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―東殿/氷破の部屋―
[それは誰かの、または何かの瞬きの瞬間だった。夢とも言えぬ一瞬の意識の空白を渡り、青年は氷破の部屋へと現れる]
――…動くな!
[窓を背に、既に赤紫の瞳が室内の三竜を見つめる]
それを聞くにゃ、封印をどうにかして、出てきてもらうっきゃねーよなぁ。
[小声の呟きに、さらりと返す。
わからぬならば、わかるための手段を探すのみ、と思うのは前を目指す疾風の気質故]
……爺ちゃんは、無理しすぎなんだよ。
抱え込んで、無茶して……。
もうちっと、やりようってモンがあるだろーに!
[具体的にどうすれば、と問われたら答えられるかは怪しいが。
そして、精神の竜、という言葉がエルザに何を思わせたかは、知る由もなく]
不安定は、確かになー。
バランス色々、めっちゃくちゃだし。
生命竜 クレメンスは、翠樹竜 ベアトリーチェ を投票先に選びました。
まだ?
でも、だいじょうぶじゃ、なくなっちゃう?
…だめだよ?
[心配げな様子を隠す事無く、
眼の高さが近しくなった機竜殿へと真直ぐに視線を向ける。]
――ユル、こわれちゃったの?
…どうして?
[告げられた言葉に、幼子の眼が僅か驚愕に見開いた。
短期間と謂えど幼子にとって、あの小さな機械竜が友で在ったのは事実。
元々変化に乏しい筈の仔の表情は、機竜殿の言葉によって間違いなく消沈していた。]
…また、やすんだら、げんきになる?
いや、霜柱は勘弁してくれぃ。
老体に冷えは聊か辛い。
[ブリジットの言葉にゆると横に首を振る。僅か苦笑が漏れた。続くアーベルの力についてを聞くと、難しい表情となる]
”こころ”を見るとな?
…流石は精神の竜と言うことかの。
かなり厄介じゃのぅ、それは…。
赤紫の瞳を見ねば良いのじゃろうが…。
[相手が見せようとしてくるのならば、難しい話であろう]
……泣きゃいいのに。
泣けるんなら。
吐き出さなけりゃ、いつか、崩れちまう。
< 乱雑な口調とは裏腹に、仔を愛しむ母に似た、
しかし寂しさを帯びた様子で微笑を浮かべる。
紡がれる言葉に眼差しは揺らいだ >
影は、影。
丘の螢火より生まれ、旧き記憶の覆いとなるだけのもの。
それに己はないのだから二つの願いは同時に叶う筈もない。
己が在ると識らなければ、願わずにいられたんだろうに。
< 其処で一度、言葉を切る >
―東殿・氷破の部屋―
――!
[その刹那。咄嗟に眼前へ、氷の壁のようなものを作り上げる。
封印のレンズと同じ理論で作り上げるが、いかんせん急ごしらえなそれは。
完全に赤紫の瞳を遮断することは出来ないだろう。
三竜を覆うように氷壁を作り上げるも、あとはそれぞれの、それこそ"精神"次第か]
[突如として響く声。反射的にそちらを見るは幸か不幸か]
アーベル…!
[現れた人物を察し、次いで思い出す今までの会話。極力視線を合わせぬようにずらし相対せんとす]
「こころ」をねぇ……。
[ブリジットの説明に、ナターリエが思いっきり不快な表情をあらわにした]
まるで、服を着てるものの下の裸を覗くようなもんじゃない。
盗撮とかその手の類ねぃ。
いやはや。
変態趣味では、一歩負けましたねぃ、大地の。
[おどけた顔で、思いっきりバカなことをザムエルに言った]
―――ま。それはともかく。
[そして、すぐに真剣な表情に戻ると]
ブリジット。
見つめられたら、なのねぃ?
こちらが、相手の目を覗き込む必要性すら、無いと。
うん、ごめんね。ユルは俺を守ろうとして壊れちゃったんだ。
[詳しい話はしない。けれど嘘もつかない。沈んでしまった幼子の頭を生身の右手で撫でる]
治してやれたらいいんだけど…駄目かもしれない。
[ぼろり、と腐食したメタルの欠片が床に落ちた]
生命竜 クレメンスは、影輝竜 ノーラ を投票先に選びました。
ま、触媒使えればなんとかなるさね。
アレは炎を制御するためのもんだし。
[たいした事ないさと薄く笑み、エルザの顔の刻印に気づく。]
緩めた、か。
…あのときみたいに、流されんなよ?
