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[軋んだ音がします。
暗かった廊下に僅かに光が差し、それまで部屋の中に籠っていた旋律が解き放たれるのを聞いて、扉が開かれたのだと理解しました。]
…いえ。用、というか。
音が、聴こえたものですから。
[声を掛けられて、少し瞬きます。]
衝動?
…あ、ええと。
済みません。ありがとうございます。
[首を傾げる間もありませんでした。
仕草はわたしには分からないのですが、その言葉に何故だか少し照れてしまいます。
頭を下げて、扉の内へと歩きました。]
……ま。
人ってのは、理不尽なものだからな。
[掠れた呟きは、旋律に緩く紛れ]
何やら、大入りだな……。
[開いた扉の先に見えた姿に、こちらは、紛れぬ声で呟きを落とした]
[中には思った以上に、色がありました。
茶が一つと、濃さの異なる赤が二つ。]
…済みません。
お邪魔でした、か?
[記憶の限りでは、この場にいるのは全員男性の筈。
意外だと思いながらも、まずは勝手に入ってしまった非礼に気付き、詫びました。]
いや……
あぁ、女の方が良かったな
[クツクツと低く笑う]
[カップはラッセルの手へと渡る]
[男は二人の話を聞く]
[ハーヴェイの――今は血の押さえられた腕を見やったのは仕方のないこと]
[壁に背をつけ、慎重に話を聞いていた]
ああ、うん。
何かそんな感じ……。
[するわ、までは出なかったが、ほぼ肯定の言葉を発する。隣で慣れぬ手付きで片付けているのを見れば、肯定したくもなると言うもの]
[片付けが終わると、イザベラを連れてキッチンを出る]
ちょっと歩くわよー。
ええと、確かこの部屋だったかしらね。
[イザベラの書いた見取り図を示しながら歩みを進める。客間を過ぎ、更に歩いて辿り着く、浮彫の見事な扉。その扉を開け、中へと誘う]
そこの扉の先。
その部屋に鏡があるわ。
[戸棚の傍の小さな扉を示し、イザベラに告げた]
[ニーナに微笑み、続いてギルバートも部屋に入る。]
――…いい音色だ。
でも、どこか悲しいね。
「死」と、それとは別の何かのにおいがする。
それが何だかは、分からないけれど。
[身に着けていたコートを、そっと脱いだ。少しだけ固い音が、床の上に響く。]
みんな、音に呼ばれるんだねえ。
[呼ばれたうちの一人だというのに、
他人事めいた言いよう。
半分ばかりになったカップを手に、立ち上がる]
そうだ。
薪探さないといけないんだ。
何処にあるか、知ってる?
邪魔じゃあないが、美人の弾き手を期待してきたんなら、残念でした、と言わざるをえんな。
[ニーナに向けるのは、冗談めかした言葉。
続いて入ってきたギルバートの言葉に、蒼氷は一つ、瞬く]
……別の、何か?
[中のひとりは、先程泉に――そしてこの眼に映ったひとりでした。
そして彼こそが、終焉の使者であると。
誰にも教えられないのに、何故だかわたしには分かりました。]
/*
今日はキリング無理だけど。
明日はキリング出来たら良いな、と期待。
鳩で発見もしたいところだなー。
でも繋ぐの10時以降だから遅そうだなー。
いえ。
[ふると首を振りました。
本当のところ男性だったことには、少しびっくりしたのですけれど。
そうして別のほうからの問い、薪の場所はわたしも知りませんから、再び首を振ります。]
みにくい。
[自覚無く、唯言の葉がくれないから落ちた]
[キッチンを出て歩む視線の先、時折黒い染みが床に有る]
[汚さぬ様にドレスを支え、良く眺め見る]
…あかでは無いのですね。
[興味を失ったとばかり、女は鈴を鳴らし玄関へと至る]
[番人と黒ずんだあかが消えた様子を横目に外へと出る]
薪が何処にあるかは……残念ながらよく分からないな。キッチンに行けば分けてもらえるだろうか。
[ラッセルに軽く笑みを浮かべて手を上げると、今度は栗色の髪の青年を見た。]
別にピアノの弾き手が美人である必要は無いさ。
[そう言いながら、床に座り、柔軟体操を始める。]
何だろうね――「別の何か」。
命が消える悲しみ?怒り?それとも、恐怖かもしれない。
言葉にならない、何か……かな。
[柔軟体操を終えると、コートを壁際に寄せた。
その中に隠した、護身用のナイフを悟られぬように。]
[それぞれの答えを受け取り、その一つに飛びつく]
本当? 何処?
