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おお、上手だね、泥棒猫くん。
[名前がわからないのでそう呼ぶことにした、らしい。]
なくならないでよかったよ、ヨハナおばあちゃん。
エーリ君に自慢してやらなきゃだめなんだから。
崖崩れは見てきたよ。
酷かったよ。
確かに危ないかもしれないね。
ちょっとでも進んだら、すぐおっこちちゃいそう。
リディちゃんが心配だから、いっちゃだめっていうんだと思うよ。お母さんのこと、心配させないであげなきゃね。
おいらは旅をしてるんだ…よ。
崖崩れのことは知らない。
[リディに問われると、箒を止めないままで、答える。問いの返答になってるかどうかは微妙だが]
[腕だとか「重ね」だとか、聞こえた言葉に去る背を見るが、見ただけでは分からない様子]
森に。
[尋ねられてそう返す。
その後でミリィを示し、首を傾げてみせた。
そっちはどうする、との問い]
ふむ、手先は意外と不器用じゃないようだねェ…。
[薄く切ったパンを育ち盛り用に多めに切って炙りつつ、ティルの手際を盗み見る。掃除があらかたすむ頃にはパンに栗のクリームを乗せた大皿と新たに二つ増えたマグカップ]
さァて、お菓子が欲しい泥棒さんや。
食べたいならその分ちゃァんと働くのが対価ってもんさ。
明日、籠一杯の栗を拾ってくるってなら御馳走してあげるんだけどねェ。どうする?
[キッチンにはパンと栗とお茶の香ばしい匂い]
[猫はちゃんと抱えなおされて大人しく…ではなく、右腕から漂う薬の匂いに気を取られ鼻先に皺を寄せた。落されないようにと服に爪を立てているが、肌までは届かないだろう。
ユリアンの手に「ミ゛」と声が出たが、すぐに離れたので耳がぴぴっと跳ねただけですんだ]
[背後から投げかけられた台詞は、聞こえなかったか、その振りか。
鳥やらユリアンやらにまだ気を取られがちな猫の意向は無視して、祭りが終われど帰れぬ人達で普段より賑やかな通りを歩み、到達するのはウェーバー宅。
裏口からではなくて、きちんと表から]
ヨハナ婆ー、いるー?
ふみゃ…?明日?
[ヨハナにかけられた声に首を傾げる。甘い栗の匂いに鼻がひくひく]
栗を拾ってくれば、いい、の?
[目はお皿の上に釘付け。ちなみに、アーベルの呼び方はまるで気にしていないというか、耳に入ってるか疑問]
おっこっちゃいそうなんだ!
[アーベルさんの説明に興奮した声をあげて身を乗り出した。]
いいなぁ。やっぱり見に行かなくっちゃ。
滅多に見れるものじゃないもの。
[諭す言葉を右から左へ受け流し,決意するように頷いた。]
危険だからわくわくするのに、母さんてば分かってないんだから。
おやおや、自慢するほどの事かねェ。
けど褒め言葉と受け取っておくよ。
[なんだかんだで坊は毎年食べてるような…とは思ったが口には出さず、アーベルのリディやティルへの言い草に笑みを零す]
そうだねェ、二人目の怪我人になっちゃ困るから嬢やも好奇心は程ほどにな。
ティルはカッツェなのかい? じゃァ猫でいいさね。
リディちゃん、それはダメだよ。
ダメ。
リディちゃんは、身を乗り出しておっこっちゃいそうなんだよ。
[けっこう酷いことを真顔で言った]
――エーリ君のばーか。
[でも悪態づいた。外から聞こえた声に。]
[ちょうど掃除が終わり、キッチンから紅茶の良い匂いが漂って来た頃、玄関口から来訪者の声がした。]
む。誰かお茶の匂いを嗅ぎ付けて来たな……。
開けてきます?
[お茶を準備する老女にそう声をかけて、勝手知ったる人の家をずんずん進む。]
森に、ですかぁ。
今は、お散歩にいい季節ですからねぇ……。
[端的な答えに、妙にしみじみとした口調でこう言って。
問いの仕種に、こちらも軽く、首を傾げる]
んん、どうしましょうか。
お邪魔でなければ、お付き合いしてもいいかしら。
さっき言った瓶の意匠にお願いしたい、綺麗な蔦が森にあったのですよ。
[鍵は開いてるから勝手に入ってくるだろうと表は放置してティルの様子に大きく頷く]
そうさ、ご馳走されたら、材料を貰わないとねェ。
[アーベルの台詞をもじって言うと、どうだいと重ねて尋ねる]
[扉を開けようにも、両の手とも塞がっているわけで。
とりあえずは荷を降ろそうかとしたところで、人の近付いて来る気配がした。老婆にしては、些か勢いが良いが]
[エーリッヒの腕に比較的大人しく抱かれていた猫は、ねぐらに増えた気配と匂いに耳をぴんと立てて前足に力を入れた。
まだティルの匂いには気付いていないが、隙あらば逃げ出して家の中に飛び込もうと首を下げる]
ああ、えっと。
[村には長く住んではいるが、普段は森に引っ込んでいるために、新しい人間を覚えるまでには時間がかかる。出かけた名前は喉で引っかかった]
……いや、お茶菓子貰いに来たわけじゃなくて、お届け物。
[視線で腕の中の猫を指し示す。
力を緩めた腕からは、猫が望めばすぐに下りられそうだった]
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俺が落ちたんではなくて、土砂が落ちて来たイメージだったのだが、まあ、いっか。詳細書いていないし。
というか、落ちたら裂傷だけで済まない、済まない。
[傾けていた首を戻して、今度は縦に振る。
構わないらしい。
蔦の話にもう一度、考えるように頷き。
相手の動きを待つように、ゆっくりと目的に向けて歩き出した]
―通り→ ―
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