[決意の表れにも思えて、これからすることを止める言葉はいえなかった。]
中:
違ぇ!ここは俺視点じゃノーラ投票で無いとまずいのか!(がくがく
こ、これでいいんだよね…?
でもこれ、ベアトリーチェにはえらい可哀相なことをををを。
ああ、じったんいるからまだマシか…。
そうですね。
もっとやりようがあったのやも…。
[或いは狭い中でも必死に逃げ続けるとか。
だがそれは考えてももう詮無いことでしかない。
疾風の前向きな意識がなければ囚われたかもしれないが]
剣も本来の在り方以外を強制されているから、かと推測はしています。本来ならば、我君とて表に出されることは無い物ですし。
もしそれが聖魔剣や神斬剣にも当てはまるならばですけれど、契約者はもう一つの鞘みたいなものですから…。
[はたして、先ほどあげた疑問は、答えを聞くよりも早く、結果を知ることが出来た]
[―――ぴき]
[それは、アーベルの力のせいなのか、それとも、ブリジットの力の余波か。
ナターリエの体が、凍らされたように重くなる]
……まずったかな。
今は、ただ。知りたい。
影で在りたいと思ったのは、属に縛られていたからか。
己で在りたいと思ったのは、彼女を写していたからか。
己が分からない。
< 近付く生命の竜へ、鎖を巻いた手を差し伸べる。
奪うならあっさりと奪えよう >
……いっそ、剣など壊れてしまえばいい。
そうすれば、きっと、理も乱れ、この影から解放されるのだから。
< 何時しか、口調は写しとは異なるものになる。
歪な願いを受けた聖魔の石が、軋むような高い音を鳴らした。
それはまた、神斬の石にも届こうか >
そのためにも、早く外に出れるようになりたいですね。
[笑みで返されてしまえばそれ以上は追求もできず]
…はい、今度こそは。
[だから自分も淡い微笑を浮かべてみせた。
左手の朱印も白く変じている。その手を胸に当てて]
……エーリが、あやまることじゃ、ないよ?
ユル、えらかったんだね。
エーリが、だいじょうぶなら、ユルもよかったんだよ。
[頭へと触れる手を拒む事無く、仔の視線は真直ぐに機竜殿へと注がれたまま
告げられた言葉にはふると一度小さく首を振った。
友のした事が間違っている等と思わぬ、況してや機械竜にとって大事な者の危機で在ったのだろう事を思えば尚更。]
…だめ、なの?
[落ちた欠片に気を取られたか、視線が床へと下る。
何事かと機竜殿を再度見上げ――仔は何を思ったか、欠片を拾おうとしゃがみ込んだ。]
―東殿/氷破の部屋―
[封印を司り、青年の目を押さえるレンズを作っていた氷破の部屋。彼女が目覚めていたならば一筋縄ではいかないのはわかっている。
だからこそ、力そのものを押さえる腕輪と、一定の力の操作をする指輪を外してきたのだから]
――…っ!
[氷壁へと隠していた鱗を投げつける。青い光は同質の氷となり、高く澄んだ音を立ててぶつかり合った]
…んで…剣は…結界の中じゃ?
[それもまた、共鳴と呼べるのか?剣の力を負の方向に受ける身体が、床に崩れる]
ベアトリーチェ…離れ、て…
[触れること能わぬ力ある剣の呪いに等しい波動、傍にあるだけでも幼い竜を害するかもしれない、と]
…っ!
[機竜殿の声にか、びくりと肩が跳ねる。
苦痛げな声に対する困惑と、心配が入り混じる眼で幼子は相手を見やった。]
――エーリ、だいじょうぶ?
だれか、よんでくる?
[この兄さんほんとにだいじょぶなんだろか、という疑問は取りあえず抱えたまま]
やり方なんて、それぞれだけどさ。
この方法だけが絶対、なんて、よっぽどじゃなきゃねぇんだよ。
可能性なんて、作るも潰すも、自分次第なんだし。
[エルザに返す言葉は、水鏡に映る精神の竜へも向けられて]
……気にいらねぇヤツには使われたくない、とか、そんな感じ?
だとしたら……。
[今の状況は、かなりヤバイ、というのは想像に難くないわけで]
……ちっ……。
[手を出せない苛立ちから、舌打ち一つ]
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