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―住宅街―
[マイルズの言葉は、聞こえてはいたがそれよりも、外の様子が気にかかった。
何かあったらすぐに、マイルズを守らなければならない。そのためにも知る必要がある。
玄関の扉を開けて、外へと出ると。]
……え?
[一瞬、何が起こったのか―――目を疑った。
少し離れた所に炎が上がっていたからだ。]
か、火事!?
え、だって、建物が燃えるなんて事、ずいぶん昔の話じゃ…
[燃えやすい建物など、よっぽど古い建物でない限りあまりないはずだ―普通の炎なら。
炎をよく見ていたら、すぐその傍に、人の影があった。]
!?危な…なんであんな所に人が―――
[ぎちと、脳に直接感じる違和感。
人影は、すぐにどこかに消え去ったが、炎が消える事はない。
悲鳴はそちらの方から止むことは無く、むしろ酷くなり続けていた。]
―住宅街・自宅―
ばくはつさせるわけないじゃんねー。
[部屋に籠る直前の後輩の冗談を思い出して、1人文句を言ったり。
早速仕事の為に部屋から出て行くロボットを送り出して]
あ、そういえばみてなかった。
[目が向くのは殺風景な部屋の隅、放置されていたもう一つの袋。
引き寄せて口を開け、ひっくり返す。
中から転がり出てきたのは掌に収まるサイズの銃器。
やや遅れて取り扱い説明書が落ちてくる。
銃器を手に取り、ひっくり返したりなどしてまじまじと眺めた]
……え―と、ビーム銃……かな。
WT-53……って、けっこうあたらしい型だったよね。
[銃器自体にはそこまで詳しいわけではないものの、刻まれた型番号を見てやや興奮した様子を見せる。
説明書と銃器を見比べながら、また暫しの時を過ごした]
─回想・集会場前─
すいませーん、台車かなにか貸していただけますか?
…─あ、いいですか?ありがとうございます。
それじゃ明日…ううん、後で返しにきますから。
えぇ、今日中に。
[台車を借りにいくと、返しに来られるのは何時かと問われ。
アヤメの家に行くとは言ったが、長居はしないだろうと思い自宅に帰りがてら返しに来るつもりでそう返事をして。
台車は無事貸し出してもらえ、すぐにアヤメの元に戻って]
お待たせしました、それじゃ行きましょうか。
それにしても、こんな大きいの渡されても困っちゃいますよね。
もうちょこっと気配りしてくれてもいいのに。
[台車を借り、アヤメが支給された袋を乗せる。
それを押して、アヤメの家に向かう為歩き始めた。]
─回想・了─
―ノブの家―
[それは集会所の中継が流れて出してすぐだった。
唐突に響いた銃声と悲鳴。
騒ぎとなっているらしき一角を映し出した直後に、ガクンという衝撃が伝わってきそうな勢いで地面へと落ちていった]
先輩っ。
何か集会所の方がトラブったらしい!
[画面はその数秒後には砂嵐となって、驚きを隠せないままのキャスターが謝罪をしながら無理やり次のニュースへと繋げていった]
俺、ナターシャさんたち迎えに出てみるわ!
[反応を確かめる前から、外へ出ようと玄関へ向かった]
─住宅街─
[やや遅れ、たどり着いた玄関。
開いたその向こうに見えた景色に、言葉が失せる]
な……!
何故、火が……。
[とっさに浮かんだのは、その言葉。
耐火耐震、あらゆる災害を想定して造られたはずの建物が燃えている、という事実は、俄かには信じ難く。
知らず、その場に立ち尽くしていた]
何が……起きて……。
[聞こえてくる悲鳴も、どこか、遠く思えるが。
大気の運ぶ異臭は、それが現実のものと知らしめるかのようだった]
─集会所→アヤメの家の途中─
[それに気付いたのは、どちらだったろうか。
後ろの方が騒がしいように感じ、振り返る。]
─……え…?
