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5人目、物識り ヨハナ がやってきました。
物識り ヨハナは、守護者 を希望しました(他の人には見えません)。
[荒れた一夜明けての第一声は]
おやまァ、コイツは栗拾い日和だねェ。
虫に食われる前に行かなきゃ、ゴギー婆さんに怒られるわなァ。
ほれ、ツィムト。お前も顔洗ってないで付いといで。
[目付きも態度も可愛くない薄茶猫相手の栗算段]
まあ、仕方ない。
祭り明けじゃないと採れないのもあるし。
[――仕方ない。
誰に訊かれたわけでもないのに言い訳を口にして、一人頷いた。
傷を負った手に、尚も確りと握った袋から、じゃらと硬い物のぶつかり合う音。中には石が詰まっている。怪我の代償の成果物。見合うと見るかは、人次第だ]
……ふぅ。
だいぶ、騒がしくなってきましたねぇ。
[崖崩れの報が広まったためか、村は祭のそれとは違う騒々しさに包まれて]
撤去作業とか、けが人が増えないと良いのですけど……。
と、いうか、ほんとにけが人いないのでしょうか?
自衛団さんは、見ていないといってましたけど……。
[家に帰るか、診療所に行くか。
しかし診療所に行けば当然ながら怪我の原因を訊かれる事になる。それは避けたかった。 のだが]
……、荷物忘れた。
[石の袋だけ持って道具を入れたリュックは置き去りだった。
となると、間違いなく騒ぎの源にあるわけで]
…諦めようかな。
[いかんせん、自衛団長の老爺とは相性が悪かった。持ち主が誰かなど容易に知れるだろうから、無駄な抵抗に近いが、身近な問題からは目を逸らしたい。
現実でも騒ぎの方向からは視線を外して、深い緑へと向けた。
まだ目覚め切らぬ森の中に、気配がある]
しかし崖崩れとは団長さんも大変だァね。
か弱い年寄りにゃ手伝えもせんし、後で差し入れでもするかなァ。
[前足で栗の毬を突付いている猫に話しかけると、やる気の無い鳴き声が返った。それを機に腰を伸ばす]
よいしょ、と。
もうこれ以上はあたしゃ無理だよ。
一度帰るかねェ。
[とことこと大通りを歩いていると、後ろから自衛団員が追いかけてきた。
何事か、と振り返ると、崖崩れの現場の近くに置き去りの荷物があったとか。
けが人がいるかも知れないから、治療の準備はしておいてくれ、と言われ]
……あららぁ。
わかりました、それじゃあ、急いで診療所に戻って支度をしますねぇ。
[一応、真剣なのだけど、緊張感がないのは口調のせい……だと思われる]
……それにしても。
[自衛団員と別れ、診療所へと向かいながら小さく呟く]
……やっぱり、かしら、ねぇ。
ねぇ、リーリエ?
[問いに、白い鳥はくるる、と鳴いた。
同意してるのかも知れない。
診療所に帰り着いたなら、天気が荒れる前に往診に行ったきり、戻れそうにない師匠に代わり。
治療の準備に*取り掛かる*]
せめて「さん」は付けろと言ってるじゃろに。
[ぴしりと言い置いて、音の鳴る方へ鋭く目を向ける]
取れたかどうか直に見るがいいさねェ。
あたしゃアンタが隠してる物の方が気にかかるよ。
どうせ怒られるような事しでかしたんだろゥが。
そっちのほうが言い慣れたんだから、仕方ない。
[鋭い言動に、浮かべた笑みはあっさり消えた。
隠す仕草は無意味と知れて、石を左手に受け渡すと、観念して右腕を差し出す。足は逆に、一歩引きかけたが。
落ちて来た石のぶつかった腕には、赤い筋が走っていた。
規模を考えれば、それだけで済んだのも幸運だ]
大した事はないって、腕だけだしさ。
悪運だけはいいらしくって。
仕方ないで何でも済ますんじゃないよ、坊。
まァそんな事より、そっちの方が大事さね。
[逃げようとする仕草に火箸で地を叩き、ずかずかと歩み寄る]
確かに悪運だけはあるさねェ。あたしに見付かるんだからなァ。
……ふゥん。
大した事無いなら、栗が焼きあがる前に診療所に行きな。
団長さんの耳に入る前に娘ッ子に手当てしてもらえばいいさね。
[栗が焼き上がれば告げ口するぞと脅して、左手の袋を見る]
で、それはなんだい?
……ヨハナ婆は当分お迎えが来なそうだ。
むしろ、来ても追い返すな。
[自衛団長から逃れて元機織に見つかったのは悪運が良いのか悪いのか、答えは青年の心の中。微妙な表情が物語ってはいたけれど。
降参、とばかりに肩を竦めた]
ああ、これ? 石だよ、石。
この時期には、魔力が篭ったものが採れるんだ。
細工師も欲しがるから、なるべく早くに採ろうと思って――
わっ、
[鳴き声に退いた拍子、締まりきっていなかった袋の口から、薄い青を帯びた石が一つ零れ落ちる]
……なんだよ、ツィムト。
早く行けってこと?
なァに物騒な事言ってんだい。
あたしゃまだまだこの世に未練があるさねェ。
[団長で脅せば言う事を聞くと知ってる婆は、坊の生意気な言葉も鼻で笑って石に興味を向ける]
あァん、もうそんな時期だったかねェ。
この季節は栗に早生りの林檎と忙しいからさね。
おや、お手柄じゃないかツィムト。
[薄い青を帯びた石にじゃれる猫に声を掛けて、石を拾おうと屈む]
そりゃ、失礼。
ヨハナ婆のがなり声が聞けなくなったら物足りないだろうから、うれしいことだね。
[憎まれ口か本心か、笑みを滲ませながら言う。
皺の刻まれた手の内に収められようとする石を見ても咎める素振りなく]
欲しければあげるのに。
研磨して貰って、首飾りにでもしたら?
[そう言いながら、見るのは老婆ではなくて猫の方ではあったが]
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