているんでしょう?
なら、姉さんにそんなもの向ける理由なんてないじゃないか、って。
でもあいつは。……『これ以上罪を重ねさせるわけにはいかない』と言って、引き金を引いたんだよっ!!
せっかく僕が姉さんの幸せの為に身を引いたのにあの男は全然理解なんてしてなかった。
ただ、飽きた玩具を放り出すように姉さんを殺した!これが許される事なのか、神父様!
……そうですか。では、そろそろ宜しいでしょうか?
[ルーサーは、『聖書』から銃を取り出し、構える。
鈍い銀色に光るリボルバー。弾は6発。]
えぇ、かまいません。気が済みましたから。
幾度もやったように殺せば良い。…皆の前で。いや、彼女の前で、ね。
……でも、ちょっと迂闊すぎたんじゃないかな。神父様?
もっと、たくさんの人を連れてくるべきだった。
もう少し、戦力になる奴を連れてくるべきだった。そんな小娘がいても足手まといになるだけ。
逆に不利だと思うよ?あははははははははははははっ
姉さんは僕のもの。誰にも渡さない。姉さんを返せ。
ほほえむかおをうつくしいかみをうたうこえをかろやかなあしおとを。
ねえさんにふれていいのはぼくだけ、そうぼくだけだ。
返せかえせカエセッ!!ネエサンをカエセ!!!!!
[その眼は、凪の海に似た青灰色から水平線に沈みゆく赤い月の色へと。]
[そしてその身体も、銀の毛を全身に纏った狼へと変わる。
直後、神父の方へ向かって疾駆。
しかし、神父も怯まず。銃弾を叩き込もうとする。
1発目は避けられ、2発目は壁に穴を空け。
3発目は銀狼の左肩に、4発目は肖像画の眉間に。
瞬間、振り向くコーネリアス。]
……ねえさん? おのれ、よくもねえさんをっ!!
[怒り狂った銀狼はさらに速度を上げて奔る。
一足飛びで神父に掴みかかり、右肩に爪を立てた。]
ふふ。それで勝ったとお思いですか、狼さん。
……甘いですね。
[銀狼の左胸に銃口を押し当て、零距離射撃。
連続で2発。
狼の胸に、赤い薔薇を咲かせた。]
あはは……完敗だよ。……なんて、ね。
……僕が死んでも、悪夢は終わらない。
ふふ、ふふふ、ははははははっ
[ひとしきり哄笑した後、息絶える。]
[少女が飛び起きて][逃れる様に]
[声を掛けようとして][躊躇い]
[顔見知りのようである][トビーに任せ]
[少し離れて様子を見ている。]
―二階・メイの部屋―
[ 部屋に踏み入る間際、動きが止まるも其れも一瞬で、幾度緩やかに瞬くとそうと中に入り、]
何が……、
[然う問い掛けて声は止まり視線が揺らぐ。昨晩の出来事を考えれば解らない筈が無かった。]
[打ち倒した狼をしばらくの間見下ろした後、
広間へ報告に向かった。傍らの少女と共に。]
『悪夢は終わらない』……?
[そういえば。
私は、おかしなことに気が付いた。
……確か、コーネリアスは玄関の物音がした後に玄関へ向かっている。
そこで、使用人が足を抱えているのを私達は見た。
ここまではいい。いくらでも細工は出来るだろう。
……問題は。
この後、コーネリアスは私達と行動を共にしていた。
私だけならまだなんとでもなる。
しかし、あの時はローズマリーやナサニエルもいた。
彼ら二人の行動は、コーネリアスにとって予測可能だったかどうか。
もっと正確に言うならば。あの後ずっと、彼はアーヴァインの部屋にいた。
そんな彼に、パーツをばら撒く時間などあったのか?
本当に、悪夢は終わったのか?
見落としている……何か、何か。]
[部屋に入ってきたハーヴェイに][鋭い一瞥を投げ掛けて]
[またトビーと少女に視線を戻そうとして]
[しかし]
[入り口で立ち竦む]
[ハーヴェイの様子に][傷ましげな目線へと変わる]
[かけられる言葉は柔らかで。
害意がないのは感じていたけれど]
やぁ……やだ、よ。
もう、やだ……これ以上……。
みせないで……きかせないで……。
ボクのしってるひとを、ころさないで……。
[震える声が紡ぐのは、少年への答えではなく、何者かへの嘆願で]
[ ハーヴェイの存在に気付けばトビーは困ったように此方を見上げて来るも、少女の其れを視ても聴いてもいない青年には解りようも無く、唯震える姿を声を感じて知る事しか出来ない。唯出来るのは、寝台の隅へと逃れるメイに近寄り声を掛ける事くらいで。]
メイ? ……確りしろ。
昨晩、ルーサー神父が云っていただろう。
「人狼を見付けた」と。
……若しお前が視たのが其れなら……、
[相変わらず気を遣う事を知らぬ口調で、然し僅か云い淀んだのは確信が無かったが為か。]
終わったんだ。
[ 其れでも強く、云う。]
[ 幼くして仮面を被る事を覚えた口は真に好く回り、虚偽を真実の如くに並べ立てる。否、同族の紡いだ悪夢は彼の神父の手で終わりを告げたのだから嘘ではあるまい。唯、其れを彼が引き継ぐ――或いは新たに起こす――と云う、其れだけの事に過ぎない。]
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