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[眠りにつく事もせず]
[彼には必要ないが故に]
[機械に囲まれた空間に佇んでいた]
[周囲の気温は低い]
[彼が知る事は無いが]
[翼の置かれたエリアへと向かう]
[未完成の翼]
[光か]
[羽根か]
[鋼か]
……、
[何れにせよ核のみの翼は]
[未だ飛ぶ事は叶わず]
[空を知らず、其処に在る]
[護りの陣が何処までかを明確に知るは叶わず、私は一番近い川辺へと歩を進め――小さく跳ねる水音に首を傾げる]
……だれそ…?
[半身を引きつつ問うたは、前日の機械を警戒しての事]
[不意にファクトリーエリアへと足を戻す]
[コードに繋がれた機鋼竜の前で止まった]
――……名前は?
[問い掛け]
[されど]
[無いとの答え]
[創造主より与えられねば][己がものとは認識出来ぬ]
[当の竜が其処までを知っていたかはわからないが]
そう。
無いなら、呼ばない。
[自ら名を与えようとはせず]
[関心無いかの如くに]
[否、伏せられた睛には何かが過ったか――]
< 声が水音にまぎれ、声がしました。猫は川べりに前あしをふたつ、のっけて、身を土の上に。 >
ナターリェ?
< でもやっぱり、ただのなきごえ、なんですけれど >
[川べりに乗せられた二つの前足と、その間を覗く違く鼻先に、私は目を丸くする]
エィリ殿…であったか。
水浴びなりや…?
[行こうか、帰ろうか、惑うも。
此処で踵返さば怪しまれようと、私は緩やかに近づいてゆく]
…気持ちよいですか…?
[そう訊ねつつ川べりへと腰掛けて。
裾を――彼の猫に見えぬように――僅かに引き、両の脚を浸す。
流水が側に在る水は清らかなりて、熱を優しく宥めてくれようか]
ああ、そうだ
[そう呟くと、ぴょんとフロアに降り立ち、機械を弄る
タンッとエンターキーを叩くと、ファクトリー、廃棄エリアにアトランダムにドロイド経由の映像が映し出されるようになるか]
−東部:草原−
[雷鳴轟く山の未だ望める位置]
[晒された土から][豊かな緑へと][移りゆく地面]
[南へと下り草原を進んでいく]
[その傍らには小さな湖]
[細い路はせせらぐ川へと繋がり]
[波の音とは異なる断続的な旋律が連ねられる]
[途中、アーベルが来て機鋼竜に語りかけていたのを、キーボードを叩きながらちらりと見ていたが、声をかけることはせず]
そうだよ
< 猫はそう答えたつもりです。ナターリエが腰掛けたそうなので、ちょっと場所をあけます。
気持ち良いよというように、羽根をぱたぱたさせて、にゃあ。
足をひたす様子に、猫は心配そうに、近付きました。にゃあ。 >
[彼の猫の鳴き声に、私は目元を和ませて指先を伸ばす。
水に濡れた耳を軽く突付くよに触れ、羽根が散らす雫に目を細める]
冷たくて気持ちよいの…。
[心配そうに近づく様子に、心配ないと緩やかに首を振る。
10年前の怪我を――暴かれし真珠の角を削られ、左後脚に骨まで貫く棘の枷を嵌められていた姿を――彼の猫は知っているが故に]
< 細い指が、猫の耳に触れます。もっとというように、頭を寄せて >
…気持ち良いけど。
< 少し、水を見ました。その中の足を、見ました。
にゃあ。
もし人の姿だったら、見せて、って、言えていたでしょうに。 >
< それから、やってくる足音に、そちらに視線をむけました。
アーベルの問いかけ。あら、もうこんなに近い。 >
みずあび?
< にゃー。 >
[歩み寄る足音に気付き、私は警戒の眼差しを向け――かけて、それは戸惑いへと変わる。
未だ恐れは消えぬけれど、逃げ出すほどではなく]
…何をと、や?
私は脚を浸しておりまする…心地よき故に。
そなたこそ…?
[私は僅かに迷いつつも、問われた言葉に答える。
緩やかに首を傾けて問わば、白金の蓬髪が頬と肩を覆おうか]
[白猫の言葉][鳴き声にしか聞こえず]
……心地好い。
[足を浸す様子を見やり]
[少し離れた位置、][しゃがみ込む]
[流れゆく水を視線で追って]
[僅か斜めになった姿勢][長い前髪が揺れる]
< アーベルの様子をけげんそうに、猫は見ていましたけれど。なでられて、きもちよさげに、目をほそめました。
それでも、少しかんがえて、その手の下、ぽちゃんと水にふたたび落ちます。いえ、もぐります。
とうとつな、行動でした。
言えないなら、自分で見に行ってしまえばいいだけです。 >
[少し離れてしゃがむ姿を、横から見つめる。
長い前髪が揺れらば、色の異なる双眸が垣間見えるや否や?]
……どう…なされた?
[水面に触れかけて止まりし様子に、緩やかに瞬く]
[ぱち、]
[何かが弾けたように思って]
[一瞬、手を止めたのだけれど]
ん。何でも無い。
[ぱしゃり、]
[川の中へと沈む右の手]
[抑えられぬ雷撃の気]
[水へと呼ばれ、][内より外へと流れ出る]
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