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そうですか。玄関が……。
[常葉緑の軌跡を追って、隣に広がる空間へと瞳が動く。
小さくため息をついて、首を左右に振った。
本当に軽い動きだったのに、首や肩が凝り固まったような音を立てる]
Ich glaube, der Stern,
von welchem ich Glanz empfange,
ist seit Jahrtausenden tot.
(わたしがいま、その輝きを
受けているあの星は、
何千年の昔から死んでいると私は思う)
[そうとしか考えられない想像。無意識に、詩句が漏れた]
そのご老人とも、後でご挨拶が出来ればいいのですが。
ああ、これは失敬しました。
私は、オトフリート・フェヒナーと申します。
よろしく、ミズ――?
[朝かどうか確認する術はないけれど、目が覚めた者同士の挨拶が少し離れた場所で聞こえてきている。
深緑の瞳は黒に近く、細めれば尚更。]
…
[足を地面に伸ばすが触れた途端に痛みが走った気がした。
だがそれと同時に足元の感覚がみるみるうちに麻痺していくかのようにも感じられた。そう、まるで石になるかのように。]
――…そう。
[現状を確認するように言葉を漏らしその場に静かに立ち上がった。元から細身な体だったが、長い眠りのせいか以前よりも痩せた気がした。]
>>294
[現状を確認するような言葉、近くに見える青い青年>>293が言葉を返すのなら彼女は何も語らないままで。]
/*
せんせい。
『冷凍睡眠施設 洗面所』ってどこですか。
…うーん。
洗面台は別個の部屋だったのん?
開始時からそうだけど、
たまに位置関係把握しづらいときあるんだ;
Klage…(嘆き) ……リルケね。
[青年が諳んじた詩の名を呟く。]
――… 外に出なければ分からなくてよ。
こうなっているのは、此処だけかもしれない。
[外へ。
常葉の少女は少しばかり強い調子で
自分自身にも言聞かせるように、謂った・]
…そうね。聞かなければならないことは、沢山。
私はブリジット=R=エグランティエ。
ええ。好きな詩人です。
[彼女の答えに、頷いて正解だと返す]
外――
「まだほんとうに存在する星」はあると信じたいですね。
特効薬が完成した後、予算か何かの都合でここが忘れ去られているだけ、などであれば良いのですけれど。冷凍睡眠装置の様子から、最低限の電気は生きているようですし。
あらためて、よろしくお願いします。
エグランティエさん。
玄関が閉ざされているなら、
何にせよわれわれはしばらくお仲間ですから。
[彼女に、右手を差し出した。
側にいるであろう男性二人とも、
望まれるなら自己紹介と握手を交わそうとしてから]
玄関がだめでしたら、どこかに窓でもあればよいのですが。
換気もしてみたいですし、きっと外も見えますでしょう。
そう。
[そのはずだった]
[語らぬ女から視線を戻し]
エラー、みたいだ。
[フェイタル・エラー]
[望んだ未来が来ない現在]
[伝えるように視線を床や別の装置へ]
[冷たい棺、砕けた悲鳴]
───今の、ところは。
[患者しか見ていない]
そして私も先刻目覚めたばかりなの。
[状況説明を求める言葉に、静かに言葉を返していく。]
…
[足取りは重いまま、女と男の傍ではなく赤い星が煌くカプセルの方へと近付いていった。]
[水音を紡ぎ続ける洗面台の傍
微かな身動ぎ
膝の間に埋めていた顔がゆっくりと上がる]
…ん
[どうやら少しだけ眠ってしまっていたらしい
周囲から聞こえる声に視線を向ける]
/*
Σカルメン、いたのか。
いいや、右側にいたことにしてしまえ。
都合が悪くなるとこの設定使ってる気がするな。
いい加減しつこい気がするけれど、まあいいか。
そして、一回村を出て狂人希望に代えようかなあ。
いろいろシミュしてみた結果、割と生き残る意思が薄い気がした。
エラー?
[小首を傾げて青年の視線を追う。
毀れている砂、明滅する赤、開かない扉]
私と同じなんですね。
[女性の言葉に小さく頷いて、ようやくカプセルから降りようとし始めた。少しギクシャクとしながら、ずっと守ってくれていた殻の中から外へと足を下ろす]
まだ眠ったままの人も多い?
[他のカプセルに向かうのを見ながら思った事をそのまま口にした]
[女はそこで選ばれた星以外の運命を見た。
遅かれ早かれ訪れる未来を予兆するかのような赤い星の点滅。
閉ざされた小さな戸の向こう側には動かぬ人の石像が横たわっていた。]
…っ
[悲鳴を上げることはなかったが、小さく息を飲んだ気配は伝わったかもしれない。次の瞬間、焦ったように誰かを探すように周囲へと視線を配ったがすぐに表情は元のものへと戻っていった。]
教員 オトフリートが村を出て行きました。
見てみればいい。
[答えはそこにある]
[冷たい棺に横たわる石の人]
[人であったはずのもの]
[自分たちと同じみずいろを着た]
それが、答えだろう。
[ちかちかと明減する赤]
[届かなかった悲鳴のようだ]
16人目、教員 オトフリート がやってきました。
教員 オトフリートは、狂人 を希望しました(他の人には見えません)。
[今まで気がつかなかった、洗面台の死角から、
小さな女性の声が聞こえた]
………?
[半歩足をずらして、そちらを見やる]
ご気分が優れないのでしょうか。
大丈夫ですか、ミズ。
[座り込んでいる様子、体調が悪くなったのかと
慌てて彼女の前にひざを付き、そう声をかけた。
ちらりと彼女の首輪に視線を走らせる。
……一度では見切れず、何度か見返す羽目になったけれど]
/*
うお。嘆きって悲しい詩のイメージだったのか。
切ない中に希望が燦然と輝く詩のイメージだった。
面白いなこれは。
かといって、リルケの詩のストックはほとんどないんだが。
まあ、そのうち言語野があっちいくからいいんだけど。
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