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残す必要なんて。
[無い。][自分が残す必要は。][例え薬師の業が失われようとも。]
…でも因子はどこにでもあるんだっけ。
[声を捉えて。
けれど、姿は赤に阻まれ。]
…貴方が怖かった。
知って、探って、成り代わろうとしているのかと思って。
…俺以外に名乗り出るのは、全て敵だと。
[感情の篭らない声。
外の音も聞こえないほど集中していたはずなのに。
それだけは何故か届いて]
…かく、ご…?
[反応する。とてもゆっくりと]
--誰かさんたちの会話--
『姐さん怖いとか失礼なにーさんだネェ。』
「女が怖い、か。脆い。」
『まーまーまーまー。典型的尻にしかれるタイプってのは仕方ないデスヨ。』
[イレーネには決して伝えない]
[それが薬を飲む覚悟だったことなど]
そう。
[低い声はどこか哀しげにも]
どうにも出来ないとわかって、覚悟したと。
彼は言っていました。
……っ、
そんなの、
言われなくたって、
[違う、本当は、死んでもいいと思っていた]
……生きるよ!
だから、
殺さないで、
殺させないで、
[視界が歪みかけるのを、堪えた]
[クレメンスに言われた言葉を口に出さずに反芻して]
そうですか。
[とだけ返した]
[まだ、他には知らせなくないのだろうと気付いたから]
[動いた蒼狼
相手の始動をある程度誘導して、動きを見ていれば回避もできる
だがそれだけでは駄目だ。攻撃する余裕を作らねばと。
跳躍する蒼狼を横飛びに避け、その首を狙うように…そこで一瞬顔を顰めた。
この動きは、アーベルをつれて逃げたときに、襲ってきた狼に取った行動と同じで…
ただ行動はとめれずに剣を振るう]
覚悟……。
終わらせる覚悟をしたというのですね、アーベルさんは。
[イレーネが思う覚悟と、自分が知った覚悟とは違う]
[だけど、彼が覚悟を決めた事は間違いはなかったからそう口にした]
ああ。あたしも悪かったのよね。
疑われても当然の行動だったわ。失敬失敬。
[金色の少年の言葉を聴けば、軽く笑って手を振った]
私の能力は、「占い師」に劣る、つまんないものだったから。
業の大きいものだったから。
君が「占い師」なら、まる投げしちゃおっかなって思ったの。
バチがあたったのよ。
[「占い師」って言って、通じるかしら?と首をかしげて]
[投げられる声は聞こえていた。
熱に浮かされた状態でも、はっきりと。
祈るような声も。
返せるならば、言葉を返したい、と思ったけれど。
今、出せるのは、蒼狼としてのコエだけ]
どうにも、できな、い…?
[朱花が熱を放つ。その言葉を肯定するように]
諦めるなって。
いった、のに。
[心が冷えてゆく。
支えにしていたのは、ただその言葉だった]
なの、に……。
[抗していられたのは、その気力。
それが崩されれば]
そう、ですか……。
[そっと、目を閉じる]
それだけ大事だということでしょうね。
イレーネさんやユリアンさんが。
[それは事実だろう、だから嘘はついていないと心で言い訳をして]
[イレーネに目をむけ、眉を顰めた]
[アーベルに対して厄介なことをと思ったかもしれないが、声にも態度にも出さず]
イレーネ君。
君は、生を諦めるつもりですか?
アーベル君は覚悟を決めたけれど、
…それでも、生きられる道を今も探しているんですよ?
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