[喧嘩だ。
遠く後ろにあるその光景を目に入れた瞬間そう思った、が。]
う、そ。
[人が、撃たれて。
ゆっくりと、倒れるのが、見えた。]
―住宅街・自宅―
そういえば、アヤねーさんまだかなぁ。
[一通り見終えてから、銃を懐にしまう。
ふと隣人の名を口にしたとき]
あれ?
[銃声、悲鳴。
聞き慣れないそれらは居間のテレビからのもの。
同時に後輩の声が響いた]
え、ちょっとレッくん!
[驚いて呼び止めようと部屋を出たけれど、声は届いたかどうか]
─交番前─
[住宅街へ向けて足を踏み出した時だった。
後ろから右肩を掠め光が前方へと飛んで行く]
………!
[常の無表情もこの時は崩れ、驚きの色を示した。
左手で右肩を押さえ振り返れば、そこには銃器を構えた人物が一人。
全身が震え、恐怖に駆られていることは一目で分かった]
見境なし、か…。
……そっちから手を出したんだ、死んでも文句は言うなよ。
[こちらの声は耳に届いているのか。
怯え叫びながら相手は光線を乱発して来る。
ち、と短く舌打つと、右手を上着の中へと滑り込ませた。
懐の銃はリボルバーであるため6発しか装填されていない。
ほぼ無尽蔵に近い武器相手に限られた弾数での応戦。
タイミングを計る必要がある]
(精度が低いのが救いかな)
[こちらを狙っているようでそうではない射撃を避けながら相手の隙を探る。
懐から大型のリボルバーを引き抜き、相手の手を狙い、まず一発。
動きが一瞬止まった隙を逃さず、心臓目掛けてもう一発撃ち放った。
二発の銃声が鳴り響き、一拍の間の後に襲撃者は地面へと倒れる]
―住宅街―
[どこか呆然としていたが、すぐ後に出てきたマイルズの声に我に返る。]
ぼっちゃま!とにかくここから離れないと!
あの火、何か変ですし…いつここにも来るか分りませんから。
どこか広い所…そうだ、公園の方にいけば…
[そう言うと、主の手を取り、軽く引いた。]
─集会場→アヤメの家途中─
[良く見ればそんな光景は一つではなく。
目を凝らせば、既に何人か倒れているのが見えた。
思わず、喉から叫びが漏れ出そうになり、口を押さえる。]
あ…アヤ、メさん…
逃、げ…逃げましょう、早く!
[固まっている暇はないと、そう思った。
アヤメの手を引いて走ろうとするが、彼女はどうしたろうか。
ともに走るなら手を繋いで逃げるが、走れないようなら彼女を引っ張るようにして逃げようと。]
―住宅街―
[先輩の声は届いたはずだが、静止するまでは至らず。
来た道を戻るように住宅街を走ってゆく]
ラッシュの言うとおりだったな。
余計な武器があると…いや。
これがPSI緊急事態ってことになんのか。
[中継画面に映った光景。
まだ幼くすら見える少女が両手に銃を構えていた。あの画面の流れ方はつまり、撮影者が撃たれ倒れたということだろう]
…信じらんねー…。
[口元を押さえて低く呟く。
理解はしている。本当は「信じたくない」の方だった。
用心のためと上着の下に吊っていた銃も片手に下げて]
─住宅街─
[我に返ったエリカに手を取られ、今度は自分が我に返る。
数度、瞬いて周囲を見回す。
確かに、あの火は常のものとは思えなかった]
……離れる、のは構いませんが。
どうやら、護身の術は所持した方が良さそうですよ。
支給品、持ってきますから、少しだけ、待っててください。
[あまり持ちたくない、などと悠長な事を言ってはいられない。
そう、思わせるだけの状況が、目の前に広がっていた]
―住宅街―
あ。
[そういえばその物の存在をすっかり失念していた。
とはいえそこはサイボーグ。銃が無くとも何とかなるのだが。]
…私も取ってきます。玄関で待ってますので!
