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【何ゆえ、生者は闇を求めるか?
何ゆえ、死者は光を求めるか?
答えなど、分かりきったこと。
運命。宿命。
そのようなものは存在しない。
ただそれこそが現実であるという事実のみ
事実が分かれば、結果など、容易に想像出来る。
いや。結果があるからこそ、事実になる。
それだけのこと】
ぅ、あっく!!
[遠慮なく思い切り、振り払われ丘に叩きつけられた。
聞こえる咆哮、血の匂い。苦悶の声、そしてティルの声。
それが遠くに聞こえるほどに、表の意識が一瞬霧散した。]
…、ぅ。
ぅ…ん…、―――!!!
[ほんの数秒、消えた意識を取り戻すと、草だらけの体を起こし、倒れた主の傍らへと膝をついた。]
ユリアン、ユリアン!
ぁ、あ、ユリアンっ!!!
[銀の短剣からは血が溢れ出て。この毒を抜かなければいけないのだが、今抜けば確実に今以上の血は溢れるだろう事は理解できて。ただ今は、傷口をストールで押さえるだけ。]
ユリアン、しっかり、しっかりして―!
[呻く主の名を何度も呼びかける。]
――馬鹿、
此方に来たら、笑ってやる。
[己も、あんな風だったのか。
そう考えたら、笑いが零れた。
楽しいわけでは、なかったけれど]
【そう。事実。事実なのだ。
世界を変えようなどとは、おこがましい話でしかない。
されど、少女は夢見た。
されど、少年は希望した。
世界は変わらない。誰にも変えられない。
もし変わるとするならば、
―――ここが、幻や夢の舞台であったということか】
笑えないわよ、あれは――
アーベル!
[掴んだ手に力を込める。]
行かなきゃ。もう、黙って見てられない。
判ってても……無理!
[アーベルの手は握ったまま、駆け出す。]
[響く、声。
それは、いつかも聞いたもの。
その時は、自身のした事への覚悟もなく、押し潰された。
だが、今は。
心揺らされる事もなく、静かにそれを見て、聞いていた]
……ち。
さすがに……効いた……。
[勿論、動けぬ理由には、肩と、腹の傷もあるのだけれど]
[白銀の姿はいつしか元の人型へと戻っていき。
瞳を彩っていた紅い光も鳶色へと戻る]
ごほっ…!
っは……、イ、レー……ネ……。
[どうにか発した言葉は、己を上から覗き込み、傷口を押さえる愛しき者の名。
大量の失血と、銀の毒が身体に回ることにより、徐々に視界が霞んでいく。
滲むイレーネの姿。
やはり死ぬのか、と心の中で呟いた。
僅かに残る力を振り絞り、震える右手を持ち上げて、目の前の少女の頬に手を伸ばす]
工房徒弟 ユリアンが「時間を進める」を選択しました。
行って――何を、しようってのさ。
[ユーディットに手を引かれて、丘を往く。
胸中に抱いた感情が何か、己でも解らぬ侭]
[やっと追いついたけれど、その場は入り込める雰囲気ではなくて。
傷ついたエーリッヒの姿を見て、青ざめる]
エーリッヒ兄ちゃん!大丈夫!
[エーリッヒに向かって駆け寄った]
[ふと、空いていた手が上がった。
僅かに唇に触れる。それが最後まで残っていた彼の心]
[同胞の血が流され、世界が再び動き出すのを知る]
[ここが幻でも夢でも。彼にとっては現実であったのだから。
だから彼が伝えたかったのは]
ユリアン…
いや、いやだ…
せっかく、やっと、会えたのに、
待ってたのに、ずっと、待ってたのに、ロスト様と、エウリノと、
私の、私の愛するご主人様、どうか、どうか、死なないで―――
[涙は溢れ止まらない。
頬に赤いぬめりとした感触を感じ、細い指でそれを包んだ。]
わかんない!
わかんないけど、放っておけないじゃない!
[人の身ならざる足で駆ければ、その場所に辿り着いたのはすぐで]
エーリッヒ様。
[膝をつくエーリッヒの傍らに跪いて、その傷に手を当てようとするけれど、それは叶わない。]
Tut mir leid. ――
―― Auf Wiedersehen.
[それは同胞であった者達へ向けて]
[それは隣人であった者達へ向けて]
[呼びかける、声。
は、と一つ息を吐いてから、そちらを見る]
ティル……?
なんだよ、ついて、来たのか……?
危ないから、ついて来させないように……黙って出てきたのに……。
[まったく、と。
浮かべる笑みは、いつもと変わらず]
大丈夫……って、言っても、説得力は、ない、が。
どうにか、生きちゃ、いる……。
[唇の動きが止まると、辛うじて持ち上げていた右手から力が抜け、するりと地面へ落ちた。
イレーネを映していた鳶色の瞳は、もう何も*映していない*]
[此れは、望んでいたことだったか。
見たいと、願ったものだったか。
一つの結末。
近づく終焉。
――解らない。答えも、存在しない]
[駆け寄ってきたティルに向けられたエーリッヒの言葉に、
ほっと息をついて]
貴方はいつまで私に心配かけさせる気なんですか!
[届かないだろう声をいつものようにエーリッヒにぶつけ]
もう、安静にしててください。本当に……。
[――もうひとつ、倒れている影にも目を遣る。
手が落ちるのを見届ければ、顔を伏せた。]
【……なるほど。
この舞台だから、笑えるのか。
望みは叶うというのか。
一瞬であり、永遠である終わりの後の舞台で。
時は迫る。
世界が、変わる瞬間が。
全てが、集う宴が】
[「彼女」が満足げに頷いた。
姿を認識できるはずのない観測者が]
/*
多分やりきった!(多分かい)
しかし進行に関してはエピでジャンピング土下座だな。
うーん、狼陣営勝利目指すの難しい。
アーベル。
[傍らの存在に声をかけ、見上げる。]
これで、終わるんだよね……?
もう、誰も死ななくて済むんだよね……?
[聞こえない声は確かに聞こえて。
支えていた手が、ずるりと地面に落ちていく。
もう呼びかけても何の反応もなく。
いくら探しても、あの赤い世界に愛した人の欠片もない。]
あ、あ…
ユリアン、ユリアン、私…
[光の消えた瞳を覗き込んでも、優しい言葉は返ってこない。]
ああああああああああああああああああああ!!!!!!!
[酷い絶叫が唇から漏れた後、少女はかくりと肩を落とし、それっきり、*動かない。*]
……ざわめき。
ざわめき、が……
塔が崩れしは怒りによって。
なれば怒りとは何か。
黒き影は怒りであり、怒りとは黒き影でありしか。
ただ、……
[静寂が広がる宿の中、ふと、水滴のように落ちる呟き。視線を落としていたノートの空の頁に指先で触れ、なぞる。ペンを取り出してはおもむろに線を引き始め――少しずつ、細い、だが強い筆跡で文字を書き込んでいく]
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