暖炉の薪が少なくなってしまったから。
そろそろ足さないといけないと思ったんだ。
[薪の場所への問いには、さあ、と短く返す]
いや、連続して意外そうな顔されたんで、ね。
[弾き手についての言に、異なる赤の持ち主たちを軽く見やり]
……悲しみ、怒り、恐怖……ね。
ほんとに、あんたも大概、言い回しが詩的だな。
[疑問への返答に、刹那、眉を寄せるものの。
すぐさま飄々とした表情に戻して、軽く言い放った]
悲しみ……怒り、ね。
[心の奥、零れ落ちるのは掠れた言の葉]
悲しみなどはない。
……人の死で嘆きなどはしない。
あるとすれば……怒り……か。
ああ、暖炉の……
広間のだな
火が消えると面倒だ
[先へ行こうと、扉へ向かう]
……お前は食事はとったか?
[だが、少し気になり、ニーナの傍で聞いた]
オレひとりでも、平気だよ?
[ぐい、と残ったミルクを呷り、口許を袖で拭う。
場所を聞き、早速飛び出そうとして、ふと立ち止まる]
あ、ニナ、何処か適当に座るといいよ。
って言っても、椅子はないけれど。
色しか見えないで歩くなら、疲れるんじゃない?
詩的?――…そうかな。
言葉にならぬものをカタチにすることを性(さが)としているからだろうか?
[旋律に合わせて、そっと腕を天井に伸ばした。 唇が微かに動き、数字をカウントする。]
そう――…こんな感じ。
[胸を逸らし、膝を床につけ、天に伸ばした手を胸に引き寄せ――苦痛とも痛みとも取れぬ、眉をしかめた表情を浮かべた。]
[今度は身体を起こし、腕を左右にゆっくりと薙ぐ。]
[――即興の舞踊。
男は、地を這い苦悶するような動きを続ける。]
ああ、はい。
[赤い少年の声に頷いて、扉のすぐ横に座り掛けましたが、]
え?
[傍まで来た別の声。
それがわたしへ掛けられたと理解するまでには、そう時間は掛かりません。]
…いいえ。
今日は、未だ。
[忘れていたことに気付くのも、すぐのことでした。]
……あれの後で食欲ある人って、
そういないと思うよ。
[直ぐ前にいる男を見上げ、さも当然という風に言った。
振り返った先には舞う男が在り、
しかしそれと知らず、幾度か瞬いた]
わぁ。気持ち悪そう。大丈夫?
言葉にならぬものをカタチに、か。
[微かな引っかかり。
以前、似たような言葉を聞いたような、違うような。
そんな事を考えている間に、始まる舞踏。
蒼氷が珍しく見開かれ、反射的にか、手が止まった]
[ラッセルが言い、ニーナは座る]
[それから、答えに少し悩んで問いかけた]
食えそうか?
といっても、己にはまともなものは作れないが
[と、視線を流す]
[ギルバートが踊っていた]
――それでも食わなければ死ぬぞ
[眺めながら、ラッセルの言葉に苦笑する]
[外に出て、踏み入ったのは森の中]
[地に落ちた枝の、葉の無い乾いたものを選び腕に抱える]
[それを持って城の中に戻ろうとした時、土の盛られた場所が有ることに女は気付いた]
鎮魂の鐘の音の代わりに。
[リィン]
[鈴を揺らし、碧眼を伏せる]
おやすみなさいませ。番人殿。
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