[そう告げて、こちらも荷物を置きっぱなしの台所へと急いだ。]
─交番前─
…チッ、2発使っちまったな。
予備のカートリッジ置いて来たってのに。
[残りは4発。
この調子で何かしら騒ぎに巻き込まれてしまうとしたら、かなり不利な状況に陥る]
補充は集会場の端末から、だったか。
取りに戻った方が建設的、かな。
[騒ぎが起きていると聞かされた場所へ向かうのは勘弁、とばかりに足は住宅街の方へ]
―住宅街・自宅前―
[玄関の外まで出たけれど、既に後輩は走り出してしまった後らしく、姿は見当たらなかった]
もー……
なんだよトラブルって。
[未だ事態を把握できないまま、頭を掻いて]
……あれ?
[ふと一点に目が止まる。
住宅街の一手から煙が、否、火の手が上がっているのが見えた]
―― 回想・集会場前 ――
あー、ごめんね。
凄く助かる。 ありがと、ね。
[手配して貰えた台車と
押して来たナターシャを見て、彼女へ頭を下げた。
よいしょ、と荷物を乗せれば]
うん。 おっけい。
本当にねー? 何が入ってるんだろ。
……じゃ、行こうか?
[二人で共に、自宅の方へと歩き出した]
―― 回想・了 ――
―集会場前―
[認証端末のそばに行くとクローディアと言ったか、役所から来たというその者はすでに生きているとはいえない状態だった。
鼻をひくつかせるがあたりに血と硝煙と焦げた匂いとが入り混じり、あたりの様子は詳しくはわからない]
「せん…ぱい…」
[微かに聞こえた声に耳をぴくりと動かして、声の聞こえたほうを見ると肩から血を流して集会場の裏にうずくまっている姿が見える]
ドイ!しっかりしろっ!
[後輩に駆け寄り声をかけながら傷口の具合を見る]
すぐに手当てをすれば大丈夫そうだな。
集会場内に医療キットがあったはずだ。歩けるか?
[頷く後輩を連れて集会場の中へと移動しながら]
暴動か……、部長は…?
[首を横に振る様子にそうかと呟いて返した]
―住宅街―
[ほんの少し前まで静かだった一角も騒乱が押し寄せてきている。
炎のようなものが見える方角、方向もわからなくなりそうなほどあちこちで響く銃声と悲鳴。
先の方に二人連れの女性らしき姿を見つけて向かおうとした所で]
うあっ!?
[横道から飛んできた瓦礫に気がつき、大きく背を逸らせる。
どこかの家の壁に当たって落ちたのは顔の半分近くある塊だった。頭にでも当たっていたら大怪我どころじゃなかっただろう]
誰だっ!
[何とか体勢を戻すと横道に向き直り、眼を見開いた]
…カル…?
……忘れてましたね。
[短く声を上げるエリカの様子にぽそ、と呟いた後。
待っている、という言葉に頷いて、自室へと戻る]
まったく、面倒な……!
[珍しく、苛立ちを声に乗せつつ、支給された拳銃を付属のホルスターに収めて身に着ける。
銃自体は上着を羽織る事で外からは隠し、予備のカートリッジやマニュアルは、目に付いた鞄──いつも、楽譜を入れて持ち歩く気に入りの物に放り込んで持って行く。]
……帰れなくなるのは、御免なんですけどねっ。
[そんな呟きを漏らしつつ、再び、玄関へと急いだ]
―住宅街・自宅前―
……うそぉ。
[上がる筈のない火。
流石に事態の深刻さだけは理解できた]
『キンキュウジタイ』ってやつ?
……あれ、けどあのあたりってたしか。
[ふと気がついて端末を取り出した。
一つの番号を呼び出して、耳にあてる。
けれど電源が切られているのか、そこからは機械的な音声が流れるだけ]
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